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はにゃーん的独用小説板
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ショートショート
By 煌夜
2010-06-02 17:10:35
不定期更新になりますが、短めの文章を上げていこうと思います。
すべての物語に繋がりはありません。
また、街の人や設定が出てくることもほぼありません。
一人称に「僕」を多用していますが、煌夜目線のお話でもありません。
少し長い場合は半分に分けてうpしたりします。

それでは、どうぞ。
pc
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By 不死鳥の命題
2010-06-02 20:08:51
「身体の奥から突き上げてくるこの感情の名は痛みだ。
歪みから生じた意味をなさないよろこびは、狂いとなって執拗にこの痛みを切り裂いていく。
もとよりこの身体には歪みを生むものなど存在しないのだから、この命題は偽である」

真偽の果てには虚空の粒子。
痛みは確かに存在している。歪みを生むものは存在しない。
では内側にあるのは。
境界の先には世界の意志か、それとも。
つまりは箱の中の猫なのだ。生きていても死んでいても第三者には何ら関係のないこと。
そもそも架空の存在とされている自分がここに実在することは、人間にとって真であるのか偽であるのか。
どちらでもない。
必要十分条件にするにはお互いに意識が足りていない。
要はどちらでもよい。
どちらであろうと世界はよどむことなく流れていく。
流れに抗ってはいけない。流れを変えてはいけない。
ならば覚醒すべきか、それともまだまどろみの中で泳ぎ続けるべきか。
歪みは痛みを切り裂くが、痛みはまどろみの流れを切り裂いて目覚めろと叫ぶ。
気だるい微熱というものをもてるならば、この頭の重さとどこか似通っているに違いない。
それではこの絡みつくような気持ちの悪さをどう呼べばいいのだ。
感覚ではない、とにかく眠たい。
どろりとした鎖に縛られて、曖昧の海へ沈んでいくような。
死と再生。
持っていたはずの両翼は一体どこへ置き忘れてきたのだろう。
すぐにこの気分を食べてしまえるはずなのに。
最近気分がすぐれないわけだ。この間珍しく『歌った』から。
両翼をあの子の頭へ植え付けてしまったのかもしれない。
警鐘を鳴らしているのは使い物にならない脳か、それとも近隣の村々か。
耳につく尖った音は今や心地のよい子守歌。
pc
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By 砂独界
2010-06-02 23:58:56
白い砂が流れていく。
荒いとは言えないが、きめ細かくもない砂は、風が吹いても舞い上がりはしなかった。
それが何故流れているのかといえば、つまり水が流れるのと同じ事なのだろう。
気味の悪いくらいに青く透き通った空には月がふたつ。
もしかしたらどちらかは勢いを無くした太陽なのかもしれない。

ざぼん

もったりとまとわりつくような音を立てて、砂地から腕が生えてきた。
其れを腕と判断したのは、先端が指のように分かれていたからであって、実際に腕なのかは確かでない。
土気色と紫の中間のような、枯れ枝のようで生木のような、奇妙な質感の腕だった。

触るのも気味が悪いので放っておいて、少し辺りを歩くことにした。
砂の流れを辿る。地上に出ているのは自分と先ほどの腕だけのようだった。
ふと思いついて砂を掬い上げてみる。
白いというよりは透明に近い粒子が指の間からはらはらとこぼれた。
なんとなく冷たい気がする。
嗚呼これは水だな、漠然と思った。

あまりに何もないので足跡を辿り、もう一度腕の場所まで戻った。
流砂の上の足跡はともすれば消えてしまいそうで苦労したが、よく考えてみればあの気持ち悪い物体のところまで懸命に戻ってきた自分が滑稽である。

腕は相変わらず砂から突き出ていた。

あまりの変化のなさになんとなく腹が立ったので、砂を掴んで投げつけてやった。
すると、指らしい部分がうねうねと動く。
何かを掴もうとするようであった。
しばらく観察していると動くのをやめたので、今度は砂を掬い上げて上からざあざあかけてやった。
しかし今度はまったく動かない。

なんだこんちくしょう、おどろかせやがって。

それから砂を掬って腕に注ぐ作業を何度繰り返しただろう。
少しずつ腕にみずみずしさが宿ってきたことに気が付いた。
何かを掴もうと固まった腕は、救いを求めているようにも見えた。
すっかり腕の形になったそれは、やはり腕だったらしい。

空はいつの間にかエメラルドグリーンの海のように輝いていた。
あまりに退屈になって、不気味に思っていた腕にそっと触ってみる。

刹那。

腕は恐るべき勢いで触れた手を掴み、そのまま砂の中へと瞬時に潜ってしまった。
手を掴まれているのだから当然一緒に砂に引き込まれた。
思わず目を閉じ、砂の感触に耐える。
どのくらいそうしていたか、ふと気づくと体を包む感触はまるで空気のようで、そして水のようで。
おそるおそる目を開けると、まわりはさきほどの空の色。
下の方にはふたつの光。
浮いているのか、漂っているのか、とんでもなく曖昧な位置に居ることに気づいた。

くすくすと笑う声がして振り返ると、逆光で顔は見えないが、一人の女性が居る。
聞き覚えのある声にハッとして手を伸ばそうとするが体が思うように動かない。
空中なのか水中なのか、とにかく動きづらい環境を恨めしく思った。
その一方、女性はすいすいと遠ざかる。待ってくれ、と言いたいのに声まで出ない。

まっているよ
まっているよ
まっているから

その影が見えなくなる瞬間に声が聞こえ、次第に強くなる光に視界が奪われる。
そうして気が付いたとき、あの砂の丘にいた。
自分一人で、たった一人で立っていた。
頭上にはふたつの月。吐き気のするほど青い空。
右も左もない世界で、一歩の重さを痛感する。


まっているよ。
なんて曖昧な、それでいてひどく甘美な。
砂のように軽い口約束だとしても、それを心の支えにしていればこんな世界でも耐えられるのだろうか。

pc
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By 糸狂間
2010-06-05 19:59:22
夢を見た。


それは自分の身体にいろいろな物が巻き付いている夢だった。
紐はもちろんのこと、ロープに鎖に有刺鉄線…茨のつる。
巻き付くのに適した形状のありとあらゆるものがぎゅうぎゅうと絡み合っていた。
そいつらが四方八方から好き勝手に引っ張ってくるので動くこともままならない。
初めのうちはじたばたしてみたが、途中から暴れるのを諦めてそいつらの好きなようにさせておいた。
よく見てみると巻き付き共ののびる先には見知った顔ばかりがある。
手に握ったそれらで身体を引っ張るのは彼らだった。
ある人は僕の身体を動かし、ある人は容赦なく引きずり回す。
それを同時にぎゅうぎゅうとやってくるもんだから、腕の一本や二本がちぎれてしまってもおかしくないと思った。
「捨ててくれ」
そう言った。何故かそう言わなければいけない気がした。

ぶつり。

紐が切れる音なんかまともに聞いたことがないから、あれは脳が勝手にあてた音なのだろう。
とにかくそういう音を立てて、緑の粘つく液体を吹き出しながら紐が一本ちぎれた。
身体に巻き付いていた部分はさらさらと消え、知人に繋がる方はうねうねと気持ち悪くのたうちまわっている。
このやろう、紐のくせに汁なんか出しやがって。
心の中で悪態をついているうちに、紐に繋がる知人が消えていた。

ぶつり、ぶつり。

腕に絡まっていたツタとロープがちぎれる。知人が消える。
身体が軽くなる。
それでも容赦なく引っ張る奴、引きずり回す奴、立たせようとする奴は残っている。
何度引き倒されただろうか。
痛い。
さすがに堪らなくなって叫んだ。
「こんなのもうたくさんだ。捨ててくれ、僕を捨ててくれ」

ぶつり。

有刺鉄線がちぎれて赤い液体が噴き出す。
今度は誰が消えるかと思えば、憎たらしいあいつ。
身体が軽くなる。
「捨ててくれ、もう僕に構うな」

ぶつり。

鎖が切れる。
消えたのは親しい友人だった。
もういいみんなきえてしまえ。

ぶつり。

茨が切れる。
消えたのは何より怖れている人だった。
なにもかもなくなってしまえぼくをほっといてくれ。

ぶつり。ぶつり。ぶつり。

身体が軽くなる。
そして最後に残った、一際絡みついていたもの。
あらゆる巻き付き共の下になっていて気づかなかったそれは、棘でも鎖でもなく。
細い細い、絹のような糸だった。
そしてその先に繋がるのは。
僕がもっとも愛して止まない人。否、人たち。
その人達の間には僕に絡むより多くの絹糸が巻き付いていた。

ああ、そうか。そうだった。

「…捨ててくれ」
透明の液体が溢れ出す。さらさらと流れ出す。糸はまだ切れない。
「頼むから…もう捨ててくれよッ!!」
自分でも予想していなかったほど悲痛な叫び声が出た。
紙縒を広げるように、糸がほぐれていく。もっと細くほぐれていく。
名残を惜しむように。未練を残すように。
透明の液体はさらさらと、しかし勢いを増して流れていく。
そして。

ぷつん。

彼らが消えるところだけは見たくなくて、ぐっと目を閉じる。視界は暗転し、静寂が辺りを包む。
完全に自由になった身体ではあったが、何故か力が入らない。
充分に時間をおいてから目を開けると、真っ暗な空間に一人で浮かんでいた。
声にならない絶叫。
あぁこれは狂ったな。思考の片隅が一瞬考え、すぐに押しつぶされた。



そんな夢を見た。

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By 星
2010-06-07 20:03:21
手に入れたいモノがある。
ずっとずっと焦がれていたモノがある。


「宇宙ってどのくらい広いんだ?」
「何をまた唐突に」
「いーから」
畳の上にごろりと転がって問う。
「んー…無限?」
「なんで?」
「何かの本に書いてあったから」
普通すぎる返事につまらなくなって、ふーんと返事をした。
「じゃあさ、人が死んだらどうなんの?」
「…自殺願望でもあんの?」
「ないない。で、どうなんの?」
「……星になる…とか?」
その答えを聞いて、俺はむくっと起きあがった。
「だったら、もし死んで星になったら、その星俺にちょうだいよ」
「はぁ?」
「綺麗な星になって、俺だけのモノになって?」
「ガキか」
「ガキだよ」
ニヤリと笑ってみる。呆れた顔が目の前にある。
その呆れ顔が、今度はため息をついた。
「大切に扱うなら貰われてやってもいい」
「俺が先に死んで星になったら、その時は貰ってくれよ?」
俺は少し興奮していた。
「お前が星になってもどうせ黒くて見えんからいらん」
「それは残念」

星の光が俺に届くまでに何年かかるかわからないけれど、もしお前が星になったなら何度も輪廻の輪にのって、その輝きを見届けるまで生き続けよう。
25時の空の果てに、時を越えた約束。




チラ裏:ほしがほしい(とても面白いだじゃれ)
pc
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By 永遠へ沈む少女の話
2010-06-21 22:17:08

黒髪の少女は、誰にともなくつぶやいた。
「人間なんて滅んでしまえばいいのに」
その容貌からは決して想像し得ない、残酷かつ物騒なことを何のためらいもなく口にする。
そんな彼女の顔には何の感情も浮かんでこない。
「人間は愛すべきもの」
先ほどとは正反対のことを、やはり無表情でつぶやく。
「鳴神さん!」
不意にかけられた声は、少女の顔に感情を呼び戻した。
「ね、ね、掃除場同じだよね?一緒に行ってもいい?」
少女――鳴神沙耶には、同じ年頃の女の子達が取りたがる集団行動の意味が理解できなかった。
「いいよ」
合意する理由も、拒否する理由も鳴神には見つからない。
実際、彼女にとってはクラスメイトが隣にいようといなかろうとまったく関係がなかった。
「やったね!ありがとう!」
いつの間にか、鳴神の周りには女子が集まっていた。
きゃいきゃいと騒ぐクラスメイトを眺め、誰にも気づかれることのないため息を漏らす。
ため息が目に見えるものでなくて良かった。と、彼女は思う。
向こうから声をかけてきたにもかかわらず、鳴神を輪の中へ入れる様子は見受けられない。
しかし、それすら彼女にとってはどうでもいいことであった。
輪の中に入ったとしても、鳴神は自ら孤立していただろうから。

おしゃべりに夢中なクラスメイト達はそんな彼女に気づくわけもなく、いつの間にか彼女が輪から離れていることにすら気づかなかった。
盛り上がっている割に、会話の内容はほとんどが文句や悪口ばかりであり、実に内容は薄かった。

(やっぱり人間なんて滅んでしまえばいいんだ)

魂のランクを自ら下げているような彼女たちを一瞥し、鳴神は再び思う。
「鳴神さーん、置いてくよぉ?」
だいぶ距離の離れた輪から、誰かが大声で叫ぶ。
「あ、今行くよ」
鳴神は軽く微笑んで答えた後、自分がこんな事を考えているなんてあの人達は思ってもいないんだろうな、と口元をゆがめた。

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