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[001] クシア・【記憶から溢れた砂】
By 碧華
【記憶から溢れた砂】


どこまでも広がる青空。
風は心地よく、太陽の光が眩しい。
その風と光を背中いっぱいに受け、一人の少女が小高い丘を駆け足で登っていた。
そこで待っていたのは十六人の仲間たち。
総じて皆武装している。少女も勿論。
皆が皆、眼下に見える街並みを視界に焼き付けた後歩き出すが、少女だけが一歩を踏み出せない。

『クシア、行こう。私たちが勝てばいいだけの話だ』

ぽんっと少女の肩を叩き、青年が歩き出すことを促す。
少女は一度目を瞑り何かを決心すると、笑顔で振り向き頷いた。

『そうね、お兄様。みんなで、帰ってきましょう!』

その言葉は未来への希望に満ちていた。
逆光で見えない仲間も笑顔を浮かべていたはずだ。

━━━突如として場面が変わる。

笑顔を浮かべていた仲間が、必死の形相で剣を向けているのは、瀕死の重傷を負い血だらけで立っているのもやっとであろう少女と少女が兄と呼んだ青年。
二人の足元には三体の屍が倒れている。

『な、ぜ…。そんなに臆病者と罵られるのが怖い…!? 仲間を裏切ってまで…そんなに栄誉が欲しい…!?』

少女の瞳には激しい怒りと憎しみが燃え上がっていた。
それに気づかないふりをしてか、はたまた殺して黙らせてしまえばいいと考えたのか、裏切った仲間が一斉に二人に襲いかかった。
身体中に感じる痛みを受けながら、少女と青年は背中から地面に倒れた。

******

ふっと、意識が浮上した。
ゆっくりと目を開けると一筋涙が流れる。
クシア=エデン=カヴァリエーレは横になっていたベッドから上体を起こした。
さらり、漆黒の髪が頬を撫でる。
彼女は片手で顔を覆った。

━━━また、あの夢…。

クシアが繰り返し繰り返し見る夢。
とても幸せな気持ちからどん底に落ちる夢。
しかし、内容は思い出せない。
ただ、嫌な感情が残るだけの、夢。

「━━━クシア、入るぞ。…どうした?」

ノックの音がして、兄であるルベリウス=エデン=カヴァリエーレが自室のドアを開けて中に入ってきた。
顔を覆うクシアを見て怪訝そうに眉を顰める。

「お兄様…。また、あの夢を見たの…」

「━━━そうか…」

ルベリウスは一言呟いただけで、ベッドの端に腰掛けそっとクシアの頭を撫でる。
優しいその温もりに彼女の不安感も無くなっていく。

「あまり気にすることはない。私がいる」

「えぇ…。ありがとう、お兄様」

「ゆっくり休め…」

ルベリウスはしばらくクシアを宥めていたが、彼女が落ち着いたのを確認すると、微笑を浮かべて部屋から去っていった。
残ったクシアはベッドに倒れこみ、瞳を閉じた。
今度こそ、幸せな夢が見れるように願いながら。

******

はい。駄作、失礼しました。
何気に魔王様も出ちゃってるし…汗

皆様が想像するように、クシアが忘れている勇者時代の記憶を夢に見るっていう内容のSSです。
ありきたりな…と思ったそこのあなた!
正しい!笑

この後の展開としては、クシアが寝入ったのを気配で感じた魔王様がまた部屋に入ってきて、「お前が見ているのはお前が忘れている記憶なんだ…」と、呟いてくれないかなぁ…。
それも書こうと思ったんですが、それは魔王様視点だから書いちゃいけない書いちゃいけないと筆を止めましたよ。
どなたか魔王様視点を書いてくれないかな!
ちなみに、夢を見る日は決まっている設定です。
仲間に裏切られた日、これです。
だから魔王様も今日か…って思って毎回部屋に来てくれる、という裏設定。

お目汚し失礼しました!


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