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沖神文(銀魂)
By 管理人珠

恥ずかしい感じのほのぼの短文です。






赤の理由





 バタンと二人、倒れるのは同時だった。
 既に赤々とした夕日が町を照らしており、もうすぐ真っ暗闇がやってくる。
 今日の勝負はここまでだった。

「…今回も引き分けアル」
 不服だと言わんばかりに神楽が漏らした。少し弾んでいた息も段々落ち着きを取り戻すが、背に感じる冷たい草の感触が気持ち良くてそのまま目を閉じる。
 隣で起き上がる気配がした。
「これくらいでへばってんのかィ? 情けねぇや」
 聞き捨てならない台詞だ。沖田の挑発だと分かっているものの腹が立つ。
「んなことあるわけないダロ! お前に休憩時間与えてやったアルネ!」
 怒鳴りつけるが身体を動かすのが億劫だ。そこら辺の生半可な輩と違い、沖田とやり合った後は身体が疲労を訴える。
 その事実がやっぱり悔しくて、でも少しわくわくしている。
 夜兎の血が騒ぐ、とかではなくて、もっと別の……心の奥がざわめくようなそれを神楽は感じていた。

 ふと、瞼の向こうに影ができる。不審に思いゆっくり視界を広げてゆくとサラサラと流れる茶色の髪。少し赤みがかった瞳がこちらを覗いていた。
 もうほんの僅かの距離に驚くよりも固まってしまう。
「なんでェ、寝てるんだったら唇でも奪ってやろうかと思ったのに」
 目の前の唇が三日月形に歪む。逆光で、まるで夕日の光を背負ったような相手に不覚にも一瞬胸が高鳴った。
 こんな気持ち、錯覚に違いない!
 次の瞬間、沖田の身体は夕日をバックに宙を舞った。
 神楽が繰り出したアッパーが見事に決まったのだ。

「私を口説こうなんて百億万年早いネ!」
 吐き捨てると同時に、万事屋に向かい走り出していた。
 夕日が出てるうちに帰らないといけない。
 そうしたら、この赤い顔を夕日のせいにできるから。



end

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