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ただただ受話器をにぎって、自分でもなにをいっているのかわからないけれど、ただただ言葉と涙があふれてくる。
いいたいことは山ほどあるはずなのに、口にしてみるとそれはいいたいことではないようで、でもやっぱりいいたかったことのようで、もうわけがわからない。

「ばんさっ‥、おれは‥‥」

こうなることはあいつが引越すと言った時から予想していたはずなのに。

なにがだめだったっていうんだ。

あいつがもうおれのとなりにいないこととか、おれにだけにむけられていた笑顔がみられないとか、あのギターの音がきけないとか、それはたぶん少しで、だけど大きかった。

「しんすけ、」

そんな優しいこえをださないで。

「あいしてるでござる」

泣きたくなるから。

でもきっといちばんいやだったのは、ぜんぶ距離とあいつのせいにしてこんなことをいうおれじしんだった。




渡せなかったチョコレートを自棄食いしていたいつかのあの子の心情
(「恋」というのはかんがえていたよりもずっと、いたいものだった)







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