[通常モード] [URL送信]

戯言
[返信する]

ざれ言2
By 美穂
2009-03-16 10:40:30
―2話―【澄百合学園】


「――て!―きて!起きて!起きてっってばあぁぁ〜〜〜〜!!!」

1番最初に目を覚ました歳羅が力いっぱいに叫んだ。
その声で、みんな目を覚ましたみたいだ。

「あれ?ここ、どこ?」

侑稀がきく。しかし、みんなここがどこだかわからない。無言。

「ざれ言の世界なの?」


やっぱりみんな無言。数秒過ぎて、

「あっ!あれ、美穂先輩じゃない?」

美穂に気づいた未来が言う。

「え!?あ、本当だ。何でここに・・・。」

続いて緋絽も言う。

「とりあえず、行って話を聞いてみよう!」
と走ろうとしたとき未来が何かを踏んだ。


「え・・・?何・・・?」


ゆっくりと下を向いた未来が『あ、忘れてた!』と言う顔をして、
「あぁ・・・。すいません〜〜〜!!」


踏んでいたのは、踏むまで忘れさられていた、猫(自称神)だった。
しかし、未来以外の3人は、すでに美穂のところへ行っていた。
あわてて猫を持っていった。
美穂は、少し離れたところにいた。どうやら目を覚ましていないらしい。

「(一人で来たのかな?)」


美穂は呼びかけられてすぐ目を覚ました。

そんな美穂に侑稀は聞いてみた。


「どうしてここにいるんですか?私たちは自称神に連れてこられてんですけど・・・。」

「え?自称神?それって、この手紙書いた人?(神?)」
そういってあの手紙を見せる。
一通り読むと、一言。
「うわぁ・・・。あの猫すごく勝手だ・・・。」

「・・・あれ?小紅は・・・?」

「・・・・・・・・・・・・・ここにいるけど・・・・。」
声のする方向を見てみるけど、小紅はいない。

「おーい。何でかくれてるのー?」
すると何かが美穂の服を引っ張った。




「ん?・・・・ウサギ?」

そのウサギがなぜか二本足で歩いていて、
「ここにいるってば!」
と言った。


「「は?小紅?」」
美穂と侑稀が言った。


「うん。何かこの世界に来て目が覚めたらこうなってた。」

「えーっと、何か心当たりはないの?」
と、美穂がきく。


「うーん・・・。あ、落ちるときに、このブレスレットが光った。」

小紅は手首につけてあるブレスレットを指した。

「何これ?」


『それはですね〜』

と、さっきまで腹を踏まれて気絶していた猫が得意そうに話し出した。

「「・・・・・・・で?」」


手を出す侑稀と緋絽。

『え?何ですかその手?』

「そ〜んな便利なものがあったんだ〜。」
「『え?』って何?そーゆーのって、私たちにもあるよね〜。」
「2人だけわたして、不公平だな〜。」
「私たちには何かないのかな〜?」

『あ、ありませ「「あるよね?」」』

『いえ、だからあ「「いいから、出せや」」はい。ごめんなさい。』
と、猫はどこからか拳銃やノートパソコンメガネ、本を取り出した。

「ほぉ、良いものあるじゃん♪」

半分位、恐喝しているようにしか見えなくもないが・・・。まぁ、似たようなものである。
猫はまた、自慢げに話し始めた。

・○・○・○・

「ふーん、まぁ、便利かな」
と、歳羅。
「私のなんて水鉄砲にもなるって・・・ふざけてんの?」
と、侑稀。
「あ、ラッキー。これ、ネットに接続できんじゃん。」
と、緋絽。
「本って、・・・何に使うんだろ?」
と、未来。


『すいません、もう勘弁してください!本当もう何も持ってませんから!!』

腰が低い神(見習い)
お前はカツアゲされたオッサンか!!

「あ、炎も出るって。
歳羅か神で試してみよう。」

「ぜひ神でお願いします!!」←歳羅

『うわああぁぁああ!!すいません銃こっちに向けないでください!!』

「お前は本当に神(見習い)か!!」←緋絽

「まぁまぁ、」←小紅
「・・・・・・・・・」←未来(一時停止)

「ところで!!みんなの一番最初の疑問!!
ここはどこでしょーか?!」←美穂

「あ、ここに書いてありますよ。・・・・・・“澄百合学園”・・・・・・。」←小紅


「けど、ここって校内外だよね?」←未来

「どうやって入るの?」←緋絽

「はーい、ちょっとみなさんどいてねー。」

全員がふり返るとそこには、



銃(炎弾入り)を向けている侑稀の姿。

「・・・・・侑稀ちゃーん、一体何をしようとしているのかなー?」←歳羅
「教員等は姫ちゃんに殺されちゃってるよね?扉を爆発させても問題はないよ。」←侑稀
「いやいやいや!!
問題ありまくりだろ!!」←緋絽

「大丈夫、爆破させても犯人はいーちゃんたちになるんだから。」←侑稀
「けど、ゆ「(侑稀)何?燃やされたいの?」ごめなさい。」←歳羅


土下座の勢いで謝る歳羅。
そして侑稀は扉を爆破させようと、扉に銃を向けた。

「いっくよー♪」


「なんで嬉しそうに、笑顔でやろうとしてんの?侑稀ちゃん?」
美穂はすかさずツッコミを入れた。

「いーじゃないですか〜。どんだけの威力があるか確かめられるし〜、
それより、ほかに“面白そう”じゃないですかー。」

「さらりと本音言っちゃったよ。」

緋絽のツッコミをムシし、侑稀はこう言った。

「さぁ〜みなさん、こうしているうちに時間は過ぎるから、やろっかー。
いーちゃんにも会ってみたいし。」
「やっぱ、さらりと本音言ったよな。」緋絽はボソッとツッコンだ。その声は届かない。


「いっくよー☆」
「だから、」


ドーンッ



「もう一丁☆」

と、侑稀は面白かったようで半壊した扉にまた撃った。
ドーン侑稀の目が光った(よに見えた)。その瞬間!!!



ズダダダダダダダダッ!!!!



「・・・・・・・・え・・・・・・」×5人+神(見習い)



・・・・・沈黙。

みんな一時停止。




――――数秒後侑稀が振り返った。

「ふぅ、完了☆」


まるで何事も、何の音も、何の破壊音も、聞いてなかったように、
ただただ、爽やかな笑顔で汗をぬぐうように腕を動かし、一仕事終わった。と、一息つこうといわんばかりの声だった。



また数秒後、やっと気づいたといわんばかりの声で、
「あれ?みんな、どうしたの呆然として?」


「(こいつだけは敵に回したくねぇ・・・)」×5+神(見習い)」

「――――やりすぎじゃね?」

緋絽はやっとのことで口を開いた。

「えー?“これでも”おさえたつもりだよ?」


もっとやろうか?と言う言葉をおさえ、緋絽は続けて言った。

「で、威力のほうはどうだった?侑稀?」

「ん〜・・・まぁ、いいね♪。っていうか、撃つって楽し〜♪」


「・・・・あっそ・・・。」

「じゃ、あらためて・・・Let’s go〜♪」

と、美穂の言葉でみんなが言った。

「ねぇ、小紅はいつ戻るの?」

未来が言った。小紅はウサギの姿である。
と、皆忘れていたようで、
「あ、そーだった。どうすんの?神じゃない神(見習い)」

歳羅は神に言った。

『ん〜そのうち戻れるんじゃないですか?』

「「「てめーしばくぞゴラァ」」」

侑稀&美穂&緋絽がキレる。

『!すみません、すみません!!てきとーに言ってすみませんでしたッ!!!』

「てめーは、本当に神(見習い)なのか?」

歳羅は歳羅でツッコミ。

『多分もうすぐ戻るんじゃないか「えっ?何て?」いえ、あの、だから、た、多分もうす「なんだって?」はい、もうすぐ戻ります。はい。だと思「なに?」!もうすぐ戻ります。すみませんでしたぁ。』

「「でもさぁ。」」

未来と歳羅が声をあげた。

「もうすぐって、・・・いつ?」
と、未来。

「何時?何分?何秒?地球が何回まわった日?」
と、歳羅。

『―えっと、もうすぐは、もうすぐ・・・。』

と、言いかけたところで、小紅の体(?)が光りだし、白い煙が出てきた。



ボン☆



「ゲホ・・・ゲホッゲホッ!!!」←歳羅
「けむい!」←未来
「っていうか何も見えん!!!」←緋絽
「てか、何がおきてッ・・・!?」←侑稀
「ぉあ!?つか、皆どこ!?!?」←美穂

と、さまざま声が広がる中、ようやく煙が晴れると、
そこには、小紅の姿。
ウサギではなく、
人間・・・・・・の姿。

「あ、もどった。」×6

『ほら、だから言ったじゃないですか。もうすぐ戻るって!』

「自慢げに言うな。調子に乗るな。我田引水、厚顔無恥、傲慢無礼、薄志弱行のアホ神(見習い)がぁ。」

『ひどくないですか?それに、傲慢無礼って、緋絽さんとか、侑稀さんのほうだと思うんですけど。』

「ね、みんな、どう思う?」

静かに、静かに、言った。

と、


その時。



―――――コツ、…コツ…―――。

足音が聞こえた。

「・・・・・だれ?そこにいるのは、だぁれ?」

「!!!」×6+神(見習い)

少しずつ、姿が現れてくる。

そこには、銀色に光るショートカットの髪を、ゆらゆらとゆらして
澄百合の制服―――。

髪と同じ銀色の瞳の少女。

「・・・貴方こそ、だぁれ〜で〜す〜か〜?」

と、ノー天気に歳羅が言った。

『ちょっ、なんで話し「だまりなよ、研究所に連れて行かれたいのか?てめぇは・・・。」ニャー。』

「・・・私は・・・―――琥珀―――って言います。
で、あなたたちは?いえ・・・あなたたち6人と1匹かなぁ?」

「え〜知らない人には、名乗っちゃだめだよ♪」

未来もマイペースに言った。

『ニャ〜』

「―――ねぇ、琥珀。もう行こう?」

そこには、ストレートロングの薄紫色の髪、と同じ色の瞳の色をした少女がいた。

「そうね、時間の無駄よね。火澄。」

―――コツ・・・コツ・・・
足音がしだいに小さくなった。

「―――あっぶねぇ・・・」
美穂の呟きで何人かの肩が降りた。

「今の人はこの学校の人ですよね?」

小紅がいつの間にか美穂のブウサギで遊んでいる。
耳が引っ張られていて、とてもおかしな表情になっているブウサギ人形。

「!!ぶ、ブウサギ!わ、私のブウサギ!?はなせぇえええ!!!」

小紅の持っているブウサギを必死に取り返そうとする美穂。
余計に形が悪くなっているのは気のせいではないだろう。




「あぁ〜・・・、ひとまず、どうする?」

侑稀が言った。

「うーん・・・。このままで行動するのは危ないんじゃない?」

緋絽のもっともな意見に皆がうなずいた。



「あ!はい!俺、いいもの見つけた!!!」

いつの間にか戻ってきている美穂。
手にはヨレヨレのブウサギ人形がいる。

しかし、小紅は戻ってきていない。
何人かが頭の上に?マークをうかべ、後ろにいる小紅を見て「あぁ・・・。」と思った。

「ちょっ!先輩、こんなとこで全部ボタンはずさないでくださいよ!!!うあ、中のまで外れてるッ。」

小紅の声など右から左へ受け流した美穂は叫んだ。

「全員一列に並ぶ!!」


鶴の一声のごとく、その場に並ぶ一同。

「・・・・・・・あー・・・言い直す。横一列に並んで。」

「「「「「はーい」」」」」


並び終わった一同。

「先輩、番号言いましょうかー?」
「・・・お好きにドウゾ・・・。」


戻ってきた小紅の言葉に返答する美穂。
その顔には、少々疲れたものが混じっていた。

元気よく、未来から番号を叫び始めた。
「番号ぉ!いーち!」未来
「えっ、に、2!」緋絽
「さーん♪」侑稀
「よーん!」歳羅
「ごぉ♪」小紅
『六*+。』神(見習い)
「ブヒッ!」?



「「「「「・・・・・・・・・・ぶひ?・・・」」」」」



「えっ・・・今、声聞こえた・・・よね?」

緋絽の言葉に「気のせいではなかったのか」と思っている人数人。
声の聞こえたほうに全員が体ごと向けた。

そこには、さっきまで小紅と美穂が取り合っていたブウサギ人形があった。

「ブゥ・・・ブゥゥ!ブゥブゥ!!!」

バタバタと動く人形を見て一堂は唖然とした。


そして




見なかったことにした。




ブウサギ人形(?)を抱きしめてる美穂は、口が半開きになっている。
立ったまま気絶してるのではないだろうか、というくらい微動だにしない。
しばらく呆然とブウサギ人形(?)を眺めていると、美穂が我にかえり、「・・・さて」と呟いた。
左手の携帯を持ち直し、説明を始めた。



「はい、ここに携帯があります。」「ブヒ。」


「「「「「「・・・・・・・・・・・」」」」」」

「ブヒ?」


「・・・・・・はい、それでッ(←こらえてる)・・・盗撮した写真があります。」

「「「「「(!?盗撮!?)」」」」」

「ブゥヒブッ!」


「さっきの女の子たちの制服を撮(盗)りました。」


小紅はひっそり「(先輩ならやりそう・・・)」と呟いていた。



「それでは、皆さん、笑って(?)くださ〜い。」


話が繋がっていないが、それぞれ“満面の笑み”や“引きつった笑み”などを浮かべる。

「着替えまーす。(?)ハイ、チーズ」


ピロリロリ〜ン☆

携帯のフラッシュにしては、かなり強い明るさだった。
光の強さに目を閉じた。
数秒後目を開けると。

「っあ!」歳羅
「っわ!」緋絽
「ぅお!」小紅
「わぁ!」未来
「おぉ!」侑稀


リアクションは、それぞれ。
己の洋服は澄百合学園の生徒の制服に変わっていた。

「すごっ!なにこれ!?」
自分の制服じゃなく緋絽の制服を引っ張る未来。
それを緋絽は必死に止めている。
「ちょっと!?の、のびるって!!」

美穂も同じようにフラッシュをあびて、制服に変えた。
フラッシュに驚いたブウサギ人形(?)がバタバタと美穂の腕の中で暴れている。

もう、誰も突っ込まないことにした。


「ひとまず・・・。これから、どうずる?」

歳羅が全員の顔を見渡しながら言う。

全員が「どうしようか?」と頭をフルに回転させる中、未来が言った。

「探検!」
「こんなときに探検!?」

「ナイスツッコミだね♪」と小紅が緋絽に言った。
その言葉に、緋絽は若干複雑な表情をした。
「(え、喜んで言いの?いや、おかしいよね?)」


「探検ではないけど、今がざれ言のどの部分の話なのか、探れば良いんじゃないかな?」

歳羅の言葉に皆うなずくと、迷路のような校舎内を歩き出した。




長い廊下

人の気配は感じられないが、殺気なのかは解らないが、肌にピリピリとした何かが当たっているのが解る。

“死”と隣り合わせの世界。
私たちの世界も“いつ死んでもおかしくない”のは“同じ”でも、
今まで感じたことのない雰囲気に少しだけ恐怖を感じた。
今すぐにでも殺されそうな感覚。
例えるなら、首に刃が添えられているような・・・。
一瞬でも気をぬいたら、動けなくなってしまう。
それを自覚したのは、握り締めた手ひらに汗をかいてることに気づいてからだった。


暗い廊下を進むが何にも出くわさない。
無言であたりを警戒する中、美穂が隣を歩いている神(見習い)に呟いた。

「―――、神・・・だっけ?」

『いかにも、しかし完全なる神ではありませんよ。
・・・・・・何か聞きたそうな目をしていますね?どうしました?』

集団の先頭にいる1人+1匹を不安げに見つめる彼女たち。
美穂が何かをやらかすのではないかという心配をしている小紅。

「神様、貴方は“事件を解決しろ”って言ったよね?
彼女たが「ざれ言」の世界に行きたいといったから、連れてきている。
そして事件を解決して、第一試験は終了・・・けど・・・・・、
・・・私が知る「ざれ言」では、この世界の中の人物だけで事件は解決させられるはず。
彼ら・・・と、接触すれば、事件を解決させるどころか、混乱を引き起こすのではないの?
――――私たちは、この世界にとったら“異分子”でしょう?」

美穂の話を無言で聞く神。
しばらく歩いて口を開いた。

「―――“接触”にはいろいろあります。
どれほどまで、異界(ここ)にかかわっていいのか、どれくらい彼らとかかわればいいのか。
私にも、それをハッキリ言うことは出来ないんです。
言える事といえば、・・・・・・・“彼らを助ける”ことぐらいでしょう。
それに、この世界に長く居座るわけにも行きません。
貴方の言うとおり、私たちは異分子ですから。」

その言葉を聴いて、少々満足げな美穂は軽くうなずくと、次の質問を言った。


「私たちが、異世界で怪我、や、病気・・・・最悪の場合“死”んでしまったらどうなるの?」


『それはですね、“怪我や病気の場合”治すことは可能です。
“体の一部が無くなった”としても、次の世界に行くときは、元に戻ります。
死んだ場合の話ですが、・・・生き返らせることもできます。世界の深淵で待つことになりますけどね。』

「世界の・・・深淵・・・?」
『しかし、』

美穂の呟きをさえぎるように神が言う。

『生き返らせるのには限界があります。
本来死んでしまった体に無理やり魂を詰め込んで、体の臓器の再生、細胞組織の回復、記憶のリロード・・・など、
体と魂は鎖のようなもので繋がってるんです。凄く、不安定ではあるんですけどね。
それを、無理やり(詰め込んで)繋げるんですから、鎖が先に壊れたり、体が耐えれなかったりする、と、・・・』

「永遠に生き返らないっ・・・て、わけね?」


美穂の言葉に神(見習い)が、こくりとうなずいた。
1人+1匹の会話を聞いていた彼女たちは、生唾を飲み込んだ。
死んでも大丈夫。
けど、限界がある。
せめて、いま、このときだけは、皆と生きていたい。
そう思った。




「それならこの世界らしい、死に方ができる。」


何か含みのある言い方に、違和感を感じた。


美穂はブウサギ人形(?)を小紅に投げてよこした。

「ん?ぅあ!?」
「ブヒィッ!?」

驚いた小紅とブウサギ人形(?)。


いままで、空気をよんで黙っていた一同の緊張が、少し和らいだ。

「え、先輩コレ・・・?」


小紅が美穂を見ると、手で皆が歩くのを制していた。動きを止めた彼女たち。
神(見習い)も、不思議そうに見上げている。



「―――――じゃぁ、ためしてみようか。」




「・・・先輩?」

「クス、な〜んてね☆」




侑稀が心配そうに美穂に問いかける。
それに、笑って返事をすると美穂は走り出していた。


廊下を走り進んで進んでいく美穂。

その時だった。



美穂の頭が鮮やかな赤色を散らし

重力に従い落ちていった。

一瞬で終わった。

誰かが息を飲む音、


鈍い音を立てて落ちた頭。

誰かの悲鳴。

首から下の体が数歩だけ歩いて、糸の切れたマリオネットのように倒れた。



“竹迫美穂が死んだ”その時だった。



「うそ、・・・でしょ・・・。」

「先輩ーー!!」

「何でッ・・・。」


「まさか―――――紫木一姫―――?」


―――コツ・・・、コツ―――。

静かに、ゆっくりと足音が響いてくる。


泣き崩れる未来と小紅。
唖然と立ち尽くす歳羅と、緋絽。

一人銃口を『姫ちゃん』と、思われる人に向ける侑稀。
冷や汗をかく神(見習い)





―――ひうん―――ひうん―――。


空気が泣く音


ぞわり・・・とした感覚


「ご名答ですよ?
けど、もう死んじゃうんですから、
あらためて名乗る必要はありませんよね?」


くいっ、と指を斜めに上げ、
ついっ、と下ろそうとした瞬間。

カツン!!
カツン!カツン!カツン!カツン!

「!!」

姫ちゃんは驚いたように目を見開き、振り返る。


「―――わたしの、お母さんは――――?」


「あぁ、とっくの前に殺されてるよ。」

萩原子萩と
いーちゃんだった。


―――これは、そう思ったのは刹那―――。


子萩ちゃんが『姫ちゃん』こと、一姫に向かって走っていった。

が、子萩の動きが止まる。その瞬間。

子萩の、萩原子萩が崩れた。


崩れて、崩れて、落ちた。

文字通り、崩れて。―――落ちた。

“こんな”モノを生で、しかも目の前でなんて、
見たこと無い。


本で見たものではなく、生で。
目の前で。
美穂が死に。
萩原子萩が死に。

それが重なり、気持ち悪く、精神が崩れる。

「っう・・・・。」
「気持ち悪い・・・。」


「―――でもその前に、」
と、歳羅。



「――すごい私たち、ピンチ・・・・・・よね?」


未来が言う。

「―――どうしよう」×5

「おい、神(見習い)!って、何死んだ振りしてんじゃボケェ!!!!」

『ニャーニャーニャーニャー』

「こういうときだけ猫被るな!!!こういうときこそ、『私に任せて皆さん逃げてください』とか言えないのか?
この猫かぶり!!!あ、猫の姿だっけ?って、その前に!!!
というか、なんで、こんな危ないシーンに来たんだ?!
もうちょっとマシなシーンに(ry」


「だーいじょうぶですよ?その猫さんも・・・
殺しますから。」



一姫の瞳は本気だった。
「こここここ、こういうときこそ神(見習い)!!!」

「お礼を言いたいところだけど、・・・助けてくれたってわけじゃなさそうだね。」

「です。ですよ。」

頷く一姫。


「萩原さん気づちゃったですからね。」

「できれば生徒は殺したくなかったんですけど。」と付け加えて。

「でも、その前に二人殺してるよね。玉藻さんと美穂先輩。」

侑稀は一姫を睨みつけて言った。
美穂を殺したことが許せなかった。

「あぁ、はい。そうでした。」


うっかり忘れていたといわんばかりに笑顔で、

「――――!!!!」


侑稀は声に出せない叫びを行動で示した。
銃が一姫に向く。

「どうしてッ!どうして美穂先輩を・・・ッ!!!」

「美穂先輩?・・・・あぁ、この人ですか?」


一姫は口の端を、にやりと吊り上げ笑った。否、歪んだ。

「だって、ここの生徒じゃないみたいですから。
無防備に走ってくるなんて、殺してくださいといってるようにしか、思えませんもん。
実際、何にも出来ず死んでますしね。」


一姫は狂ったように、楽しそうに笑った。
声を挙げて笑った。
5人と神は、言葉と言う言葉が出なかった。
反論すら出来なかった。
でてきたのは、3点リーダーのみである。

「あはははは、皆さん短い時間でしたけど、楽しませていただきましたよ。」

一姫は、ひゅんひゅんと空気の泣く音を立てた。

「あなたの方が終わりなんじゃない?紫木一姫さん。」

そう言った侑稀は皆より前に出て一姫にまた銃口を向けた。
足は震えている。怖い。それでも侑稀は前に出た。


「最後の悪あがきですか?みっともないですよ♪」


「ごめんね紫木さん私、馬鹿だから。」


「ふ〜ん、まさに豚に念仏です。」


その瞬間、糸は空に放たれた。

それが早いか遅いか、侑稀はトリガーをひいた。



ものすごい爆発音。爆発音。
ブチッ。糸は切れ、一姫は倒れた。

「THE END.」


侑稀は決め台詞に言った。


皆から自然と拍手がわきおこる。

『あ、あの〜、ちょっといいですか?』

そんな中、神は口を挟んだ。


『あの銃は、好感度30%以上の人に使うと、見方になってくれて、好感度30%以下の人間に使うと、犬猿の仲になってしまうので注意が必よグフォアッ!!!』

「んなことは、先に言えよバカ猫!!!」

『ちょっ!!蹴んないで下さい!!!それに私はバカ猫じゃありません!』

「じゃ、バカ神(見習い)。」

切れてる侑稀。
やばい。
と、そこで歳羅は矛盾に気づく。

「ね。30%以下とも言ったよね?」

『はぁ、言いましたよ?』

「で、30%以上も30%も入るんじゃん?
でもって、30%以下も30%入るんじゃん?
矛盾してるけど、結局どっちに入るの?」

「あ、・・・そりゃそうだ。30が重なってるよ。」
記号で表すと、30≦y≦30だもんね。」

小紅がスパッと言い、皆が頷く。

「ねぇ」侑稀
「なんで」未来
「矛盾してるの?」緋絽

ズイっと神(見習い)に近づく

『えっと、まぁ、それは、それですよv皆さん。
そんな真剣にならな「なるだろう、普通。バカかお前?」えーっと、えー・・・と。・・・・えっと・・・。』

「ね、こいつ(神)(見習い)当てにならないからいーんじゃない?おいてて。」

『ちょっと!ひどいですって!!!』

「そーだねぇ。まちがって犬猿の仲になったら、こんどこそ一姫にやられるよね。」


小紅はマイペースに言った。

「姫ちゃんが目覚めた時のために、神をおいとこう。」

と、侑稀。
真剣に言うから、なお怖い。

「そうだね、見習いとはいえ神だし。うまく逃げられるだろうしw」

『え”!!!ちょっと、それって・・・。』

「あのとき、・・・一姫がそばにいるってあの時、皆が気づいてたらッ・・・・。」
と、未来。
涙を溜めて言った。


『う”!!!』

「ん・・・。」


「!!!!」×5人+1匹


「やばっ!!!一姫起きる!!!」

「Let’t トンズラ!!!」

「Let’t go OKIZARI」


『ちょっ!!!ま!!!いやです!!!おきざりいやです!!!』

ガシッ。

緋絽の洋服を掴む


「てめ!!!制服破れるだろうが!!!!
ただでさえ短いのに!しかも猫のつめたてんなよ!!!
これだから、スカートって好かないんだ!!!」

それでも掴むので。

緋絽は侑稀の手を掴んだ。

「え?!緋絽?!何その腕掴んでるの?」
「えっ?何って・・・なんつーか・・・ほら?置いてかないでくんない?」

ガシッ


「ちょっ!!!侑稀さん?!なんで私の腕を掴んでるのかな?」

歳羅の腕を掴み言った。


「・・・(にこっ)上に同じだよvV」

ガシッ


「えぇっ?!歳羅ぁああ!!!私の腕を掴まないでぇええ!!!」

歳羅は未来の腕を掴んだ。

「紫木一姫、みんなで逝けば怖くないvV」

「いやいやいやいや!!!皆で行ってもこわいよね?!ね?小紅さん?!」

ガシッ。

同様に、小紅の腕を掴んだ。


「ええ!!ちょっとみんな、私のことはいいから逃げて!小紅!!とか言ってよ!!!」

「あぁ、言ってやるよ。バ神が離したらな。」

『省略しないで下さい!バ神って!!!バカ+神のことですか!?』

「あたり前だ!バ神がぁあ!!!!」


「・・・・んっ?・・・〜〜〜んぅ…う・・・」

やばい。


「(―――終わった。)」×5+1匹


むくり。


「――・・・・・。」


「(な・・・くるか?くるのか?きちゃうのか?)」×5+1匹


スッ・・・―――

一姫は立ち上がり、近づいてくる。

コツ・・・

コツ・・・

コツ・・・

コツ・・・

ピタ。


「!!!!!」×5人一匹

「皆さん。」


「!!!!!!!!」


にこぉ。


とつぜんの変わりように驚く。


「姫ちゃんをここまでしたのは、あなたたちが初めてですよ。
正直、驚いちゃいました。」

「いやいや、やったのコイツ(侑稀)だし。」


「じつは、姫ちゃんはあなた達が“敵”だと思っていたんですけど、
違ったんですね。」



「敵?」
小紅は、クエッションマークを頭にうかべ、聞いた。

「はい。でも、違ったんですね。姫ちゃんの勘違いだったんですね。」

「・・・殺されなかったのはいいんだけど・・・。」

「ぁ・・・ごめんなさいです!そのっ・・・あなたたちの“先輩”を姫ちゃん間違えて殺しちゃったんですよね・・・。」

しゅん。と“姫ちゃん”は反省したご様子。

「で、その“敵”って言うのは?」

「あ、はい。最近この学園に入った二人組みなんですけど、とにかく学年・・・いえ、学園のトップの人なんですよ。」


「学園トップ・・・。」


「で、なぜかですね。姫ちゃんその2人にケンカ売られちゃって、買ったわけですよ。」
「いや、いや、買わなくていいよ。」

「でも逆光で相手の顔形は見えない。暗闇で見えなくて、姿がわからないんですよね。」

「―――名前。」

「ぅえ?」

「名前は?」

なにか何かわからない方向に行って、解ってない姫ちゃん。


「あ、えっとですね・・・確か、――――琥珀と、火澄でした。です。」

「!」





「・・・私は・・・―――琥珀―――って言います。」


「そうね、時間の無駄よね。火澄。」



あの二人―――?


「それ・・・というか、その二人・・・会ったよ。」

「え?!本当ですか?!」

「うん・・・銀色の瞳と、ショートカットの髪をした人が琥珀さん。
で、・・・薄紫色の瞳と、ストレートロングの髪をした人が、火澄さん・・・と、言ってたよね?みんな。」

「うん。」×4人+1匹

「おねがいです!琥珀さんと火澄さんを、止めたいんです!」

「―――?」


「なんか、・・・あの二人、生徒を全員抹殺するのが目的らしいんです。」

「抹殺っすか!?」×5人+1匹

「下手すると、あなた地が殺されるかもしれません・・・。
姫ちゃん頑張って、あなたたちを守るですよ?」

「・・・・う・・・」

「お願いですよ〜。ね、師匠だってついて来てくれるですよね?」

「・・・。」

「よね?」

「・・・・・・・。」

「ね?」

「・・・・・・・・・・。」

「ね?」

強制だった。

「・・・はい。」×6人+1匹

「で、あなたたちの名前はなんていうですか?」

「あー・・・私は歳羅。」

「緋絽」
「未来だよ」
「侑稀ですvVよろしくねvV」

にこーっと、笑顔の侑稀。


「・・・これで哀川さんが来てくれれば、文句ナシなのになぁ。」

「ん?なんか言ったですか?侑稀さん?」
「ううん?別に何も無いよvV?」

『あ。そういえば・・・ん〜・・・
あぁ!!思い出した!!』

突然二足で立ち上がる神。(←え)
「な、何が?(立った)」
「・・・・・・・(立った)」

「クララが立った!!」

「関係ねぇよ!!」

「何の話だい?」


「いえ、こっちの話です。」

「何がわかったの?(小声)」



『あれは、適正審査のときのことです――。



・○・○・○・○・○・○・

私の名前は、ネルベール=シェル=コンジェルト。

・○・○・○・○・○・○・


「名前だけすごい!」

『黙って聞いてください!』

・○・○・○・○・○・○・

あだ名は、ネルベールの“ネ”とコンジェルトの“コ”で、
あだなは“ねこ”でした。

・○・○・○・○・○・○・

「やっぱりネコじゃねぇか。」
『お願いですから聞いてくださいって!!』

・○・○・○・○・○・○・

試験官が大きな声で叫ぶように言った。

「これより、第一次試験を開始する――!!」

緊迫した雰囲気の中、試験官は話を続けた。

「1人ずつ紙を渡す!!
それぞれの特性を生かし、全力で取り組め!!―――。


/ / /


私は、変化と逃げ足しかとりえの無い…、
まぁ、いわゆる“おちこぼれ”でした。
あ、モノをつくのは好きでしたよ?
今、あなた達が持ってる銃や、メガネがその証拠です。

そして、火澄は・・・名前のとおり、
炎を生み出すのが得意でしたね。
ちらっと、彼女の試験内容が見えたんです。
内容が確か・・・


【お前の能力で・・・
何か大きなもの。
  何でもいい。
     コワセ。】


・○・○・○・○・○・○・



「・・・なに・・・それ・・・?」

『恐らくあいつのパートナーが琥珀かと。』

「?まって、なんで一人だけなの?」

『人数は指定されてます。
私は・・・6人。
火澄は1人だけだった。
それだけですよ。』

「なんで、火澄は気づかなかったの?」

『私、変化だけは、ずばぬけていましたから。』


「(・・・・・なんでそんな内容が・・・・・・・・・?)」



「あ〜〜いいかな?もうそろそろ。」

「・・・あ、はい」


「僕は好きなように呼んでくれ。」


「いーちゃんさんでいいですか?」

「また新しいのが出たね。」
と、いーちゃんは苦笑した。

すると、にゅっと姫ちゃんが出てきた。


「そんなことより、早くしないと、皆殺されちゃうです!!
師匠も、早くするですよ!!

「じゃぁ、まずその2人の様子と今いる場所を探さないとね!」

小紅はそういった。


「そうだね、でも、どうやって・・・?」

小紅は少し考えて。

「あ!そうだ!私が行ってきます!」

「はぁ?」×全員


「何言ってんの?相手は・・・。」

「大丈夫だよ。だって、」

キラッとブレスレットが光る。

ボン☆

「うわあ!?」


「やっぱコレ、けむい!」

「ゲホッ!ゲホッ!!」

「ひょあぁ!!」

「あ!ウサギなったでしょ!」

「ピンポーン!これなら平気でしょ。」


ケムリの中からウサギの姿をした小紅が出てきた。

「えっ!?え?どうなってるんですか!?小紅さんは?」

はじめてみるウサギの姿の小紅にあせる姫ちゃん。
まぁ、しゃべって、しかも二足歩行なんだから当たり前。


「ここにいるよ。まぁ、初めてだもんねぇ・・・・ι」

仕方ないか。というわけで、説明。

「へぇ〜そうなんですか。」

姫ちゃんは解った様子で頷く。

「それじゃあ、行ってきます☆」

小紅は走って行った。

「じゃぁ、私たちはどうする?」

と、侑稀が言った。


「どうするって・・・。」
「待ってるしか・・・。」
「ないよね・・・・。」


「「「・・・・・・・。」」」

「一応、この学校の地図を・・・。」

そう言うろいーちゃんは地図が載ってる紙を広げた。

「今、姫ちゃんたちがいるところは、この辺ですよ。」

姫ちゃんは、いる場所を指した。


「まず、見つからないように隠れてようよ。」
と、歳羅。


「そうだよ!えっと、一番安全な場所は・・・。」

そう言って探し始める未来。

「ここですよ。」

それはすぐ近くの教室だった。

「よし!行こう!」


その頃、小紅は・・・。

「いない・・・?人の影、声、気配が全然無い。」



「・・・・・!・・・・・。・・・」

「・・・・・・?・・・・!・・・」


「(話し声?)」

小紅はのぞいてみた。

そこには、

「(!!見つけた!琥珀さんと、火澄さん!)」←呼び捨てに出来ない。

・・・。!!!?

そこにはたくさんの人がいた。

「(縛られている?)」

ガタッ ドアが動いてしまった。


「!(しまった!)」


2人が近づいてくる。

小紅はぎゅっと目をつぶった。


「(くる?くる?・・・・・・あれ?)」

目を開けた。


「外から入ってきたのかな?」

ひょいっ

「さぁ?」

小紅を持ち上げて言う。

小紅はポカーンとして、あれ?と、クエッションマークを頭に浮かべている。


その光景を影から見ているものがいた。

「バカね、まったくもぅ・・・。」

そう小さく呟いて、音も無くそれは立ち去った。





小紅は今、火澄の膝の上にいる。

「(やばい、超やばいって!)」

震えそうになりながらも、頭から耳、腰へと、動かされてる手によって、それはなかった。
なでる力が丁度よくって、眠ってしまいそうだ。
しかし、教室の中はとても暑い。
窓もカーテンも閉められ、サウナ状態だったのだ。
教室の隅にいる乱暴に積み重なれている生徒が、たまにうめき声を上げた。
それにより、眠気も抑えられた。

今、なんで私ここにいるんだろう?
自分に問いかけてみた。
電話で呼ばれて、先輩の家に行って、そしたら“ざれ言”の世界に来てしまって。
美穂先輩が、目の前で死んで、萩原子萩が、目の前で死んで。
血の色、
血の匂い、
肉片、
赤い塊と化した、ただのゴミになってしまった彼女たち。
それを見て、吐かなかった自分に拍手を送ろうと思う。
ハッキリ言って、
気持ち悪かった。

堪えた。必死に。悲しみを。涙を。吐き気を。叫びを。殺意を。混乱を。怒りを。
大丈夫だと、自分に言い聞かせた。
先輩は、世界の深淵で待ってる。
早くこの物語を終わらせるんだ。
大丈夫ですよ、迎えに行きますって。









「おそいねぇ・・・。」

「おそいよぉ・・・。」

「おそいなぁ・・・。」


上から、侑稀、未来、歳羅、である。


教室にある時計が正しいのなら、35分も経っている。
遅い。



「もしかして、・・・小紅さんに、何かあったのかも・・・?」
緋絽が言うと、未来が立ち上がった。

「わ、わたし助けてくる!」
「いやいや、ちょっと待て!!皆で話し合わなきゃ!!」
緋絽の言葉でまた、座り込んだ未来は少し眉を寄せた。


「途中で何かあったことも確かに、考えられます。です。
もしかしたら、帰りの道で迷ってるのかもですよ。」

姫ちゃんが軽く口を挟んだ。

「わ、わたし「まて、まて、まて、さぁ、落ち着こう。座りなさい。」

緋絽の冷静なツッコミがさえる。

そのとき、ドアに何かが当たる音がした。

「あ!もしかして!小紅さんかも!!」

「確かめもせず開けるな!!って、遅かったッ・・・。」


「小紅さん!!」




ガラガラッ
と音を立てて開いたドア。

視線を下ろすと。

「・・・・・・小紅じゃないよん。」





未来はその場に立ち尽くした。
緋絽は伸ばしかけていた手を下ろした。
侑稀が構えかけた銃を、落とした。
歳羅は目を見開いて駆け寄った。
姫ちゃんは、ポシェットに手をかけたまま硬直した。
いーちゃんは、ずっと無表情だった。


そこにいたのはブウサギ人形。
しかし、しゃべった。
しかも、声が“竹迫美穂”そのものの声だったのである。



「・・・・・・先輩?」

蚊の鳴くような声で未来が問いかけた。



「おうよ、おひさしぶりんご食べたいなぁ〜。」


意味の解らない文章。
のんきな声。


「おいおぃ、パンツ見えるよ〜、しゃがみんしゃい。
うおーぃ、だいじょうぶか〜〜ぃ??」


この変態。
“竹迫美穂”そのものだ。


「っ先輩!!!!!」


未来がブウサギ人形を抱きしめた。

「うげぇっ!?ちょっ、くるしッす!!」

「えぇ!?!?な、なんで先輩!?本当に!?!?」

歳羅が、大混乱中。
目の前のアンビリバボーな存在をいまだに、認識できないようだ。

「いぇす、あいあーむ、まいねぇええ!!!?!??!?くるしっし、しぬぅううううう・・・」

「未来!は、放しなよ!!先輩がつぶれる!!」

緋絽が必死になって剥がすようにブウサギ人形を助けると、
ゲッソリとしたブウサギ人形が

「あとは、・・・たのむぞ・・・ッ・・・。」

と言って、ガクッと力をぬいた。

「きゃああああ!!??先輩いいい!?」

歳羅が緋絽からブウサギ人形を掴み取り、ガクガクと揺らした。

「!?・・・ちょっ!、冗談!!・・・出るって!やめっ、・・・うっ・・・ストオオオオオップ!!!!!」



美穂の声を発するブウサギ人形は、ぜいぜいと息をすると、床にトスッと落ちた。

「違う!着地したの!」

着地したらしい。





「先輩、お帰りなさい。」

今さっきから何にも言葉を発さなかった侑稀がはじめて、言葉を発した。
落ち着いた雰囲気の声。
見れば、握り締めた手が震えていた。
しばらくそれを見つめてたら、小さく嗚咽が聞こえた。

「先輩、・・・よかったッ・・・本当に、死んで、しまったんじゃ、って・・・。」

流れ落ちた一粒の涙。
ブウサギ人形はちょこちょこと歩いて、前足を侑稀の手の上に置いた。

「ふふっ、そんなに心配してたかぁ。大丈夫だぞ。この姿だけどな〜ん。
うおぃ、泣くなって、俺は女の涙は苦手なんだよ!!」




暫くして泣き止んだ侑稀の膝に、遠慮も無く座り込むブウサギ人形が話し始めた。

「小紅は、死んじゃいないよ。安心して。けど、安心しないで。」

「どっちですか!?」

緋絽は突っ込んだ。

そのツッコミに満足した表情を浮かべて、ブウサギ人形がしゃべり始める。

「えっとね、小紅は火澄たちの所にいるんだ。」

その言葉に全員がビックリして「えっ!?」と声を発した。


「それって、捕まったと言うことですか?」

姫ちゃんが真剣そうな表情で問いかけた。

「う〜ん、捕まったじゃなくてねぇ・・・。・・・可愛がられてる?」

「は!?」×全員


「あの、先輩、それ・・・本当ですか?」
歳羅が遠慮がちに問いかけた。

「本当なんだよなぁ。困ったもんだ。」


「はぁ、」と渋く溜息をつくブウサギ人形を見て、反対に「はぁ!?」と言いたい一同。



「えっ!?つ、捕まってるなら、助けなきゃ!!」

そう言い、ドアに向かう未来を必死に止める緋絽。

「えっとねぇ、ひとまず。・・・どうすんだい?火澄たちを止めるんだろ?」

「はい、その前に先輩が何でその姿なのか知りたいです!」
侑稀が言った。

「ふふっ、それは深淵の神を脅し・・・・・・・・・・・禁則事項です☆」
超有名小説の未来人のマネをするブウサギ人形。
笑いを堪えてる何人かに気を使ってほしいものだ。

「ひとまず。・・・まぁ、体は再構成中かなぁ。首が綺麗に飛んだから。」
ブウサギ人形はちらりと姫ちゃんを見た。

「・・・あ、その・・・姫ちゃん・・・、悪気は無かったです!殺しちゃって御免なさいです!!」

「別に。まさか、しょっぱなから死ぬとは思わなかったけど。」
冷たく姫ちゃんにあたるブウサギ人形。
自分が死んだのはテメェのせいだよコンニャロウ。
と、言わんばかりの態度だ。

「あ、あぅ・・・。」
ブウサギ人形の態度におしだまる姫ちゃん。
どうやら、このブウサギ人形は姫ちゃんが気に入らないようだ。


pc
[編集]
By 美穂
2009-04-02 01:23:30
ブウサギ人形は、侑稀の膝から降りて仰向けになった。

何が始まるんだ?と言う表情で皆が見ている。




「ここのチャック開けて〜、携帯が重い〜。」


携帯が入ってたらしい。

チャックを開けてみると携帯が入っていた。
「うわ、マジで入ってた」と心で呟く何人かがいる。

pc
[編集]
[1-10表示]
[返信する]
[新規トピ]
[戻る]


無料HPエムペ!