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LOGICAL×BURST
By クロポン補佐官
2019-10-01 04:30:20
 







──コンコンコンッ


『───おい、優人。朝だぞ?』



翌朝。優人がなかなか
起き出して来なかった為
祟場は優人の部屋を訪れた。





──コンコンコンッ


『優人? まだ、寝てんのか?』


──コンコンコンッ


『おい。優人、起きろ。朝飯だ──』


──コンコンコンッ

──シーン…


『……?』



祟場は軽く首を傾げる。
優人は時幻党へ来る前から
決して朝に強い方ではなかったが。
…それにしても。これ程にまで
起き出して来ないというのも
流石に初めての事であった。





『……………』


──チャリ…



祟場はソッとポケットから
優人の部屋の合い鍵を取り出す。
寝てる相手の部屋を
勝手に開けるというのも
余り気乗りはしないのだが。
もしかすると、優人の身に何か
あったのかも知れないし。
或いはまた、部屋を抜け出し
そこへ居ないだけかも知れない。
もし、後者ならば。また
説教が必要だな、と祟場は
後者一択に一つ溜め息を吐いてから
鍵穴へ合い鍵を差し込もうとした───。








──カチャ…


『……おはようございます』


『お。何だ、居たのか…って────』



眠そうに目を擦りながら
部屋から姿を現した優人へと
祟場は思わず一瞬、
言葉を途切れさせた。





『──お前…。また髪、伸びたな。(貞子かと思ったぞ?)』


『………んぅ〜…』


『……、何だ。まだ、眠いのか。昨夜は余り、眠れなかったとかか?』


『…………そんなんじゃ、ないんですけど……今日は、何だか…。──身体が、怠くって………』


──ぽふっ…


『───おいおい、しっかり目を覚ませ。朝飯、食えるか? ちゃんと』



──言葉もそこそこに…。
突然、自分へと凭れ
寄り掛かって来た優人に対し
呆れ、少し笑って。祟場は
その背中にまで伸びた
優人の黒髪を左手で掬ってみる。
とんだ劇薬だ、と
一人、苦笑を零して。
髪の擦り抜けていった左手へ
視線を落とし、見つめた後にて
更に猫っ毛なその頭を撫でようとし、
祟場はそこでふと、その変化へ気付いた。





『……優人、お前。何か背…、縮んでないか────??』



しかし、胸へと凭れ掛かった
優人からは返事がない。
それ所かズルリと
崩れ落ちそうになり、
祟場は慌てて優人の腕を掴んで
その身体を支えた。





『───おい、優人…?』



掴んだ腕も、凭れられた先で
優人から伝う体温も
心なしか熱を持ち熱い。
祟場は瞬時にハッとして
優人を上向かせた。
長く伸びた優人の髪の下へと
手を滑り込ませ、額へと手を当てがう。





『!、──お前っ…、熱いってもんじゃないぞ!? おい、優人!? 馬鹿っ、しっかりしろ…!! 優人っ!? おい、優人っ!!?』



時幻党の朝の廊下へ
祟場の声だけが木霊した。















『──39.5℃…。う〜ん。こりゃ、参ったね』



時幻党、真木の部屋。





『…っ、昨日の長風呂の後に湯冷めでもしたんでしょうか……』


『いや。これは恐らく、薬の副作用だろうね』


『薬の副作用…? あの、劇薬の物ですか?? 何故、今更そんな……?!』


『…薬には速効性の物と、遅効性の物とがあるからねぃ』


『ど…、どうゆう事です!? 優人が被ったのは、育毛促進剤とやらだけではなかったんですか!?』


『それがね、違うんだ。ニュートンったら、何でも薬棚自体にぶつかったとかで……正直、僕にもニュートンがどんな薬をどれだけ被ったのか判らないんだ…』


『……そんな、』



祟り場はソファーの上
高熱に魘される優人を見やり
再び真木へ視線を戻した。





『それが一体、何の薬の副作用なのかも判らないんですか…?』


『…うーん。少なくとも多分、Kノビールの副作用ではないと思うんだけど……タタリン。他に何かニュートン、変わった様子はなかったかい?』



真木の言葉へ
祟場はハッとする。





『……気のせい、かも知れないんですが…』


『?、何だい?』


『…さっき、少し思ったんですが……優人の奴…背が若干、縮んだのでは、ないかと…。あ、有り得ませんよね…? そんな事は、流石に──』


『いや、』


『…っ??』


『“ケッコウ☆カナーリ☆ワカガエール”か“コドモゴコロ☆ニ☆カエリーナ”辺りの効果が仮に表れたんだとしたら、それは決して有り得なくはない』


『…よ、要は。若返りの薬か何かなんですか!? つか、そのネーミングセンス、何とかならないんですか!! そこそこ真面目な話をしてんのに、緊迫感の欠片もねぇーな!! 第一、んなもん、暇潰しに開発なんかしてんじゃねぇーよっ!!』


『タタリンセンセ!!』



そこへ優人を介抱していた黒衣が
その手を止め、祟場へと噛み付いた。





『──暇潰しとは、聞き捨てなりませんね! 叔父は。こう見えても、いつでも研究には一生懸命、真面目に取り組んでるんです! その“ケッコウ☆カナーリ☆ワカガエール”も“コドモゴコロ☆ニ☆カエリーナ”も、全ては白羅さんを元に戻そうと、叔父は真剣に…!!』


『───姪。その辺にして置きなよ』


『でも、叔父っ…!!』


『…いいんだ、』


『………っ、』



プイッと黒衣は祟場へ背を向け
優人へとまた向かった。





『………、どうやら言い過ぎたようです。謝ります』


『気にする事はないよ。…それに。実際、気晴らしに結構ふざけた発明も沢山してるしね。僕』


『…………、』


『さ、タタリン。これをニュートンに飲ませてやって。解熱剤』


『あっ、ありがとうございます』


『後は。僕と姪で、ニュートンが被ったであろう薬品達の分析をして追々、中和剤として解薬剤を調合して行くから。何か新たにニュートンの身体へ変化があった際には、直ぐに知らせて。出来るだけ僕らも対処するから』


『…………、お願いします──』



祟場はギュッと拳を握り締めると
深々と真木へ対し頭を下げた。















時幻党、優人の部屋。





『………先生っ、』


『うん?』


『……本当に、ごめんなさい────』



優人をベッドへ寝かせると
祟場は笑顔を作った。





『そんな事もあるさ。ま、気にするな』


『………、でも…』


『今日は特別。勉強も食事の支度も何もしなくていいから、ゆっくり休め──』



コクリと頷いた優人へ
『ん』と短く返し、
祟場は暫し優人を見つめる。





『解熱剤が効いて来るまで、少し眠れ───』


『…はい』



優人の冷えピタを貼った顔は
やはり何処か僅かに幼い……。
祟場が側について居てくれる事に
安心したのか、優人は大人しく目を閉じ
静かに眠りへと落ちて行った───。








『……ふぅー』



祟場は溜め息を吐き出し
近場に椅子を引き寄せると
煙草を箱から抜いて
ライターを漁り
ふと、手を止める。
煙草を口から手へと持ち替え
パタパタと指先で弄んだ。





『……………』



ポケットからいつぞやの
パンダの絵柄の入った
吸い殻入れを取り出して
暫し、物思いへ耽りながら
目を落とし、眺める──…。





『─────無力だねぇ〜…、』



そう独りごちて祟場は
カーテンの隙間から見える
秋晴れの空を眺めた───。















『────っ、』



優人はふと、目を覚ます。
時計の針を見ると十二時に
十五分前を差していた。





(………喉が、渇いたな…)



身体を起こし部屋を見回すが
そこへ祟場の姿はなかった。
恐らく、昼食の支度へ
行ったのであろう。

優人はベッドから抜け出した。















『──へぇ、優人君にそんな事が。…通りで昨日、今日と見掛けない訳でやす』


『昨日までは、割とピンピンしてたんですがね。今日になって急に熱を上げまして』


『ミスターの薬ともなれば、油断は一切、出来やせんからね。ありゃ、一歩間違えりゃ間違いなく立派な毒物だ』


『そいつを食らって平然としている貴方もやはり、普通とは言えませんがね』


『いやいやいや。そんな人を化け物みたいに仰らないで下さいよ──』


『…………、(正真正銘の化け物の癖に…)』


…………………
……………
………








時幻党、廊下。



『──おや。誰かと思ったら君、もしかして、もしかしなくても。…ネコくんですか? つーか。何してんだ、お前。こんなとこに這いつくばって』


『…………イノ…セ、さん…?』


『どしたんだよ、その頭──。似合ってんじゃねぇーか。アッハハハ…って、あ? ……何だコレ、地毛か??』


『……………、』


『───書き換えによる、魔法だな。お前、何やらかした? それとも、ひょーどーの野郎相手の目眩ましか何かかよ?』


『………、』


『……何だよ。言えねぇーの??』


『…うっ、───』


『──熱あんのか。書き換えの拒絶反応だな…。ったく、バカだねぇ〜…………ん─?』


『…ち、がっ………て。……これ、は…………僕、が─────』


『……喋んな。』


『…………??、』


『いい、いい。つーか、誰か別の奴に訊くわ。聞こえねぇーもん、まどろっこしい──』


『……すみま、せ───…』


『謝んなよ。…ほら、肩貸してやっからよぉ〜。(──“タダ”じゃねぇーけどな。) ……立てっかー? ほ〜ら、よっこいせ〜っと───』


『…あの、』


『んー?』


『…………ありがとう、ございます──』


『──────、(ホンット、馬っ鹿な奴…。親切心からのそれじゃねっつの──、調子狂う………)』








『───さて、と。昼食の準備はこれで万端。烈将さん、先生達を呼んで来て貰えますか?』


『おや? 祟場さん、そちらの小さな鍋は? まだ、何かお作りになってるのでは…?』


『ああ。これは優人の分ですよ。…アイツ、食欲無いかも知れないので“おじや”です』


『そうでやしたか。では。私め、ちょいと行って参りま…』


──ズドォンッ!! パラパラ…パラ……


『?』『…!?』



その時、リビング
廊下側のドアが
勢いよく吹っ飛んだ。





『おーい、居るか? 祟場くん』


『……イノセさん、ドアは押したり引いたりする物でやす。ゾンビなど出やせんから、一々、蹴破らないで頂きたい』


『何事ですかっ──!?』



リビング入り口へ佇むイノセントと
リビング中央へ立ち尽くす烈将、
そこへ祟場もキッチンから現れた。





『しょうがねぇーだろ? 両手、塞がってんだから………』


『!』


『優人…!?』


『おいおい、勘違いすんなよ。そこに落ちてたから拾って来てやっただけだ。───落とし物には、礼一割…だっけ?』



ニヤニヤと笑うイノセントへ
祟場は慌てて駆け寄り
優人を受け取った。





『イノセさん…。取り敢えず優人を連れて来てくれた事には礼を言う。…だが。アンタ、本当に優人に何もしてないだろうな──!?』


『してませんよ、嫌だなぁ〜。…まだ?』


『………貴方の言葉は、信用ならないんでやす』


『お前がそれを言うのかよ? 芝祈。…知ってんぞ? ───先日、お前がこのガキ襲って喰おうとしたって……』


『─!?、…烈将、さっ……??』



祟場は驚いて
烈将を振り返る。





『──なに。私めのあれは、ちょっとした忠告も兼ねたドッキリでやすよ。祟場さんの前でそんな誤解を招くような言い掛かりは止して下さいな。私めの首が飛びやす、───物理的な意味で…、』


『ほー?、只の未遂事件じゃなかったのかよ。泣かれて、喰いそびれた……だろ? 事実は。言い訳してんじゃねぇーぞ、三下ぁ〜』


『泣かせてしまった…というのは、まあ───今は、置いといて。…祟場さん。どうか、あの方の言ってる事をそう、簡単に鵜呑みにしないでやって下さいな。──視線に殺気が込もっておりやすよ……。(師弟愛を若干、通り越し気味なんでやすアナタ方は………)』


『…クックック、手緩いなぁ〜。でも、お前もバケモノの端くれなら。興奮の一つもしただろ? 泣かせてなんぼだ、羨ましい限りだぜ──』


『───加虐趣味で変態な貴方と、一緒にしないで頂きたいものでやす』


『……………、』


『まあ、そうゆう事にしといてやるよ。───今度は“僕”と、二人っきりで遊びましょうね? ネコくん…………』


 

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By クロポン補佐官
2019-10-01 04:30:02
 




そう言い残したかと思うと
あっさりイノセントは
廊下へ引き返した。





『──ん?、そういや…』



だが、しかし。ふと
イノセントは足を止める。





『礼の一割、まだ、貰ってなかったな。…何にしよーか───』


『…!、』


『──そうだな。…ねぇ、祟場くん? 彼を僕に下さいな。下僕にします。丁度、前々から欲しいなー、とは思ってたんですよ。その君の猫。以前、直々に勧誘もさせて頂いたんですがね。丁重にお断りされてしまいまして』


『当然の結果でしょうね。というか、一割を大いに超越しておりやす。──却下でやす』


『そんなー。そんな、即答しなくてもいいじゃないですかぁ〜。飼ってみて死んだら、その時はちゃんと返しますから───』


『…イノセント。真面目に話すなら、場合によっては望みを聞いてやる。』


『祟場さん…!、何を真に受けとるんでやすか!? 貴方らしくもない──!!』


『───別に俺は正気ですよ、烈将さん。この男の場合、その辺ハッキリさせて置かないと下手したら、後々もっと厄介な請求とかしてくるでしょうし……』


『クックック、解ってんじゃねーか。祟場ぁ〜。──じゃあ、あれだ。こないだの続きでもしよーや、一割分?』


『────その条件、飲みましょうじゃないですか……』


『祟場さんっ──!!』


『召喚の儀…。炎帝カグツチ、雷帝タケミカヅチ───』


──キィイイイ…


『そうこなくっちゃなぁ──!!』



──バリバリィ…
バキバキメキバキ……ドカッ!!
パリーン、ガシャーンッ!!………





『そうゆう事は、外でやって下さいな。全く…』





……烈将に抱えられ、
凄まじい音の轟く中
優人がうっすらと
目を開けた。





『っ、……』


『おや? 気が付きやしたか、優人君』


『………烈将、さん?』


──ドガガガッ、バキッ、メキメキメキ…!!


『一体…、何の音ですか──??』


『ああ。ちょいと祟場さんとイノセさんが一戦、やらかしてるんでやすよ』


『えぇ…!? ……そ、そんなっ…、ふ、二人を、止めないと───』


『優人君! 今、行っては巻き込まれるでやすよ?!』


『で、でもっ……』


──グラァッ…



立ち上がった優人は
祟場達の元へと
向かおうとするが、
視界がグニャリと歪んだ。





『優人君、駄目でやす! 戻って下さい!』


『烈将さんは周りがこれ以上、壊れないように……風神結界を、お願いします…!!』



優人は眩暈を殺して
ふらつきながらも
引き止める烈将を振り切り
祟場達の元へと向かう。





『そんな身体で無茶でやす、優人君──!!』








──バキバキメキパキッ…!!


『────降参すんなら今の内だぞ、祟場くん? その代わりに猫は貰ってく。…後継者なら、またどっかで拾ってくりゃあいい。俺は“アレ”が気に入った。』


『連れてく前提で話を勝手に進めないで頂きたい。──貴方こそ。そんなに下僕が欲しいなら、勝手に何処かその辺から探して見つけて来たらいい』


『だーからぁ〜。俺は、アレがいいって言ってんの。下僕にするのがそんなに不服なんなら“嫁”でも何でも構わないからよぉ───』


『笑えないジョークですね。お断りします! それに、アイツは男で、“俺の弟子”です──!!』


『…レンタルとかも出来ねぇーのかよ? 猫の奴にも言われたよ。“自分は成り代わりの見習いで。それ以上にもそれ以下にもなり得ない”って………』


『既に、フラれてるんじゃないですか。ご愁傷さま────』





『先生…!』


『!、優人?!──』


『バーカ。余所見してる場合か───』



──ギャッ!!








赤黒い血の槍は突如とし
祟場を襲ったかのように見せ
その場から逸れるとそのまま
たった今、駆け付けて来た
優人の元へと迫った。





『…なっ、逃げろ! 優人──!!』


『……えっ、』



──ビュルッ…!!





槍は、その形状を変えると
立ち尽くす優人へと絡み付く。


















『───── 一割、だ…。』





…ポツリ、とイノセントが呟く。

イノセントが優人を引き寄せた
次の瞬間、激しい戦いにより
剥がれ落ちた瓦礫の一部が
先程まで優人が居た場所へと
極、寸分の差違いで崩れ落ちた。





『………!!、』


『ナニ、そんなに驚いてんだ祟場…』



肩越しに此方を振り返って
笑うイノセントに祟場は、
只々、言葉を失う──。





『──イノセさん…?』


『んー?』


『────喧嘩なら、もう、その辺にして。一区切りついたんでしたら、そろそろ皆さんでお昼ご飯にしませんか? きっと、オナカも空いてらっしゃるからイライラしたりもなさるんですよ』


『……そーだな。にしても、お前の頭はホント、平和だねぇ〜』


『…イノセント。お前──』


『安心して下さいよ、祟場くん───』


『……………、』


『……?、』





イノセントは優人に
ゆっくりと歩み寄ると
優人の右手を
ソッと手に取り、
その甲へと軽く口付ける。





『まあ。また、その内な───』


『……?』



祟場が静かに訊ねる。





『──イノセント、一つ訊く。真木の倉庫の鍵を壊し、封印を解いたのはお前か?』


『そうですが?』


『お前──、』


『……確かに鍵をぶっ壊したのは俺だがな、そこまでは責任を負い兼ねる』


『何が目的だ、イノセント』


『別に? それに例え理由があったとして、君に教えて差し上げる義理なんざありませんからね───』



イノセントの足元から
赤と黒の闇が渦巻く──…。





『──それじゃあ、今度こそ。また遊びましょうね、ネコくん…』



イノセントは姿を眩ませた。
 

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By クロポン補佐官
2019-09-29 18:00:21
 




#烈将と優人



以前書いた蚊欲のお話の改良版(笑)。

まさかの九割以上を加筆修正。
寧ろ、全く別のお話です。
(ノ∀`*)きゃっ ←
 

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