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レスは禁止です


10月30日、帝都の一角にて
By メルティーナ
2010-11-01 21:08:32

「とりっくおあとりーと!」
「お菓子くれなきゃ悪戯するぞ!」

お決まりの台詞を口にしながら両手を差し出す子供たちに、小さなチョコレートをひとつずつ手渡す。

「……これだけ?」
「いらないならあげないよ?」

子供というのはとても素直で、チョコレートの小ささに不満も露わ。そんな彼らに意地悪く微笑み掛けながらお菓子を取り返そうとしてみせれば必死に守ろうとする姿が可愛らしくて、気付けば結局ふたつみっつ渡してしまっているのだった。

これは、数日前に子供たちに教えてもらったイベントだ。何でも、仮装をして『とりっくおあとりーと』の呪文を唱えればお菓子がもらえる、というものらしい。
彼らに都合良いように改変されているのかもしれないけれど、楽しそうに目を輝かせながら「お菓子用意しといてね」と笑い掛けられてしまえば断ることなどできない。
故に、今に至るというわけで。
お母さんに腕を引かれ帰っていく小さな魔女っ子を、手を振って見送った。



「……よし、こんなところかな」

子供の波が去ったところで一息吐いて、立ち上がる。
彼らに合わせてずっとしゃがみっぱなしだったので身体が痛い。スカートの裾を正してから、思い切り伸びをした。
最初は顔見知りの子供だけだったのだが、いつしか見ず知らずの子供たちまで見よう見まねでお菓子をねだるものだから思ったよりも時間が掛かってしまった。

「パレードも終わっちゃったみたいだけど、このまま帰るのはなぁ」

すっかり軽くなった鞄を拾い上げる。中に残っているのは少しのチョコレートと、知人と会った時の為にと焼いてはみたものの今のところ出番のないクッキー。
独りで食べるのも寂しいので、また明日にでも子供たちと分けっこしようと考えながらのんびりと歩き出す。
向かうのは自宅ではなくて月皇宮。だって、夜はまだ始まったばかりだから。

「ま、たまにはこんな仮装祭もありだよね」

くすり、我知らず笑みが零れた。

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