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僕のアリス
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貴方の光がひどく優しく降り注ぐから、僕は今日も耐えられなくなるのです(金浦)
By おきみ


何故貴方の笑顔がそんなに優しいのかと訊ねてみたら、心から笑っているからだと返ってきた。なんでもないような無邪気な声、その言葉に悪意がないのだとゆうことは重々わかっているが、いつも嘘を並べ立てて偽りの笑顔を貼り付けその裏で人を欺いている僕のことを馬鹿にされたような気がしてなんだか苛立った。この、なんの悪気もない優しい顔が、僕を包んでくれる大きな手が、彼の長くて柔らかい髪が、僕は愛しくてたまらないはずなのに、今は無性に腹が立つ。(たとえて言うなら、羨望。)羨ましいのだと思う。いつだって正直で、真正面から物事にぶつかっていけるこの人が、僕は羨ましいのだとおもう。僕には到底できないことだ。ここまで捻くれてしまった僕がどうして今更、素直に泣いてなんていられよう?(だって僕、嘘泣きしかしたことないし。)でもこの人が、どうしようもなく優しい手つきで、僕の扉を開くから。無性にイラついて、何処かへ行ってほしくて、でも傍にいてほしくて、愛しくて、僕はまっすぐに立つことすら出来なくなってしまう。どくどくと五月蝿い心臓が、僕の呼吸を止めていく。酸欠状態でろくに動かない思考のなか、僕は彼の袖を、情けないほど弱弱しい力で掴んだ。どうかここにいて、その笑顔を僕にだけ向けていてほしいと。そんな醜い僕にすら彼は、太陽のような微笑を向けるのだ。


「心配せんでも、ずっと傍におるで。」


せやから泣くな、亀の字、と、彼は僕の髪をくしゃりとやってから頬に流れる水滴を指で拭ってくれた。
(ああ、もう、ひどいひとだなあ。)



ちゃんと呼吸をしてみたら、視界も意識も明瞭になって、清々しい気持ちで少し笑えた。




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