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オーバーパラレル、002を書いたのでうp。このラウの説明でどれくらい意味が伝わったか、ちょっと知りたい、全然わかんなかったら分からないと。 ラウの喋り口調がどうも定まらないのが何かシュールだけど、まぁ眠気とノリで書いたものなので…… 002 目が覚めると、周囲は暗闇に包まれていた。 いや、暗闇というのは正しくないかもしれない。黒であることには違いないが、暗闇にしては、俺の姿だけは暗くならず、はっきりと見える。マンガやアニメなどでよくある異世界の狭間的な何か、みたいなものだろうか? ……なんて、そんな呑気なことを言えた場合でもないだろうに。 「……俺は、死んだのか?」声に出して自問してみる。 記憶が些か曖昧なのだが、車に轢かれて意識がフェードアウトしたのは何となく覚えている。もしかしたら俺はまだ死んでなくて、肉体は昏睡状態にあり、意識だけがいわゆる精神世界のようなものにあるのかもしれない。……なんて、希望的観測だろうか? 立ち上がろうとしたが力が入らず、結局、上半身だけを起こした座っている姿勢で精一杯だった。 しかしまあ、何なんだここは。 仮に生還できたら、昏睡中の不思議体験とできそうなものだが、だったら今の内に楽しんでおくべきか? ……まさか、そんな楽天家じゃないだろう、俺は。 「おはよう」 突然呼び掛けられ、応対できるでもなくただ、声のした方に向いた。 ……真っ白な少女がいた。彼女はこちらに向かってゆっくり歩いてきて、そして、俺から2メートルぐらいの距離を保って止まる。 「お、おはよう?」何テンポか遅れて返す。 人がいたな……これは想定外だ。さて、どうしたものか。というかこの少女、どこかで会っただろうか。見覚えがある気がするが。 俺のたじたじ加減を察してなのか、少女はふぅっと小さな溜め息をつき、その場にしゃがみ込む。周囲が真っ黒な故に床と空間との境界線が分からない、今更ながら非常に不安にさせてくれる地面である。 「……まだ、記憶が混乱してるのね」と少女は考える表情で言う。 記憶が混乱。まぁ確かに、混乱しているのかもしれない。俺は死んだかもしれない、というのだから。直前の記憶も非常に曖昧である。轢かれた、ということだけはしっかりと覚えているが。 轢かれた……いつ、何で轢かれたんだっけ? いや、何か、その前に大事なことがあって、それを忘れているような気がするんだが…… ふと気付くと、少女は一心に俺を顔を見つめていた。 ……何だ? というか今更だけどこの子は、何者なんだ? そんな疑問が次々と沸いてきたのが、とりあえず注視されている状態が落ち着かなかったので 「どうかした?」と尋ねた。 「え? あ、あうん、大丈夫」とまるで不意をつかれたかのような返事をする。 ……ん? 大丈夫? 大丈夫、だいじょうぶ、ダイジョウブ…… 「ああ!」と俺は思わず大声を出してしまった。けど、それも仕方ないと言えよう、連想ゲーム的に、突如として轢かれる直前の記憶が戻ってきたのだから。 「思い出した?」と少女が少し期待するような笑顔で問い掛けてくる。 「ああ、思い出したよ、轢かれる前のこと。君が車道に飛び出して――てか、君は何者なんだ?」 という俺の言葉を聞くと、少女は眉を寄せた。 「……なーんだ、そっちの記憶か」と残念そうに呟く。 そっちの記憶……? そっちというからには、他に何かあるというのだろうか? 俺はまだ何かを、忘れているのだろうか? 「……君は、何者だ?」まず一つ、さっきスルーされた質問を再度してみる。 「うーん……、何だろう、何て言えばいいんだろう?」応じてくれたはものの、要領の得ない感じである。 「とりあえず名前とか、何か、色々あるだろう?」 「あーうん名前ね、名前は、ラウだよ」 「ラウ……」不思議な名前だな。というかどこの国の名前だ? てっきり外見と言葉から日本人だとばかり思っていたが。 「そうだねあと……ていうか記憶が戻ったら自己紹介した意味が無くなるよね……まぁいっか」と後半は独り言のように、とりあえず納得された。 「私のこと説明する前に、今の陽の状況を説明したほうがいいと思うんだけど、そっち先に話してもいい?」 「ん? あ、ああ、順を追って説明してくれれば有り難い」……というか、何で俺の名前知ってるんだ。いや、俺が忘れているだけなのか? 「んーじゃあねぇ、問題。今は西暦何年でしょー?」 「え……?」いきなりクイズか。しかも超一般常識編だ……。 「西暦……2015年、だろ?」 「ぶっぷー! ハズレぇ」何かこの子、わざとなのか、賢そうでいて子供っぽい言動も多い。いや、子供なのかもしれないが。 「じゃあ、何年なんだ?」 「今は西暦2026年でしたー。うーん、11年違ったね、ニアミスかな?」 果たして11年の違いをニアミスと言っていいものなのか……? 46億年とされる地球の歴史を基準に考えれば、それはニアミスなのかもしれないが、いささかスケールがでかすぎるだろう、って、そうじゃなくて 「どういうことだ? 俺はコールドスリープでもしてるのか?」事故で死にかけた俺を治療できる時代までコールドスリープ、なんて、いや誰がやるんだよ。 「うーん、近からず遠からず? あー、近いっていうのは寝てるって意味でね、現実の世界にある陽の身体はね、今眠っているような状態なんだよー」 眠っているような状態なんだよー、っていやそんな間の抜けたような感じに言われても困るんだが、俺にとっては結構問題だぞそこ。 「この世界はね、仮想空間なんだよ。ここ17年間の間、陽が今まで生きてきたと思っている2015年の世界もね」 「……仮想空間?」何か、急にSFじみた話になってきてないか? いや、というか、どういうことだ? 俺が今まで生きてきた世界も、って? 「そう、仮想空間。陽は、本当は2026年の現実世界に生きている人で、そこからここの仮想空間にダイブしているっていうこと」俺の、……仮想空間? という呟きは納得と受け取られてしまったようだが。 いや、意味が分からない。 「色々あってね、陽が、記憶を封じた状態で2015年の仮想空間に行くって言い出したから、今まで17年間、現実の世界の存在を忘れて仮想世界を現実と思い込んで、生きてきたんだよ」 現実の世界と思い込んで、ひいては自分の今生きている世界が仮想であることを忘れて、か。 「いや、いや、ちょっと待ってくれ。話が唐突すぎて、処理に追い付かない」 「うーん、待つよ」 ……いや待つよ、じゃなくて……。待ってくれ、ってそういう意味じゃないだろ、多分。言った俺もよくわかんなくなってきたが。 まあいいや。 えーっと? 彼女の話を整理すると、 俺は2026年に生きる人間で、そこから何らかの方法で精神を2015年世界をモチーフにした仮想世界に送り――某有名映画の名前を例に出させていただくなら、マトリックスみたいな感じだろうか――そしてそこで記憶を消した、いや、封じたといったか。その結果俺は当然、その仮想世界が現実世界だと思い込み、今まで17年間生きてきた、と、そういうことだろうか。我ながら割とよくまとまっている。 「待ったよ、どう?」変わった問い掛けである。 「……うーん、何となく分かったような分からないような……いきなり飲み込めるような状況ではなさそうなことは、確かだな」 俺の順応性が低いのだろうか? いや、誰だってこんなこと急に言われたらこんなもん、いや、むしろ頑張っている方だと思うが。何故かは分からないが、思考がいつもよりしっかり回るようになっている気がする。 「てか、いや、ちょっと待て。仮想世界で17年過ごして、現実世界は現在2026年ってことは、少なくとも俺は2009年からずっと仮想世界にいるってことだよな?」だとしたら、現実の俺の身体とかも相当ヤバイ気がするが。 「違うよ」あっさり否定された。 「え? じゃあどういう……」 「仮想世界の時間は加速してるから、現実世界の大体100倍――細かく言えばもうすこし長いんだけど、だから、17年こっちの世界にいたとしても現実世界ではそこまで年月は経ってないんだよー」 なるほど……、精神と時の部屋的なあれか。あれは365倍だが。 「けどねー、陽もこっちの世界で過ごした時間、トータルでは300年ぐらい経ってるからね。現実でも3年は経っちゃったみたいだね」 「さんびゃく……て、ええ?」マジすか。 「じゃ、じゃあちょっと待て。その記憶を消した17年間の前に、既に283年間も仮想世界にいたってことか?」 「うん」……どんだけセカンドライフ充実させてんだよ、俺。 「てかそんな長い間一体俺は何をしてたんだ……」仮想世界は、そりゃあ自由かもしれないが、現実逃避しすぎだろ……。 「うーんとね、社会問題の攻略、かな?」 社会問題の攻略……? 不思議な言葉の組み合わせだが。 「この仮想世界はね、シミュレーターなんだよ。現実に起こり得る問題をいかにして解決するかー、ってね。そのシミュレーションプレイヤーとして、陽がいるの」 「シミュレーション……?」 「現実をモデルにして創られた、30個の仮想世界。その各世界が抱える問題を、その世界に住む一人の人間という立場で解決することでクリアとなり、次の世界に進める。それを30番目の世界をクリアするまで続ける。っていうのは受け売りー」 最後の一言は何か要らない気がしたが……、俺は、一応それなりの使命を持ってここにいる、ということか……。 「何となく掴めてきたような気はするけど、まぁ幾分、話だけだとな……」 「じゃあ見てみる? 記録」 「記録?」 「記憶を封じる前、陽は29番目の世界までクリアしたんだよ、しかも100人のプレイヤー中ダントツ1位、2位にダブルスコア近い最速タイムで」それはとんでもない野郎だな、とても俺なんかとは次元が違う奴だろう。 「てか他にもやっている人間がいるのか?」 「もちろん。……会うことは稀だと思うけど」と言いながら彼女は、何かを操作するように空中で手を動かしている。 「……何してんの?」 「よし、リロードおっけー」と少女はさぞ楽しそうに言う。 「じゃあ陽、せーのでオーバーパラレル起動って、言って」と、ラウと名乗った少女は俺に言った。 「え? 何? オーバーパノラマ?」次世代型テレビ、みたいな。 「じゃあ、せーの」待つ気がまるでねぇ。 「オーバーパラレル、起動」 その瞬間、世界が広がった。
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