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僕のアリス
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夜空(エルとメロ)
By おきみ




「メロ?」

白に塗りたくられたバルコニーが月光の青い影に沈む其処で、何となしに空を見上げていたちいさな少年は、自身の名を呼ぶ聞きなれた声に振り返った。
そこにいたのは、声と一致する見慣れた顔。絡まった黒髪に白いシャツ、色褪せたジーンズ。

「……L」

ぶっきらぼうに言ってから、メロはまた夜空へと視線を戻す。今日の空は曇っていて、星は霞んで見えなかった。暈のかかった月が頼りなく地上を照らしている。お世辞にも美しいと云えない、そんな暗い夜空を、メロは見つめていた。

「……空を眺めているんですね」

聞こえた声が先ほどよりも近く感じられたために、驚いてメロが振り向くと、息がかかるほど近くにLの顔があった。何を考えているかわからない大きな瞳に見据えられて、拗ねたようにメロは顔を背ける。

「……べつに、いいだろ」
「ええ。良いですね」

何処か的外れな答えを、Lは微笑みながら言った。いちいち応えんなよ、というメロの文句を聞き流しながらバルコニーの縁に手をかける。メロと同じように、暗い暗い夜空を見上げた。

「………星、」
「あ?」
「星、見えるといいですね。」

そう呟いたLの横顔が、月明かりのせいかひどく切ないものに見えて、メロは驚いたように目を丸くしてから、見たくないものを見てしまったというように目を閉じた。



雲に覆われた星が、流れる。
―――いつか、星、見えると良い。


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