*clap novel
≫01



prrr,prrr,prrr,

「ーーはい。…どうした風見。」

『降谷さん、お疲れ様です。申し訳ないのですが、いつもの“アレ”が使い物にならなくなってきたので、そろそろ登庁して戴けないでしょうか…。』

「ああ…。そういや前回から今日で一ヶ月か。
ーー解った。明後日辺りにそちらに行くよ。」

『っありがとうございます!』


感極まった部下の言葉に、降谷は苦笑いして通話を切る。


「風見の奴、だいぶ疲れてたな…。」


そして手の中の携帯を降谷名義の物から安室名義の物に持ち替えて、潜入先の喫茶店ポアロに用事が出来て明後日のバイトに出れなくなった旨を伝えた。



≫≫



二日後。
登庁した降谷を出迎えたのは、疲れた顔を隠しきれない部下達の姿だった。


「ーー全員お疲れだな。顔が死んでるぞ。」

「「「っ、降谷さん!!」」」


降谷を濃い隈の上の瞳を輝かせて、救世主とばかりに歓迎する男達。


「お疲れ様です、降谷さん。忙しいのに、態々すみません…。」

「いや、どうせ俺の仕事も溜まってるだろうしな。
ーーそれで、“アイツ”は何処だ?」


デスクにも見当たらず、室内を見渡しても視界に映らないその姿。


「ああ、アイツならーー」



「っ降谷さん、お疲れ様です! 今日も格好良いですね!」


奥の給湯室から戻って来た人物が、満面の笑みで近付いてくる。
その目の下には化粧でも隠しきれない隈があるが、その表情は晴れやかだ。


「お疲れ。ーーホントお前、俺の事好きだな。」

「何言ってるんですか! 好きなのは降谷さんの顔だけだって、いつも言ってるでしょ!」

「ハイハイ…。それで、仕事は出来そうか?」

「はい! たった今、降谷さんのご尊顔を拝ませて頂きましたので!」

「…………そうか。なら、溜まってる仕事やって来い。終わったら飯でも連れてってやる。」

「っはい!」


元気良く返事を返した彼女は、人一倍書類の積み重なった席に腰を下ろした。
それを見届けた降谷は苦笑を零し、自分のデスクに着く。


「ありがとうございます、降谷さん…。」

「いや、気にするな。俺が来た方が仕事の効率が上がるのは、もう解ってる事だしな。」


チラと見た席では、降谷の班では降谷、風見に続き第三の地位を持つ女が滞っていた仕事を片っ端から消化していっている。


「いつ見てもあれは凄いな…。」

「ですよね…。さっきまでミスばかりで仕事に触らせない様にしてたんですが、降谷さんの顔見るだけでミスも無くなり仕事のスピードも倍速…。いつもこの状態だと良いんですが。」


寧ろアレで何で警備企画課ここに入れたんでしょうか…。
溜息と共に風見の口から吐き出された言葉に、降谷は何度目かの苦笑いを零した。








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