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雨の色は何色か?
第一話 出会っちゃいました。 3


「あの…ふ、二人共?」
遠慮がちにかけられた声が室内に響く
まだ授業中だというのに、ここに教師なる者はおらず、クラスの中は静まりかえっていた。
声をかけたのは言わずもがな香である。

この状況を説明するのには、十分ほど遡る。

香を抱き締めた綾瀬は俺に向かってニヤリと笑う。
勿論、その腕の中では香が赤面しながら腕を離そうと頑張っている。
しかし、香の華奢な腕では喧嘩馴れしているであろう綾瀬の腕を離す事などできはしない。
寧ろ、抵抗してるのも餓えた狼に兎が戦いを挑むような物だ。かなう筈がない。
仕方なしに、綾瀬と呼ばれた男に低めの声で話かける。

「おい、香が嫌がってんだろ…離せよ」

綾瀬の腕を掴んで、ギリギリと握ると香がわたわたと焦りながら「あああ、綾瀬くん、腕折れちゃう…」と涙目で言う。
綾瀬は至って普通に笑っていた。
笑うと言っても、へらへら笑うのではなく、口端をあげ、ニヤニヤとしている。
だが、綾瀬の目は笑ってなどいなかった。

「聞いたよ、先輩、委員長のペンダント頼りに委員長を探してたって」
「それがどうした」
「あんたさー、委員長の事、好きなの?」

突然の質問に一瞬、隙を見せたのが間違いだった。
瞬間、無表情になった綾瀬は、自分の腕を掴む俺の腕を頼りに引っ張る。
体制上、前によろける形になり、俺は慌てて綾瀬の腕を離す。
上からくる攻撃を腕で受け、しゃがんだ体制のまま、足払いをかける。
こけはしなかったものの一瞬だけ隙が出たのを見逃しはしなかった。
香の腕を掴み、引き寄せると斜め下から綾瀬の頬を殴りつけた。

「綾瀬くん!!!」

悲痛な声と共に香が綾瀬に駆け寄る。
制服のポケットに手を突っ込み、ハンカチを出して綾瀬の切れた口端から出る血を拭う。
綾瀬は「ありがとう、委員長」といい、立ち上がる。
すると、奴の表情が変わった。
無表情だった顔に血が流れている。
綾瀬は俺に近づいて「ちょっとお話しましょうか」と言った。



結局、どちらも何も言わないので、思いきり無口な時間が流れた。
綾瀬も俺も黙っているので、回りは嫌に静かだった。
そして現在に至る。






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