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By 【海の音】
 天気の良い祭りの祝日、テトラはオベル島の正装に袖を通した。デスモンドが前夜訪れ、これを着るようにリノから言付かったと置いて行ったのだった。どう見ても王族の晴れ着にしか見えない。
今朝、晴れ着を前に躊躇しているとセツがやってきて、問答する間も無く着替えさせられた。しばらくすると今度はフレアがやってきて、テトラは祭りの席へ引っ張り出されたのだった。

「テトラ、素敵よ。よく似合ってるわ。」

「…フレアも似合ってる」

「ふふ、ありがとう。これはお母様の服を手直ししたの。」

 フレアは嬉しそうに笑った。誇らしさすら感じさせる笑顔はテトラには解らない感情だ。だがオベル島に来てからと言うもの、テトラはそんな事続きだった。セツは暗にほのめかす事もあったが、リノは父と呼ぶことを強要しなかった。

「テトラ。あれはリーリン達かしら」

 フレアの声にテトラは海を見た。蒼茫に浮かぶ点の赤や黄色、そして時おり引かれる境界線は波の作る白い泡。
人は海の音に癒しを感じると言う。それは母の体内に居た時に聞いた鼓動の記憶があるから、と聞いた。だとすると母と離れた後も今も母はテトラの側に居た。
テトラは常に海の側に居た。改めて意識した事はなかったが、海育ちという事実は、テトラにとっても誇らしさを感じる事だ。
時に試練を、時に幸福を与える海。母とは…“親”とはそういうモノなのだろうか、とテトラは思った。



END

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2006 12/30〜2007 1/7
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