By 【黒とオレンジ色】(ver.5) ニックが扉を開けると、そこは黒とオレンジ色に占拠されていた。空はすでに夕闇に塗り変えられ、夕日が雲を染めている。寒くなると太陽も家路を急ぐのだろう、ニックはガウンのボタンを留めながら歩いた。 ゴルディアスでの宿舎生活に慣れたとは言え、家族が恋しくなる時もある。季節行事の時期が近付くと、胸の奥から不意にブクリと浮上してくるのだった。ハロウィンの今夜も家でしていたお祝いの事を思いだしていた。 ゴルディアスでするのは創立記念と新年祝い、夏の精霊祭くらいだ。精霊祭も“祭”と付いてはいるが実際は鎮魂式が主となる。特定の宗教式典もしない。 ホームシックになる者も中には居て、ニックも帰りたいと思った事は一度だけではなかった。 その度に、騎士になりたいと門を叩いた夕日のオレンジを思い出す。ニックの中であのオレンジが一番鮮やかな色の記憶となっていたのだった。 END 戻る 2006 10/31 期間限定 [1-10表示] [返信する] [新規トピ] [戻る] 戻る |