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[1] 春×桜
By うにさんHP
うにさんへのリンクお礼。
お題は『同性愛』です。

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[2] By 管理人
『春×桜』


春は私の季節だ。
春に生まれたから春。いくらなんでもそのまんま過ぎだろって親のセンスを疑わないわけでもないけど。
私は自分の名前も自分と同じ名前の季節も嫌いじゃなかった。暖かで穏やかな始まりの季節。
桜と出会った季節。
一番最初に桜と仲良くなったのもこの名前がきっかけだった。

『春の桜の下、春と桜がであう』

何か詩的じゃない?

興奮気味に私が言うと

なんだかくどい気もするけどね。って桜は笑う。桜は名前に負けないぐらい可愛らしいタイプの女の子だったけど、笑うと少しだけ寂しげで大で大人びてみえるなんだか不思議な女の子だった。
無愛想ってわけでは決してないのにどこか他人を寄せ付けない不思議な空気が桜のまわりには漂っていた。
その空気は触れるととてもあたたかく柔らかで心地がいいのに、どんなに手を伸ばしてもその空気があたしの邪魔をして本当の桜にはとどかせてくれないんじゃないかって。何故だか私にはそう思えた。

私達はすぐに仲良くなっていろんな場所に遊びに行ったし、二人で色々な話をした。
桜は私にとって一番の親友になった。少なくとも私はそう思い込んでた。だけど時々あの柔らかに人を拒絶する空気が桜をどこか遠くに感じさせ私を悲しくさせた。

『なんか桜ってかわってるよね?』

『なんで?』

『なんか人間離れしてる』
私が言うと

『何それ?失礼』

そう言って桜は軽く私の頭をチョップする。

コツン


つむじに軽く響く振動が桜の実存を証明するようで私はすこしだけ安心する。


桜とあって二度目の春。私には好きな人が出来て付き合いだすようになった。それでも変わらず桜は私にとって特別なそんざいで、彼の事は大好きだったけどそれと同じぐらい桜といる時間が私は楽しかった。
彼が出来てから必然的に私は桜に彼の愚痴を吐いたり惚気たりする事が多くなった。
桜はいつもニコニコ話を聞いてくれる。

『はいはい。ごちそうさま。春は幸せで良いね。』

そう言って軽く私のつむじにチョップする。

そういえば桜は好きな人とかいないのだろうか?何回か男の子に告白されてたのは知ってたけど全員あえなく玉砕したらしい。ずっと一緒にいるけど桜のそうゆうはなしを私は聞いたことがなかった

『桜は好きな人いないの?』
学校から帰る途中、なんとなく私がたずねると今まで笑ってた桜の顔が一瞬暗くなる。

しばらく黙り込んでうつむいたあと
『私はダメだよ。』
ぽつりとそうつぶやく
『好きになったらね…いけないの』

そういって桜は笑った。桜がたまにみせる寂しげで影のある透明な笑顔。
私はなんだか桜がこのまま透けて消えていなくなっちゃうんじゃないかと心配になる。
聞いたらいけない事だったのかもしれない。
『え。桜ごめん…聞いたらダメだった?』
オロオロする私に桜はゆっくり首を振って深刻なおももちで語り出す


『春にだけには話すけど、春の言うみたいに私本当は人間じゃないんだ』

『え』

『私は桜の国から来た桜の精なの、桜の国の掟で人間に恋したら桜の国に帰らないと行けないの』

桜の口許は笑いを堪えてぷるぷる震えている。

『も。いい』
一瞬でも真にうけて信じてしまった自分が馬鹿みたいたいだ。

『だって春すっごく深刻な顔するんだもん。単なる片思いだよ。片思い』

むくれてスタスタ先を歩く私をケラケラ笑いながら桜がついてくる。


桜みたいな子が片思いする相手ってゆうのはどんな人なんだろう?とても気にはなったけど、何だかそれを聞くことはためらわれた。桜を包む柔らかな空気は私が桜に直接触れる事を許したりはしないんじゃないか。なんとなくそんな気がした。

少しだけ迷ってから立ち止まり
『告白とかはしないの?』
桜に聞いてみる


『うーん。だって私なんかが告白したら迷惑かけちゃうもん』
舞い散る花びらを見上げながら桜は答える。
私を追い抜いて少し先を歩く桜の表情は伺えない

『迷惑とかそんな事絶対ないよ。桜可愛いもん』
私がそう言うと桜はふりかえって、茶色がかった透明な瞳で私の顔を覗き込む



『私春の事が好きだよ。初めて会った時から。ずっと』


え?
また桜の冗談かと思おうとしたけど、私にはなぜかそれが冗談ではない事がわかった。

『ね。困るでしょ?』
桜がいたずらっぽく私に笑いかける。

『迷惑だった?気持ち悪い?軽蔑する?嫌いになった?』

矢継ぎ早に質問する桜に私は何も答えられず。ただ小さく首を横に振った。

『春が幸せならかまわないって、そう思おうとしたけど、やっぱりダメだね。春が男の子に身悶えてるのを見るのはすごく辛いみたい。』

『…桜。ごめん』

辛うじてそれだけ言うと私は泣き出してしまった。
『もう、泣かないでよ』
桜の白く細い指が私の頬を伝う涙を拭い、そのまま滑らかな動きで私の顎を少しだけ持ち上げる。私はされるがままで静かに目を閉じると、桜の柔らかな唇が私の唇に触れた。
風が桜の花びらを舞いちらす。
私たちは長い長いキスをした。

私がずっと触れたいと切望し続けていた生身の桜は彼女を包む空気よりも何倍も暖かく、何倍もやわらかく、そうして、とても悲しかった。






翌日学校に行くと桜は居なくなっていて、担任は家庭の事情で桜が引っ越したのだと告げた。
あぁ。桜の国に帰っちゃったんだ。
私はなぜかそう確信した。


春風が雪のように桜の花びらを舞い散らす。
昔はただそれを綺麗としか感じなかったけど今はなんだか少し悲しい。
『春。どうかした?』
桜の花びらに目を細める私を、彼が心配そうに覗き込む。
『ううん。何でもない』小さく首を振って繋いだ手に少しだけ力を込めた。
『しっかしすごいよな』辺り一面舞い散る花びらに子供みたいに無邪気に関心する彼をとても愛しいと思う。
大好きな人とこうやって手を繋いで一緒に歩ける事はとても幸せな事かもしれない。
私にはやっぱり桜の気持ちには答えられなかったんだろう。彼の事が大好きで、私は今とても幸せだ。

だけど桜の季節になるとどうしても胸の奥が小さく痛む。


私のファーストキスの相手は女の子で、しかも人間じゃなかったんだ。そう思うと、何だか不思議な感じがする。




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