※銀妙未来パロ(子供有り)
「かーちゃん若いけど、でも今とそんな変わんないのな」
息子の言葉で現実に引き戻される。
一瞬過去に意識がトリップしていた。
感傷に浸りすぎるといけねーな、と内心で独り言ちる。
「あ〜…そうだなァ」
写真は今から十年位前のものだろうか。
妙と出会ったばかりの頃だ。
だとしたら、写真の中の彼女は恐らく十八くらい。
当然今よりも幼いことは幼いのだが、生い立ち故にあの頃から彼女はひどく大人びていた。
ともすれば、時々自分との年齢差さえ忘れてしまうくらいに。
だから外見も今とあまり変わった風には見えないのかもしれない。
「とーちゃんは老けたよなー」
「え、マジで?」
「うん。やっぱ十代とアラサーのオッサンの差は大きいよ」
写真の中の銀時と妙を見比べて、息子が父親の気にしている事をズバリ的確に抉ってくる。
「今かーちゃんが28だろ、んでとーちゃんは38。十歳って結構な年の差だよな〜」
とーちゃんってばロリコン?という息子の言葉に、違げーよ!!と頭を叩いて、
「年の差なんてなァ、好き合う男女にゃカンケーねぇんだよ」
「ふーん?でもさあ、とーちゃんがマダオなのは昔から相変わらずなんだな!」
写真を指差してけらけらと笑う息子に、
「黙らっしゃいクソガキ」
と言って、小さな白い頭をくしゃくしゃと掻き回す。
「うわっ、やめろよー!!天パが悪化するぅぅ!!!」
「安心しろ、元々だ」
「違うね、オレは大人になったら絶対かーちゃんみたいな黒髪サラサラストレートヘアーになるんだい!!もしくは縮毛矯正あてる!!」
「それなら俺だって試したっつーの。天パの遺伝子ナメんなよ」
さ、とっととメシにすんぞ。
そう言って、銀時は立ち上がり朝食の準備に取り掛かる。
「……なぁ、とーちゃん」
「んー?」
「かーちゃんて今実家に帰ってんだよなァ」
「そうだよ」
「いつ帰って来んの?」
「そうだなァ…もう少ししたら、かな」
「オレつまんねーよー。早くかーちゃんに会いたい」
ふわりと花が綻ぶみたいに微笑う、優しい顔が思い浮かぶ。
常に笑みを絶やさない、弧を描く桜の唇。
鈴が鳴るように凜とした綺麗な声。
眠たくなるような、石鹸の柔らかく甘やかな匂い。
白くて細い指先。
あの手に撫でられるのが一番好きだ。
真っ黒に焼け焦げた卵焼きさえ懐かしい。
「……父ちゃんだって会いてェよ」
ぼそりと独り言のように呟く。
息子が銀時の顔を見上げた。
「…かーちゃん、いつ帰ってくる?」
「そうだなァ……」
――――お前の弟か妹が生まれてからじゃね?
幸せそうに笑む父の顔。
この未来(さき)に待っている喜びを思う。
「…それってすぐ?」
「予定日は過ぎてっから、もういつ生まれてもおかしくねーって」
「じゃあまたお見舞い行くー!!新おじちゃんとお登勢ばーちゃんにも会いたい!」
「へーへー。つか昨日も会ったばっかだけどな」
「かーちゃんがもうすぐ生まれるって言ったら、神楽ねーちゃんも宇宙から急いで帰ってくるって!」
「んじゃダッツ手土産に朝ごはん食べたら出かけるか」
「うんっ!はい、ヘルメット!!」
「朝ごはん食べたらつったろ」
気が急く息子を笑って往なし、台所から居間へと移動する。
朝食の準備を整えて、二人揃ってご飯を食べる。
もう少ししたら、ここに家族があと一人増えるのだ。
今までより一層賑やかになるであろう食卓を思い描いて、銀時の口元は綻んだ。
ずっと自分には無縁だと思っていた温かい繋がり。
夫婦になって、子供が生まれて、家族になって。
脈々と続いてゆく、これからも。
(其処には色とりどりの、)
愛が溢れる
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BGMは「家族になろうよ」でお願いします。笑
2012.10.31
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