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<HR color=#FFCCFF size=2>3 再会した時,その表情にムカついた。 何て表情(カオ)をするんだろう。貼り付いた笑顔。瞳は何かに怯えるように揺れ。理由とか以前に,唯直感的に苛ついた。 嬉しかったのに。 初めて会ったのは慰霊碑の前。妹のマユと同じ色をした人。2度目に会ったのも慰霊碑の前。あのアスランと知り合いだって聞いて本気かよって軽く目眩。 また会えて嬉しかった。 (正直,再会したその時迄忘れていたんだけど。でも本当に嬉しかったんだ) 「花を植える」んじゃなかったのか? 「僕達」って,俺はその「達」には入らないのかよ。 睨みつけたら途端に大人しくなる(まぁ,元から大人しい方みたいだけど)。 嘗められてるんじゃないかって,そう思ったんだ。 一方的だなんてこと分かってる。でもムカつくものはムカつくんだからしょうがない。生憎俺は感情をコントロール出来る程大人じゃないから。 「キラと仲良くする気はない?」 程なくして話しかけてきたのは,蜂蜜色の跳ねっ毛の女だった。 なんでそんなコト言われなきゃならないんだろう。 此処(アークエンジェル)に来て始めは色んな奴等に話しかけられたけど,最近は滅多にそんなコトはなかったから珍しい奴だなって思った。アイツといいこの女といい,物好きなものだ。 そう。アイツは懲りずに何度も俺に話しかけてくるんだ。……あんな表情する癖に。 「ホラ,またブスッとして。そんな怖い顔してるから皆貴方のコト怖がっちゃってるじゃないの。それともそれ,素?」 まるでこちらの思考を読んだかの如き台詞が,グサッとくる。……この女。人が密かに気にしているコトを。 アカデミーやZ.A.F.T.でもちらちら言われていたんだ。……そんなに怖いんだろうか。自覚はないんだけど。 ふと,先程彼女の口から出た別の一言が気になった。 「……“皆”って,アイツ……キラも俺のコト怖がってるのか?」 何故だろう。そんなコトが気になった。 ……てか,怖がってるに決まってるじゃん!アイツの表情,今でも俺の脳裏に鮮明に焼き付いてるし。 「キラが?まっさかー。そんな訳ないでしょ」 「……けど,アイツ俺のコト見てビビってんじゃん」 「“ビビってる”ってのとはちょっと違うわね。怖がってる人相手に自分から何度も近付かないわよ。アレは……そうね。“戸惑ってる”って表現が1番近いと思うわ。貴方にどう接していいか分からないのよ」 戸惑っている……? 言っている意味はよく分からなかった。でも,怯えているんじゃないのか。そのことに何故かひどく安堵する。 それに。戸惑っている──か。それは俺も多分同じで。 俺達はお互いのことを知らない。全く知らないって訳じゃないけど,持っている情報は間接的なもの(主にアスラン経由)ばかりで,戦場でのことだってあまり思い出したくはない。 「貴方の気持ち分からないでもないから,無理にとは言わないし。でもこのまま殺伐としてたって後悔することになるんだから〜」 そう言って詰め寄るのは笑顔,でも得体の知れない迫力があって頷きそうになる。言い返すだけでやっとだった。 「アンタに俺の何が……」 「私,大事な人を戦争に殺されちゃったのよね」 言い終わる前に重ねられた言葉に息を飲む。 「民間人だった癖にカッコつけて飛び出してさ。で,MIAだって?その時はカッとなっちゃったから無神経なコト言いやがったZ.A.F.T.兵・約1名にナイフで斬りかかったりしたわよ。懐かしいわ〜……」 笑いながら俺の肩叩いてきたけど……笑えねえ。笑えねえって,それ。 「誰が殺したか,とかそういうの,言っても仕方ないし。戦場に居たのなら誰だって何かを傷付けるわ。誰が何を傷付けるかなんて,ほんの些細な差で変わっていくの」 俺は,守りたかったんだ。守る為の力が欲しくて,手に入れた。 「戦わないと,誰かを殺さないと自分が殺される。そんな世界で,誰がとか誰をとか──言っても仕方ないことだわ」 ──そして俺は“敵”を撃った。守りたかった。でも,その人間を想う人間から見れば,俺はただの“人殺し”。視点が変わるだけで,その内容は真逆になる。 「戦争は嫌い。全部割り切るなんて出来ないけど,もうあんな想いをするのは嫌なの。憎しみ合ったり殺し合ったり,その先に憎しみと誰かの死以外の未来はあるの?」 だったら俺はどうすればよかった? 何も出来ない子どものままただ生きて……“戦争”に殺されてしまえばよかったとでも? 「貴方は知らないでしょうけど……。キラは戦時中,貴方のことを知ってずっと気にかけてたのよ」 俺もアイツは知っていた。俺から何もかも奪った。平和も家族も仲間も──ステラも,何もかも。憎くて憎くて許せなくて,ずっとその陰を追っていた。復讐。俺の生きる理由だったから。 「勿論,それで恩を売ろうって訳じゃないのよ。ただ,知っておいて欲しかったの。私の自己満足だって思ってくれてもいいわ」 確かにこの女のいうことは自己満足,偽善としか思えない。 ──だって,俺の今迄生きてきた意味は? 間違った道だったのか? 簡単に納得なんて出来るわけない。──したい訳ない。 暖かで,綺麗で,優しい世界を! 俺には叶わない望みなのか? ──僕達はまた,花を植えるよ── キラ,アンタは何を思ってあんなコト言ったんだ? 何度も何度も歩み寄ってきて。何を思って俺を見ている? ああ,でも怖がられていないのだと。求められているのだと。俺の存在に心乱されるのだと。そんな人間がいるのなら,何か満たされるような気分になる。この酔いに似た感覚は何だろう? 「アンタって結構お節介なんだな」 そう言った俺に,ちょっと眉根が動く跳ねっ毛女。 「さっきも思ったけど……アンタは酷いんじゃない?」 まがりなりにも同じ艦(ふね)に乗る仲間に向かって。跳ねっ毛女はそう言うけど,今迄殆んど話したコトもないのだ。名前なんか知らない。 ……まあ,うん。向こうはこっちを知ってる訳だし。失礼だったかもと思わないでもない。 「悪い。何て名前だっけ?」 「ミリアリアよ。ミ・リ・ア・リ・ア」 「ミリグラム?」 「ミ・リ・ア・リ・ア!もう……ミリィでいいわよ」 「ミリィだな。サンキュ!」 「……因みに,ミネルバに乗っていた貴方のお友達の名前は?」 「ルナとレイとメイリンとヨウランとヴィーノ」 「ルナさんの本名は?略さないでよ」 「……ルナ……ルナ……アリア?」 「混じってるわよ。じゃあプラントの議長だったあの狸……もとい男性は?」 「議長は議長だろ?」 「名前を聞いてるのよ,名前を」 「……」 「誰?」 「……デ……」 「……」 「……?」 「……うん,分かった。もういいわ」
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