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僕のアリス
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マタアイマショウ(さなだて)
By おきみ


しんしんと深まる夜を背景に、幸村は俺のほうを見ずにポツリと呟いた。
(辺りで蛙が一斉に鳴き喚いている)

「明日、甲斐を発つでござるよ」

幸村の声は何処か淡々としたもので、現実味を帯びていなかったため、俺は生返事をした。幸村の横顔を見つめたまま。幸村のその、睫の長い瞼がすうと閉じられた。
俺たちは手を繋いだまま、河原に立ち竦んでいた。月光を反射して鈍く光を帯びる川は、止まることなく流れ続けている。まるで、何時までも此処に留まっている俺たちを追い立てるかのようだ。
明日、この男は戦場へ赴くと云う。大きな戦だった。今までとは桁違いの、危険の伴なう戦。幸村の尊敬する武将も、幸村の信頼する忍も、幸村本人も、相当苦戦するであろうことは見てとれた。(最悪、武田軍は、……)

「長い戦になろう。暫く逢えぬかもしれない……だが」
「幸村」

幸村は瞼を開いて、ん、と返事を返してくる。その顔が此方を向き、視線がぶつかった。嗚呼。幸村の顔を見るのも、これが最後かもしれない。握った手に力を込めた。

「Good luck」

そう言って微笑んでやる。すると、幸村も目を細めて笑った。そうだ、俺らに余計な言葉など必要なかった。この乱世、他人に(しかも敵に)情を移したほうが負けなのだ。戦で死ぬどころか、俺が殺してしまうかもしれない相手を愛して、melitなど何処にもない。
(なのにこの手を離せないのは、何故か。)
幸村は笑ったまま、握った手の甲にkissを落とした。








「必ず、また逢いましょう、政宗殿。」








(………………嗚呼。)
どうやら、俺は負けてしまったらしい。
もう逢えるはずのない、きっと見るのが最後であろう最愛の人の姿をしっかり焼き付けようと、左目を見開いて。
――――其処からぽろりと、雫が零れ落ちた。








(生まれかわっても、必ず)(マ タ ア イ マ シ ョ ウ 。)



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By おきみ


SEAM○の「マタアイマショウ」がさなだてすぎて!

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