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僕のアリス
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頂上決戦(高土)
By おきみ


ひゅん、と鋭利な切っ先が土方の頬を掠めた。瞬間生暖かい血が頬を流れ、熱い温度を持った。しかしそんなことは微塵も気にも留めずに土方は高杉の初手をかわし、刀を上段に構えて高杉の脳天に向かって振り下ろす。風が唸り、キィンと金属の擦れ合う音が響き渡った。
「変わってねぇな、お前の太刀筋」
「……テメェもな。高杉」
クク、と高杉が喉を鳴らした。彼の瞳はもはや常人ではない。血に飢えた獣そのもので、死地を愉しむ狂人であることを如実に表していた。しかし、それと同じように土方も、自分が高杉と同じ精神世界の住人であることを自覚していた。愉しいのだ、この上もなく。
もう一度鋭い音が冴え渡って、高杉と土方は同時に背後に飛び退った。土方は中段、刀を横に水平に構えている。頬からは未だ血が流れているが、それを拭うことすらしなかった。対して、高杉は下段の構え。顔を下に俯かせ、上目に土方を睨んで笑っている。豹のようだ、とふいに土方は思った。いずれにせよお互い、獲物を狙っている猛禽類であることには変わりがないのだ。
「来いよ、副長サン。アンタがどれくらいの力量か、俺が試してやるよ」
「面白ェ、やってみろ。…もっとも、試す前にお前が身を以って思い知ることになるだろうけどな」
負けず劣らずの好戦的な言葉を交換し合い、双方は同時に笑みを口元に閃かせた。言葉では表現し得ないとわかっているのだ。最上級のこの歓喜は――今まで感じたことのない悦びは――もはや言葉にするに値しない。戦場でしか生きられなかった獣は、肉体によって伝えるほか術を知らない。
こんな状況には似合わない穏やかな宵風を感じながら、土方はふと、あの夏の日に思いを馳せた。そう、あの頃は……まだ無邪気に、この男のことをただ愛していると言えていたのだ。
その自分の無知さが憎らしくもあり、また、愛しくもあったのだった。

「此処で殺してやるよ、お前をな」

低く呟かれた言葉が、果たして高杉と土方、どちらのものなのかはもはやわからなかった。

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By おきみ

高土ガチバトルってイイ。

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