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僅かな休日。
幼い頃から木刀を握り、父と手合わせをしていたおかげで、時折木刀の感触が恋しくなる。
そんな時は決まって道場に顔をだし、邪魔にならない程度に手合わせに付き合ってもらっている。


戦国BASARA 
可憐剣舞




「おいてめぇら!! もっと活いれて鍛錬できねぇのか!!」

驚き顔を上げれば、そこには木刀を持った政宗が立っていた。
一気に道場の士気が上がるのを感じた。皆の目が今までにないくらい熱に揺らめいている。
柊はこの政宗が来た時にがらりと空気が変わる瞬間が好きだった。
なんだか神聖な場面に立ち会ったような気持ちになる。


ひとりひとりと手合わせをしていく政宗を、密かに目に焼き付ける。
片目しかない瞳を、ぎゅっと尖らせ、相手を捕らえて離さない。
額に浮かぶ汗が、政宗が動くたびに滴り落ちる。


綺麗、としか言いようがないのだ。男の人にこの言葉は相応しくないかもしれない。
だが、そう思ってしまうほどに、木刀を交える政宗は活き活きとしていた。

――――ついつい、見惚れてしまう。






鍛錬を終え、皆が引き上げた道場に柊はひとり佇んでいた。
先ほどの、政宗の姿がずっと脳裏に焼きついていた。


木刀を構え、誰もいない前を見据え腕を振るう。
足をくるくると前へ進め、それに合わせて木刀も前へ、横へと舞う。
政宗のように、力強く振ることはできないが、動きなら似せることならできるはずだ。
必死に政宗の足、そして腕の動きを思い出し真似てみる。
暫く夢中になっていると、ふいに入り口の戸から声が聞こえた。


「・・・舞、みてぇだな」


驚き声のほうを向けば、そこには政宗がいた。


「ま、政宗さまっ! 戻られたのかと思っていました」


そう言えば、政宗はどこか歯切れ悪く返事を返す。


「Ah-…, Because you had been seen to return to the gym, it was anxious.」
(お前が道場に戻るのが見えたから気になっただけだ)

「・・・はい?」

「――いいじゃねぇか別に」


なぜか少々むすりと返され、一体南蛮語でなんと言ったのか気になったが追求しないことにした。


「・・・で、お前は何してたんだ」


やはりどこかしかめっ面で聞いてきた政宗が、なんだか少し面白くなってきてしまった。


「政宗さまの木刀を振るう姿がとても、その、綺麗でしたので。動きだけでも真似できないかと思いまして」


素直に答える。政宗は少しだけ、瞳を揺るがせた。
柊の手にしていた木刀をひょいっと取り上げる。


「・・・女と男が木刀振るうとでは、違って見えるな」

「やはり頼りないですよね、女が振るっても」


どう足掻いたって、女は男より力もない。
男が木刀を持つのと、女が木刀を持つのではやはり、対峙する者にとっては全く心持ちが違うに決まっている。
しかし柊の言葉を聞いた政宗は、不服そうに答える。


「そういう意味じゃねぇよ。確かに力は男の方が上かもしれねぇが、男が木刀振るっても、お前のような繊細さや可憐さは出ない」

「可憐って・・・。ちょっと馬鹿にしてます?」

「阿呆。 それぐらい、男の瞳を束縛しちまうような何かをお前は持っているってことだ」


可憐という言葉に少しむっとして聞いてみれば、何を言ってるんだとばかりに堂々とそんなことを言う。
今度は柊の顔がしかめっ面になる番だった。
照れくさくて、赤面した顔を見られたくなくてついうつむき加減になる。


「ありがとうございます・・・」

「柊」


目を逸らしている間に、政宗は道場の隅に立てかけられた木刀を手に取り、柊に木刀を返す。


「お前を見ていたらまた振るいたくなった。――手合わせ願えるか?」

「えっ・・・。 私とですか?」

「なんだ、俺とじゃ不満か?」


挑戦的な政宗の表情に、彼が対等に手合わせすることを望んでいるように思えた。
道場で男と手合わせはよくするが、やはりどこか女だという柊に遠慮しているふしがあった。
仕方のないことだし、相手も悪気があってしているわけではない。
わかってはいるけれど、もどかしかった。


だからこそ政宗が今、こうして対等に手合わせ願うことがどうしようもなく嬉しかった。
さっきは「可憐」だと言ったのに、今はこうして対等に扱ってくれる。
両方を受け止めてくれる政宗に、男と女の違いを一番気にしているのは自分だったことに気づかされた。


「・・・いえ、ぜひ、お願いします!」


木刀が交じり合う音が、楽のように鳴り響いた。








拍手ありがとうございます!!
今回は魔の成実記を抜け出しましたww 名前変換ができないです、すみませんorz
ちょっと照れ屋な政宗とマイナス思考(笑)なヒロインをお楽しみいただけましたでしょうか。
「可憐」とは「姿・形がかわいらしく、守ってやりたくなるような気持ちを起こさせること」の意味だそうです。
それでヒロインちょっとムッとしちゃったんですねww

今後も宜しくお願いします!

(2011/3/28 竹刀→木刀に変更)


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