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はにゃーん的独用小説板
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悪魔四天王 リメイク
By 水無月無限
2010-02-21 02:16:42
ぐだ書きの方で連載していた物語を小説っぽくまとめなおしてみました。
文章が色々と酷い事になってますが、目を瞑ってやって下さい。
pc
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By 水無月無限
2010-05-05 17:09:19
第13章:水無月家潜入大作戦!? C
 
 
 
無限たちは部屋の向こうにいたノアの「風呂が沸いたぞー、冷めないうちに入れー」という一言で風呂場へ向かった。
セーニャは子供のように目を輝かせ、
「わーい! 折角だから一緒にはいろー!」
白夜にしがみついていた。
「わ、私は構わんが…」
今までは一人で入浴していた白夜だが、他人と入る事には少し抵抗があった。
しかし、セーニャの心からの笑顔を見ると、そんな事もすっかり気にならなくなっていた。
無限が準備に遅れていると、急にふすまが開いた。
「お前は俺と男湯へ行くぞ」
たらいと洗髪用品を手に持ったノアがそこにいた。
「男湯…? 昔は1つしか無かっただろ」
「バーカ、年頃の女の子がいるのに風呂1個で足りるわけがないだろう」
「って事はテメェ!? あのデカい風呂を女湯に改造しやがったのか!?」
「まぁ落ちつけ、男湯はそれなりに広くしておいたぞ」
ノアが口を開けて豪快に笑い飛ばすが、無限はお気に入りの風呂が女湯に改造された事実にショックを隠しきれなかった。
 
 
水無月家の女湯は「大浴場」と言った方が正しいだろう。
正式には「女湯兼来客専用浴場」というらしく、ノアの粋な計らいによって大改造された元・男湯だそうだ。
浴場の扉を開いたセーニャは、白夜の方を向いてその感動を伝える。
「わぁー!! すっごーく大きいねーっ!!」
それを聞いた白夜は―何を勘違いしたのか―、自分の身体を見ながら、
「…そうか、大きいか……」
と呟いた。
「すごいねー! こんな大きいの見たのは初めてだよー!!」
立て続けにセーニャが発言すると、白夜は顔を紅潮させ
「よせ…照れるではないか……」
さっさと洗い場に行ってしまった。
 
 
体を洗い終えたセーニャと白夜は、『薬湯』と書かれた風呂に浸かっていた。
薬湯というのは、様々な生薬がつけられた風呂の事で、体の様々な症状に効き目がある。
セーニャは滅多に味わえない快楽に身を任せており、普段出来ない事―足を思い切り伸ばして湯に浸かる―をしていた。
「いいよねー、大きなお風呂って。 ここは本当にいい所だよー」
顔を火照らせて語るセーニャに、白夜はちょっとした疑問をぶつけてみる。
「…そういえば、『悪魔の国』はどんな所だったのだ?」
セーニャは軽く伸びをすると、頭にタオルを畳んで乗せなおした。
「んー。 いいところだよー。 こっちの世界で言うなら北国っぽい感じかな?」
「北国…。 通りで悪魔は個性的な者ばかりだと」
「うん。 皆面白くて優しいんだけどー…」
語尾を濁しながら指を組んだ。
「セルフィアは優しいんだけど、怒ると怖いんだよー。 最近また怒りっぽくなったしー」
「そのせいか、この前だってちょっとした事で怒られたんだよー!」
水面をばちゃばちゃと叩き、向け所のない怒りをぶつける。
「それにセルフィアはいばりんぼーだし、むだづかい多いし……」
「フッ、厄介なリーダーを持ったな、セーニャ」
言い出せば数えきれないであろうセルフィアの愚痴を、セーニャは紡ぎ続けた。
 
 
 
混沌ローム荘203号室。
悪魔四天王のアジトだが、今は3人しかいない。
セーニャが水無月無限の家に潜入捜査に向かっているからである。
「………」
アクアリウスは卓袱台の向かいに座っている姉の表情が、いつもより険しい事を感じ取った。
「…姉さん?」
ついつい言葉をかけてしまったが、その後が出てこない。
すると、セルフィアはアクアリウスの方に向き直り、
「何だか無性に腹が立ってきたんだけど何でかしら…?」
右手に握っていたオレンジジュースの缶を握りつぶした。
それを見たアクアリウスは驚きもせず、ただそれを見つめていた。
そして、
「カルシウム足りてないんじゃないの? あと、握力で缶ジュース潰すのやめて」
実の姉にそれだけを伝えて、こぼれたジュースの掃除をするのだった。
pc
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By 水無月無限
2010-05-06 02:39:15
第14章:水無月家潜入大作戦!? D
 
 
 
薬湯からあがり、二人は一度体を流すために洗い場に向かった。
白夜が椅子に座るのを見て、セーニャはボディソープを手で泡立てる。
「お背中流したげるね、白ちゃん」
「ん、すまんな」
ゆっくりと泡に包まれた両手で、背中をマッサージするように洗い始めた。
まんべんなく、肩のほうから腹の辺りまで、入念に洗っていく。
「―! そこはやめろッ!」
「う? 痛かった?」
ビクンと体を跳ねさせる白夜を心配して声をかけたが、
「脇腹はやめろ…、脇腹は自分でやる…!」
「へー…。 そうなんだぁ…」
『やめろ』の一言がセーニャの悪戯心に火を付けた。
「じゃあここはー?」
「ひッ!?」
セーニャは両手をゆっくりと首筋に滑らせていく。
途端に、白夜の顔は凄まじい勢いで紅潮していった。
「首筋…っあ、う…。 や、やめんか…!」
その表情を見て、さらに歪んだ笑みを浮かべるセーニャ。
世間一般ではこのような表情を『小悪魔』と言うらしい。
「んー。 じゃあ、ここはどうかな……?」
セーニャがかぷっと甘噛みをしたのは、なんと白夜の耳だった。
その瞬間、白夜は声にならないような悲鳴を上げた。
「はにゃあっ!?」
白夜の反応を楽しむかのように、続けて耳を甘噛みし続ける。
「きっ、きしゃま…! そこはぁ……耳だっ………!!」
その都度、白夜は力が抜けていき、最終的には座る事すら困難になっていた。
「えへへへー。 案外白ちゃんって弱点が多いんだねー!」
真っ赤に染まった白夜の顔を横目に、セーニャは満足げな表情を浮かべていた。
 
 
「あー、やっぱり家風呂ってのは良いもんだ」
「だろー? 男湯だって負けじと良い物を揃えているんだぜ?」
談笑を交えながら男湯から出てきた無限とノアは、腰に手を当ててフルーツ牛乳を一気飲みしていた。
「ぶはー! やっぱ風呂上がりはこれだな!」
「…そういえば、あいつらまだ出てこないのか?」
脱衣所を出ると公共の休憩所のようなものが設けられており、二人はそこに座っていた。
無限は「姉さんの事だから、セーニャが長風呂に付き合わされてひーひー言ってるんじゃないのか」と考えていた。
それも束の間、女湯の出入り口の戸が開いた。
「姉さん、随分と遅かったじゃ…」
「おい白夜、どうした? 顔が真っ赤だぞ?」
そこには、顔を真っ赤に火照らせて、足元もおぼつかない白夜。
そして、長風呂だった割にそうでもないセーニャの二人が立っていた。
「セーニャ、姉さんはどうした?」
無限がそう聞いた瞬間、白夜は無限にもたれかかるように倒れてきた。
「っとと、本当にどうしたんだよ? 姉さんがのぼせるなんて珍しい」
両肩を抑えて何とか倒れないようにするも、白夜の方は話すのも精いっぱいらしい。
「…もう…駄目かもしれん………」
やっとのことで口を開くと、白夜は涙目でこう言い放った。
「嫁に行けぬ体になってしまった…。 行く気はないが……」
無限はどう返して良いのか分からず、その場の雰囲気と自らの判断で突っ込むことにした。
「案ずるな、元から貰い手なんていないだろ?」
―突っ込まれたのは無限の方だったのは、言うまでもない。
 
 
水無月一家が寝静まった頃、一つの影が目を覚ました。
―悪魔四天王の一人、セーニャである。
セーニャはこの時を狙っていたのだ。
一家が寝静まった夜中なら、気付かれずに上手く行動できる。
静かにかつ迅速に、セーニャは獲物へと近付いていく。
そして今、『それ』が入った庫の扉にセーニャが手をかけた。
ガチャッ、という扉が開く音と共に、瓶と瓶の擦れ合う独特な音が響く。
セーニャの目的、それは―。
「やっぱり寝る前には牛乳だよー」
―乾いた喉を潤すだけだった。
 
 
何事も無く朝を迎えた水無月一家。
だが、中庭で布団を干していた白夜だけは異変に気付いていた。
しばらくして、布団を干しに来た無限とノアもそれに気付くことになる。
白夜は布団の『それ』を指差して、まず無限に聞いた。
「ここはどこだ?」
「イタリアか…。 『青の洞窟』には一度行ってみたいな」
答え終わると、無限はノアの方を向いて、別の所を示した。
「スペインは…『サグラダファミリア教会』だな」
「俺はてっきり『桜田一家の教会』かと思ったぞ」
そしてノアは白夜を見ながら言った。
「ここはイギリスだったな?」
「どっ、『ドーバー海峡』は、泳いで渡れる距離だそうだ!」
自分の海外に関する知識の薄さに若干落胆するも、何とか答える事が出来た。
そして、無限は目の前で小さくなっているセーニャを咎めるような口調でこう言った。
「しかしよくも、水無月家でこんな手垢のついたことをしてくれるな?」
続けて白夜が食いかかる。
「『寝小便』で世界地図を描くとは…。 器用を超越しているな」
それを聞いたセーニャは、涙をボロボロ流しながら
「うあーん! だって寝る前に牛乳飲まないと寝れないんだもーん!!」
必死に言い訳をするのだった。
 
 
「じゃあ、今日はとりあえず帰るね!」
リュックサックを背負って水無月家の一同に別れの挨拶を告げる。
無限はいつも通り無表情で―それでもいつもよりかは微笑んでいたが―手を振っていた。
「道中気を付けるんだぞ」
「達者でな」
「うん! 気を付ける!!」
セーニャは底抜けに明るい表情で言った。
「セーニャ、俺、悪魔の見方が少し変わった気がするんだ」
その笑顔に触れてか、無限もつられて不器用な笑顔で言った。
「あの時は別としてだが、その…、楽しかったぞ」
白夜は風呂場での事を思い出しながらも、セーニャとの別れを惜しんだ。
「私も楽しかった…! むーちゃん、白ちゃん…。 わたし、忘れないよ!!」
セーニャは涙を堪えながら、それでも笑顔で言った。
「むーちゃんの寝相の悪さといびきのうるささ…。 あと、白ちゃんのかわいい寝言!!」
それを聞いた途端に、無限と白夜からは笑顔が消え、
「忘れろ! 今すぐに忘却しろ!!」
「貴様を忘却の彼方へ送っても良いんだぞ?」
「うえーん!! ごめんなさああぁい!!」
ギラギラと光る目をセーニャに向けていた。
 
 
 
混沌ローム荘203号室に戻ったセーニャは、たまっていた洗濯物を洗濯機に入れると、アクアリウスの元へ向かった。
「たっだいまー!!」
「おかえり、セーニャ」
アクアリウスは相変わらず落ちついた表情を見せていたが、
「…で、分かったの? 水無月無限の弱点は」
任務の成果を逸早く、セーニャの口から直接聞きたかった。
「うーん…。 お姉さんの方しか分からなかったよー」
「それでもいい。 姉となればさらに強大な壁になるだろうからな」
「わかったよ!」
セーニャはすっと立ち上がり、アクアリウスの背後に回った。
「…? 何を…」
「脇腹と首筋!!」
「ひゃあう!?」
すると、浴場で白夜にした事と同じ事をアクアリウスにやり始めた。
「あとはー、耳をやさーしくはむはむすると……」
セーニャがアクアリウスの耳に甘噛みをしようとした、その瞬間。
―バァン!!
何かの衝撃によってアクアリウスにくっついていたセーニャは、ドアごと外に吹き飛ばされた。
「いったーい…。 何するのー?」
痛みよりも疑念や驚きの方が強かったらしく、アクアリウスにそれを訊ねたが、
「そんな如何わしい知識をひけらかす子はうちの子じゃない!! 出ていけ!!」
「うえ―――――ん!! そんなぁ――――!!」
セーニャにはその言葉の真意が理解出来ていないようだった。
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By 水無月無限
2010-05-07 00:29:27
第15章:水着でドキドキ!? 温泉リゾート物語!!
 
 
 
現在帰省中の水無月無限は、お湯が一切張られていない浴槽に入っていた。
そして、その隣には姉の水無月白夜もいた。
さらに言うと、二人は仮装―世に言う「ハロウィン」のものだろうか―をしていた。
無限は頭に斧が刺さったゾンビを、白夜は東洋の魔法使い(黒いマントととんがり帽子を被っていた)を演じていた。
「トリック・オア・トリート…」
「お菓子をくれないと、おかしな悪戯をするぞ…」
力のない無限の台詞に続き、白夜もその後に続く。
そんな二人の元に、さらに残念な知らせが届いた。
ノアが浴場の扉を開けると、ガスの抜けたような声で言った。
「ハロウィンなんてとっくの昔に終わっただろ。 そんなことより、まずいことになっちまってな」
「…風呂がぶっ壊れた」
無限と白夜は、浴場の気温が一気に10度ほど下がったような錯覚を覚えた。
 
 
機能を失った浴場を後にした三人は、ひとまず居間に集まって会議を開くことにした。
「しかし、風呂に入らない訳にはいかねぇんだよな…」
「当たり前だ! 修行を終えてからの一風呂というのが最高だというのに…!」
「どこの女の子も風呂は好きなんだな…。 俺も人の事は言えねぇが」
「お前女だったのか」
「勘違いすんなクソ親父」
そんな口論を続けているうちに、ノアは一冊の情報誌を見つけて取り出した。
おもむろにページを開くと、ああだこうだ喚く二人の前で中身を読み始めた。
「『水着で入れる混浴温泉リゾート! スパリゾート【カオスティックブルー】へ是非お越しください!!』」
「…だってさ」
「わーい! 温泉リゾート! ぼくも行きたーい!!」
ノアが雑誌を一通り読み終えた瞬間、水色の影が背後から飛び出した。
無限は水色の影に向かって叫んだ。
「レイ、てめぇいつの間に!?」
レイと呼ばれた小柄な少年は、真っ赤なベレー帽を直しながら言った。
「いつのまにって、さっきからここにいたよ?」
平然と答えるレイだが、半ばあきれたように白夜が口を挟む。
「貴様…全く気が利かぬな……」
「折角の家族水入らずで温泉リゾートだぞ、貴様はアヒャントと留守番だ」
「えー!? そんなぁー!!」
白夜に冷たくあしらわれ、涙目で叫ぶレイ。
その後ろからまた一人、今度は青い影が顔をのぞかせた。
青い影は無限と同じように大剣を背負っているが、その体躯はかなりのものだった。
「おいおい、そんなに俺と一緒が嫌かい」
「お前もいつの間に来たんだよ、アヒャント…」
ノアがため息をつきながらアヒャントに声をかけるが、彼から帰ってきた言葉は
「いつの間にって、さっきからここにいたぞ?」
レイと全く同じ台詞だった。
 
 
その頃、レイは溢れんばかりの涙を目にたたえ、白夜に食いかかっていた。
「白夜姉ちゃんの話はおかしいよ!!」
「一体どこがおかしいというのだ。 家族水入らずにおかしな所などあるまい?」
「いや、家族水入らずでどこに行くつもりだったのさ!」
「…温泉リゾートだが」
若干怯んだ表情を見せた白夜に、レイは追撃をかける。
「そうだよね、『温泉』リゾートだよね」
「―じゃあ、『水いらず』なのに、水を求めて『温泉』リゾートなんて変だよね…?」
白夜の背筋は一瞬にして凍りついた。
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By 水無月無限
2010-05-10 02:14:27
第16章:水着でドキドキ!? 温泉リゾート物語!! A
 
 
 
結局、レイとアヒャントを連れて行く事になった水無月家は、準備を済ませるとそそくさとバス停へ向かった。
あまり時間がかかると、混みあう時間帯になってしまうからだ。
混沌界を走る「カオスロードバス」に揺られ、およそ20分―。
ついに、「スパリゾート『カオスティックブルー』」に到着した。
「よーし、着いたぞ温……」
「『温泉リゾート』と言う前に、無限はバス停のそばにいた2人の女の子に目をやった。
そして、銀縁の眼鏡をかけている子に向かって口を開く。
「…何だ。 お前らも居たのか、フィーラ」
「居ては悪いとでも言いたげですわね?」
二人が目を合わせた瞬間、バス停の周囲は険悪な空気に包まれた。
ノアはその様子を見ながら、はぁ、と深くため息をつく。
…フィーラと無限は決して仲が悪いわけじゃねぇ。
無限が知らず知らずの間にそういう態度を取っているから、フィーラも食い下がるわけだ。
レイとアヒャントに「入場券を買いに行くから、無限をひきはがせ」と言うと、ノアはさっさと券売機の方へ行ってしまった。
 
 
ノアから入場券を受け取ると、フィーラは複雑そうな顔を浮かべていた。
それに気付いたもう一人の女の子が声をかける。
「んー? どしたの、フィーラ」
「サンダ、貴方は少し考えを改めなさい」
「え?」
フィーラにそう言われると、サンダは自らの格好を確認してから言った。
「何が?」
「何が? じゃありませんわよ! なんですその格好は!!」
「なによ、失礼ね!」
彼女の今の第一印象を説明するとこうだ。
浮き輪を抱えて麦わら帽子を被り、薄手の上着を着た健康的な少女。
―問題は、上着の下に「スクール水着」と呼ばれる水着を着ている事だった。
「そっ、それでは丸見えではありませんか!!」
「良いじゃん別に、これから見せるんだしー」
そう言うと、サンダは子供のようにはしゃぎながら女子更衣室へと向かった。
「こら! 浮き輪は置いていきなさい!!」
それを追うフィーラの後ろ姿は、まるで一児の母のようにも見えた。
「………水着、か」
その呟きは蚊が鳴くように小さく、誰にも聞かれることが無かった。
そして、白夜は静かに更衣室へと消えて行った。
 
 
女子更衣室では、女の子同士の水着披露大会が始まっていた。
「サンダ…、あなたどういう考えであれを着てきたんですの?」
フィーラが呆れたようにサンダの方を向く。
すると、彼女は先程までのスクール水着とは打って変わって、花柄の黄色いワンピースの水着を着ていた。
「どういうって、あれを着てれば子供料金で入れるかなーって」
「絶対に無理ですわ」
即答するフィーラに頬を膨らませるサンダだったが、フィーラの水着姿を見て息をのんだ。
「おお? フィーラちゃん、その水着可愛いねーえ」
「そ、そうですか? 何だか照れますわ…」
サンダが水着を高く評価するのも無理はない。
形自体はサンダと同じワンピースだが、至る所に細かな装飾や大量のフリルが付けられており、その水着が高級である事を示していた。
一方の白夜は、自らのカバンから取り出した水着を手に棒立ちしていた。
「白夜はどういう水着なのかな…って、まだ着替えてないのー?」
「私はお前達と違って家で水着を着てこなかったのだ」
「悪いが、先に行ってくれぬか」
二人に詫びを入れる白夜だが、サンダはそれに応じなかった。
「何言ってんのさ、水くさいー」
「んな!? 何をする!!」
サンダは白夜の背後に回り込むと、着物の帯に手をかけた。
「のろまさんは脱がすしかないでしょ! さっさと気がえろー!!」
「や…やめろ!! 無礼者!!」
白夜の着物がほどけて行くにつれ、白夜の顔は炎のように赤くなっていった。
フィーラは呆れたように
「…他人のふりに限りますわね」
と言い残し、女子更衣室を後にした。
残ったサンダが白夜のさらしに手をかけると、女子更衣室には短い悲鳴が響いた。
 
 
男子更衣室では、男4人が着替えを済ませており、いざ温泉へ向かわんとしていた。
すると、女子更衣室から聞きなれた声が悲鳴をあげているのが耳に入った。
「…何してんだあいつら」
無限が「面倒なことにならなきゃいいが」と付け加えると、後ろで準備体操をしていたノアは独り言を漏らした。
もちろん、無限がその独り言を聞き逃すはずなどなかった。
「若気の至りかぁ」
「変な事言ってるとサツに突き出すぞ、変態親父」
その隣でアヒャントは「お前はああいう大人になっちゃダメだぞ?」と教えていたが、レイはまだ見ぬ温泉の世界を想像していたため、彼の声は半分も届いていないだろう。
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By 水無月無限
2010-05-13 14:33:24
第17章:水着でドキドキ!? 温泉リゾート物語!! B



着替えを終えた無限たちの目の前に広がるのは、南国をイメージした広大な温泉施設だった。
無限が案内板に目を通し、ふむふむと頷く。
「随分と色々な風呂があるじゃねーか」
「…片っ端から片付けてしまうぞ」
その隣には、真っ白な競泳水着を着た白夜が、腕を組んで立っていた。
サンダとフィーラの姿はすでになかった。
白夜を剥いだ後、彼女たちの行方は知れていないのだが、無限はあえて忘れることにした。
その様子を見ていたノアだが、白夜の横顔を見ながら、更衣室で何があったのかを推測していた。
(…何があったらこんな怖い顔になるんだか)
(まぁ、ここは聞かないでおいてやろう)
それが、今の彼にできる最大限の優しさだった。


まず無限たちが向かったのは「牛乳風呂」と書かれた風呂だった。
まるで巨大なコップに注がれたホットミルクのようだが、そこに入ると考えると興味をそそられる。
無限はレイの顔を見ながら笑った。
「牛乳風呂だってよ、お前もこれで背が伸びて、チビッ子が治ればいいな」
「うるさーい! よけいなおせわだよー!!」
そのやりとりを見ていた白夜が、おもむろに口を挟む。
「フン、もう忘れおったか」
「…何をだ?」
「レイがお前の年の頃になると、今の貴様の身長を陵駕するんだぞ?」
「あぁっ!!」
レイは先ほどの膨れ面から一転、勝ち誇ったような笑みを浮かべた。
無限は、レイに「大人になる薬」を飲ませたことがあった。
すると、大人のレイは今の無限より背が高く、さっぱりとした好青年になったらしい。
以来、無限はレイのチビッ子が治るのか治らないのかでハラハラしていたのだ。
そんな彼を差し置いて、レイはがちゃがちゃと音を立てておもちゃを広げていた。
「僕ねー、色々とおもちゃを持ってきたんだー」
「そんなモノ、他のお客様の迷惑になるだろうが…。 まったく、これだからお子様は…」
「…なあ? 無限よ」
牛乳風呂に浸かっていた白夜が呆れたように言うが、
「お! いいモン持ってんじゃねーか! 俺にも貸してみろ!!」
「うん! いいよ!!」
「……木乃伊(ミイラ)取りが木乃伊になってどうする」
深くため息をつきながら、他の風呂へと移動してしまった。


「次は珈琲風呂か。 液体であれば、なんでも風呂にしてしまえという流れか…」
白夜は若干のカルチャーショックを感じつつ、珈琲風呂に浸かった。
淹れたてのコーヒーのような香ばしい香りが白夜を包み込む。
その香りを楽しむこともなく、白夜は白夜らしい疑問を浮かべていた。
「…なぜ牛乳や珈琲があって、日本茶が無いのだ?」
すると、牛乳風呂から出てきたのか、レイが風呂桶を持って走ってきた。
「ねー! 白夜ねーちゃん!! 僕面白いこと思いついたよ!!」
白夜は頭の中で疑問符を浮かべたが、レイの行動を見た途端、それは疑問符から感嘆符へと変わっていた。
レイがもうひとつの風呂桶で、珈琲風呂を1杯すくい、別の風呂桶―こちらには牛乳風呂が1杯入っている―に注いで、白夜に見せた。

「はい! カフェオレのできあがりだよ!!」
白夜は背中に嫌な汗を流し、
「貴様、なぜ今日はこんなに冴えているのだ……!!」
と問いかけたが、既にレイはそこにいなかった。
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