骸綱!
「ねぇ骸…」 「はい?」 「クローンでも、造ろうか」 × 唯一無二 × 大きな書室。 壁一面は本棚となり、スモークグリーンやビロード生地のような紅い背広の本が所狭しと犇めき合っている。天井の高さはゆうに二メートルを超え、部屋の中で唯一綱吉がデスクワークに使う漆塗りの机の後ろには、床から天井まで突き抜ける硝子窓が軒をあげていた。 それがどのような効果を示すかと言えば、大体は報告をしに来た部下や、時折訪れる他のマフィアなどを自然と威圧するという、古典的な細工なのだが。当の綱吉自身はその細工を作らせた己の家庭教師の思惑なぞ露知らず、彼が書室が出来た際訪れた時に言った第一声はー−…。 「景色が凄くいいね、リボーン!!これなら俺、ストレスあんま溜まんないかもっ」 であった。 まぁその後。彼が世界一のヒットマンである家庭教師に銃を乱射されながら追いかけられたのは、想像に難くない。 だがしかし、それはあくまで数日前までの現状である。 今綱吉は、両脇にある本棚に添え付けられた梯子の上でなにやらイタリック体で題名が書かれた、昔の彼からは想像もできないような本を持ってうずくまっていた。 こんこんこん−… 静かな室内に硬いノック音が響く。 「…どうぞ」 そのノック音に綱吉が答えると、重厚な木の扉を開けて藍色に光る髪を靡かせた骸がするりと猫のように優雅な仕草で入ってきた。 「失礼します…ってああっ!!」 がつん そうして入ってきたはいいものの。骸が足を踏みだそうと顔を前へ向けると、本来ならビロードの毛長の絨毯が広がっているであろう書室の床が、大量の本や書類などで見るも無残なごみ溜めのように荒らされていたのだ。 拍手ありがとう! |