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混沌が世界を呑みこんでいた。

「お前、この娘のことが好きだったんだろう?」

金色を纏う少女の姿は彼を見下ろす。
ひざまづいた青年は、ただ、無表情だった。

「僕は」

ぽつり。

「その感情がよく分かりませんでした。どんなものかは、長く人に紛れていたので知ってはいました。でも僕にはないものでしたから」

自白のように言う。

「……ないはずだったんですけどね」

思い出すなんて無駄な行為、あまりしないのだけど。

「彼女が」

今は過去を振り返る。









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