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僕のアリス
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透明な世界(L月)
By おきみ

(※映画版設定)


腕のなかの少年の、細い肩が揺れた。無の世界で、彼の存在だけが明確にある。少年は、嗚咽を漏らして泣いていた。背中をぽんぽん、と軽く叩くと、ひときわ大きな泣き声が耳の鼓膜を掠めていく。それにまじって、小さな声音で、ばか、ばか、と何度も彼が言うのがわかった。肩にじわりと温かなものが広がる。彼の涙だと、すぐにわかった。少年は、泣きながら、悪態を吐いていた。
「……竜崎の、馬鹿…ッ!!」
泣きながら怒るなんて、人間はなんて器用なんだろう、と思ったがすぐ訂正する。彼はもはや人間じゃない。同時に私も、人間ではない。(もうそんな世界からは切り離されたのだ)
「ひとりにして、ごめんなさい。月くん」
優しくそう言ってやると、彼はさらに大きな声を上げた。まるで子供のように。(無の世界は、そんなに心細かったのだろうか。)(ならば、私が、ずっと傍にいてあげよう)
 彼と自分以外なにもない世界で、私は彼のキャラメルブラウンの髪に顔を埋めて、少しだけ泣いた。

(ずっといっしょです)






(やまなしおちなしいみなし!)

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