可視恋線。
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誰が悪いのかと言えば間違いなく俺だろうけど、何が悪かったのか、肝心の理由が全く、これっぽっちも判らないのは、俺がバカだからだろうか?

「ひ…っ、やっ、ふぅん!あっ、待…っ、…やだぁ…!」

大きく開かせられた両足の真ん中で、獰猛な目をした朱雀が濡れた唇をわざとらしく舐める。
ボロボロ、際限なく溢れてくる涙は悲しいとかじゃなくて、あんまり気持ち良すぎるから、なんだけど。いきなり押し倒されて服剥ぎ取られちゃった俺は、キスされながら股間弄られたり、乳首コネコネされながら脇腹舐められてだけでも、いっぱいいっぱいだったんだ。

なのに、

「ひ、ひっく」
「早ぇな、おまめ。やだやだ言ってる割に、こっちはイケイケじゃねーか」
「へ、変態…!こ、こんな、こんな所で…!」

図書館。
テスト前なのにかわちゃんと喧嘩しちゃって、頼みの綱のうーちゃんは、かわちゃんに味方して勉強を教えてくれない。仕方なく一人でやろうと思ったけど、やっぱり全然無理だった。

山田先輩に教えて貰おうと思ったら白百合様に笑顔で睨まれて、泣きべそ掻いてたら遠野会長と神帝陛下が教えてくれると言ってくれて、学園で一番頭がいい二人に勉強見て貰えるなら、夢の満点も有り得るかも!

とか、バカなこと考えた二日前の俺、松原瑪瑙16歳。

「ひっく、勉強、教えてくれる、って!言った癖にっ、んぁ!」

天才過ぎる会長ズは天才過ぎて、バカに勉強を教える事が不可能でした。だってあの人達、数学の式見ただけで答え書いちゃうんだもん。国語なんかスペイン語で答えちゃうんだもん。付いていけない。
たった一時間でレベルの違いに打ちのめされた俺を見かねたのか、いつもエロい事ばっかしてくる朱雀が、ちょっと可哀想なものを見る目で勉強を教えてやるって言ったんだ。

忘れがちだけど、中等部時代はSクラスだったらしい変態は、国語以外は満点ばっか取ってるらしい。
でも最近のSクラスは超レベルが高いみたいで、下手したら10点あるかないかの国語の赤点が、彼を未だFクラスに縛り付けてる理由じゃないかと思うんだけど、山田太陽曰く、わざと赤点を取ってるんじゃないか、って話。

Fクラスじゃなくて本当はAクラスに入れる筈の朱雀は、何でかFクラスに在籍したままで、サボりまくりだ。
Fクラスの生徒はお金持ちとかセレブばっかりだから、テストさえ受けてれば卒業は出来るんだって。授業も、あってないが如く。
俺達一般人や貧乏人が通えるのも、Fクラスの膨大な寄付金のお陰とか。

朱雀パパは超ロマンスグレーな眼鏡イケメンだけど、朱雀を苛めるのが何よりもの趣味だって真顔で言っちゃう危ない人でもある。
勝手に息子の退学届け出しちゃった事もあったけど、復学する時に目ん玉ふっ飛ぶくらいの寄付金払ってたから、噂は本当だろうね。

そんな朱雀が「俺の嫁」と言って憚らない平凡な俺は、朱雀の美貌に目が眩んだ母ちゃんと、金に目が眩んだ父ちゃんに売られたドナドナだ。
はいはい結婚は卒業してからね。なんて、どっちの親も勝手に決めやがって。

「おい、ケツ浮かせろ」
「はぁ、や、やだぁ」

変態が卒業まで待つ訳がない。
付き合う事になったその日にうっかり食べられちゃった俺、ちょう可哀想。

「…ちっ、こっちは真剣に我慢してやってたのに、良い度胸じゃねぇか」
「な、に?」
「ぜってー、ぶち込む。さっさと入れさせろ」
「ひっ」

テスト期間はダメって言ってるのに、さっきまで見違えるくらい真面目に勉強教えてくれてたのに!
ってゆーか、ここのところしてないんだから!ちょっとイかされたからって、まだ無理だよ!…いや、二回出したけどさ。

「や、やだぁ。ひっく。無理、無理ぃ」
「煩ぇな、何が無理なんだ」

ちょっとだけ息を弾ませた朱雀の手が、指を絡めて俺の手を掴んでて。すっかり力抜けてたけど、悪足掻きっぽくジタバタさせてた足も、間に割り込んできた朱雀の所為で宙に浮いたまんま。
凶悪過ぎる変態のブラックタワーはバビロンの塔、何回も見たし握らされた事もあるのに、慣れない。慣れたくない。幾ら好きでも、恥ずかしいだろ!

「そんな…うぇ、大きいの、怖いぃ」

ぐずぐず泣かされる方の身にもなれと言いたい。とんでもなく苦しくて、とんでもなく激しくて、とんでもなく気持ち良くなるって事が、どんだけ辛いか。

「…巫山戯けんなよ、馬鹿野郎!」
「ぅんっ」

噛みついてきた朱雀の荒っぽいキスで息の出来ない俺に、変態は情け容赦なくブラックタワーを出陣させた。


いい加減にしろとか、巫山戯けやがってとか、覚悟しやがれとか、俺をどうするつもりだとか、こっちの台詞だボケ!な事をずっと言われてた気がするけど、散々泣かされて、ヘトヘトになるまで揺さぶられてた俺は、

「好、き。好き、あっ、ん、せんぱ、あ、や…っ、大好き、先輩っ」

吹き込む風で踊るカーテンの下で、狂った様にそればっか繰り返してたから。


「殺す気かよ。…怖ぇ奴だな、まめこ」

いつもより舌打ちが多かった変態の、泣きそうな顔の理由なんか、知らない。





「うう、今回のテストも散々だった…」
「自業自得。しょっちゅう無断外泊して、僕の忠告を無視した報いだね」
「まぁまぁ、かわちー。まっつんだって、あの朱雀の君にそれなりに苦労させられてるんだから、許してあげなよ」

張り出されたテスト結果を見て肩を落とす俺を横目に、順位が上がってるかわちゃんは鼻で笑ってる。うーちゃんはかわちゃんよりちょっと上で、化学は満点だったって。

「かわちゃん!俺だっていつも帰りたいって言ってるんだよ!なのに朱雀が…っ」
「一応恋人なら、ダメな事はダメって強く言わなきゃいけないんだ。メェの態度も悪い。ヘタレめ」
「うーん、朱雀の君に強く言える人なんか、あんま居ないんじゃないかなぁ?そもそも言ったって聞きそうにない…」
「そうなんだよ、うーちゃん!やっぱ、うーちゃんは判ってくれるんだ。かわちゃんは石頭過ぎて…痛っ」

腰を撫でながら言ったら、かわちゃんに足を踏まれた。笑ったうーちゃんが何かに気づいたのか、掲示板の前の方を指差して目を見開いてる。

「あ、あれ!あそこ見て、二人共!」
「え?」
「何を見ろって言ってるんだ、海陸…はぁ?!」

二年生の順位がある。
一位はやっぱり遠野俊と書いてあって、なのに二位には二人。

「そ、総合994点、神崎隼人………大河朱雀、だって?そんな馬鹿な…」
「う、嘘だぁ。だって朱雀先輩の国語のテスト、ホントに酷いんだよ?!李先輩が真顔で手裏剣投げてくるくらい酷いんだからっ」
「いつも二位の星河の君も流石だけど、あれが本当なら、朱雀の君はいつでもSクラスに昇格出来るって事だよ」

うーちゃんの台詞で固まったかわちゃん。
俺だって固まってたんだけど、何処からかやって来た変態に捕獲されて、

「おい、テスト終わったんだからもう良いだろ。とっとと帰るぞまめりーな」
「ちょ、待って、す、朱雀先輩、二位っ、二位だったよ!Sクラスに行くの?!」
「あ?…ふん、アイツの下っつーのが気に食わねーから行かない。毎回満点とか巫山戯けやがって糞が」

二位なのに機嫌が悪いのはきっと、遠野先輩に負けてるかな。遠野先輩ファンの俺がうっかり会長の話をすると、いつも朱雀ってば超不機嫌になるから。

「でも、凄い。苦手な国語もちゃんと勉強してたんだよね。何か、かっこいいかも。…ちょっと、見直したよ?」

手を引かれながら見上げたら、沈黙した朱雀から廊下の真ん中でキスされた。ぎょっと振り返る皆さん、本当にすみません!この人っ、変態なんです!

遠野先輩っ、デジカメ光らせながら涎垂らすのはやめて!いつからそこに居たんですか!さっきまで居なかったのにっ。


「あー、クソ。部屋まで我慢出来ねー…。とっとと帰って抱くから、来い」
「え?!ちょ、何、待っ、ちょ、いやー!」

だから何でいつもいきなり発情するのか、全くこれっぽっちも判んないんですけど!


引っ張られながら無駄過ぎる抵抗を見せる俺が、多分きっと原因なんだろうけど。何が悪かったのか、やっぱり判らないままだ。




『先輩、本当に勉強教えてくれるの?自分の勉強があるでしょ?国語また赤点だったら李先輩にまた怒られちゃうよ』
『俺ぁ、やらなくても出来る男だから良いんだよ。おら、とっとと教科書開け』
『うーん。先輩が言うと本気で一位になっちゃいそう…。もしSクラスに戻れたりしたらさ、親衛隊とか出来ちゃうかも。きっと親衛隊出来るよ』
『んなもん要らねーよ』
『星河の君も美形なのに頭良いけど、先輩の方がもっと格好いいもん。親衛隊出来ても浮気しちゃダメだからね、泣くからね…って、うわぁ!いきなり何?!』

『人が真剣に教えてやるっつってんのに、煽ってんじゃねぇぞ!』


拍手有難うございました!


忘れた頃にレスが来るかも知れない…。そんなあんばい。

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