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[ぎんじーのマジカル☆キャンディ4]
By 降隆
2007-10-20 00:23:11

「むしろ」「かえって」は現代で言うところの「逆に」でしょう。
「逆にアリじゃね?」「逆にイケんじゃね?」と必死に自分を騙そうとする銀さん。かわいいねえ。



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By 降隆
::[起1]
2007-10-20 00:24:08



恐怖は今やはっきりと形を得て、脅迫観念として銀二の目の前に突きつけられていた。つまりは「化けの皮を剥がされて何もかも台無しになってしまうかもしれない」恐怖であり、率直に言えば「無理矢理ファックされてやってると勘づかれる」恐怖だった。
商売女は勿論としても、今時は女子学生までが当たり前のようにこなしている羽目なのだから、自分が堪えられないはずがない。そう思っていた。潔癖を気取れる身でもあるまいし、じきに慣れるさと高をくくっていた。けれど実のところは自分は非常に微妙なところで、ギリギリのところで踏みとどまっていたのだと思い知らされたのが六日前。明かりの点いた部屋で犯されることがあんなに堪えるなんて思わなかった。もう二度と御免だと、思い出したくもないと思った。森田も何か感じ取っているらしく、あれからお互い牽制を見せ合って膠着している。普段のセックスの頻度からして決して六日のインターバルが長いわけではなかったが、不幸にもちょうどポンと放り出されたように仕事が空いた期間だっただけに二人して此処にいることが多く、輪をかけて気まずかった。気まずいと言ったらなかった。明日からは揃って他県に飛ぶ。忙しくなる予定だ、銀二としてはもうそれでうやむやに紛らせてしまいたかった。出先でまで手を出してくることは、さすがに森田はない。ない、はずだが。

「銀さん?」
「…何だ」
「いや、何でも。何か」

固まってたから。
そう肩をすくめ、向かいで森田が味噌汁を啜っている。夕食である。茶碗片手箸片手にフリーズしていたらしいと銀二はげんなりして、一気に食欲も失せた。



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By 降隆
2007-10-20 00:25:37


いっそもう何もかも洗いざらいぶちまけてしまおうか。

そんな葛藤は常に腹の中にあって、経路も結論も既に決まってあるものだから考えるだけ無駄なのだが。味のしなくなった漬け物をしつこく噛み締め、銀二はつらつらといつもの堂々巡りを繰り返す。
全てを明かせば森田は案外、あっさりとすんなりと引き下がってくれるかもしれない。そしてそれは間違っても離別を意味しない。むしろかえってこの男は、お前を失いたくなかった。どうしても失いたくなかったんだと言い聞かせれば、この男はむしろかえってますます感じ入ってしまうかもしれない。さすがにこの部屋で共に暮らし続けることはできないだろうが、むしろかえって一旦ここらで距離を置いた方が、いや距離を置くと言うほど大げさでなくとも何しろ今が密接過ぎるわけで、もっと適当な間をもって向き合った方がお互い労れるだろうし、主にこの男がもっと俺を労れるだろうし、むしろかえって出会った当初の精神衛生上すこぶる良い付き合いに戻れるかもしれない。そして納得したら最後、森田は決して銀二に無理強いはしないだろう。そもそも今のこの男があれこれ勝手に振る舞うのも拗ねてみせるのも無遠慮に要求してくるのも、全ては銀二もその気だと思い込んだ上での態度で、性交渉においては対等だと合点しているからに他ならない(それが公私混同でもって仕事中にも滲んでいないかと言えば、苦笑するしかないが)わけで。この男には俺を苛ませるつもりなど、欠片もないのだから。
全て、なかったことに。
それで終いだ。
もしかすると森田は少し、ほんの少しだけ、淋しく思うのかもしれないが。
それだけだ。
そして。
銀二にはそれがそれだけのことが、それこそが、堪えられない。全く我慢ならない。
森田にこんなくだらないことを、諦めさせなければならないなんて。
絶対に御免だ。

「……銀さん?」
「何だ」
「具合悪いんですか?」
「どうして?」
「どうしてって……」

気遣わしげに眉をひそめこちらを見つめる森田に、銀二は首を傾げる。こいつには何をも諦めさせてなんてやるものかと。だからこれは銀二のエゴの問題であり、腹を括るしか答えはないのだった。いつだってここに戻ってきて出口はないものと思っていた。これは諦めではないと言い聞かせながら。まさか今夜、自分がどれほど往生際の悪い男だったか思い知らされることになるとは、まだ銀二は思いもよらずにいた。





→起2



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