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<HR color=#FFCCFF size=2>(編集中) 「ずっと一緒に居ようね」 それは記憶の彼方。僕達が交わした,2人だけの約束。 何てことはない口約束。 でも,幼い僕にとっては,何よりも意味があるもので。 まだ世界を知らない無邪気な僕は,純粋に単純に,ただ信じていた。 永遠に違(たが)えられることはないのだと,と信じていた──。 1 「起きろよ,寝坊助」 乱暴な言葉と共に身体に衝撃と痛みが走り,蹴り起こされたのだと理解した。分かってはいても体が言うことを聞かない。呻きながら布団を手繰り寄せせ深く潜ろうとすると無理矢理引き剥がされた。更に,思い切りカーテンを開けられて鋭い日差しが身体を貫く。 「痛っ!酷いよ何するの,死んじゃう」 慌てて身を起こすと急いで部屋の隅に逃げ込んだ。 もつれながらも漆黒のブレザーに身を包む(くるむ)と,幾分落ち着いた。ゆっくりと乱れた呼吸を整えていく。 キラ・アスカ。ごく普通の吸血鬼。太陽から呪われた存在。 日陰に馴染む素肌を撫でていると,キラは,複雑な気持ちになってくる。 ──生物にとって暖かな温もりを齎す(もたらす)筈の光は,僕達の躯を焼き焦がす。 「ホラ出来んじゃん。さっさと支度しろよ」 目を細め此方を見やる彼は,自分の分身,シン・アスカ。 彼は既に身支度を整えていた。漆黒のマントに似た短めのコートを羽織り全体的に黒いイメージの所為で紅い瞳だけが際立っていた。僕と違う瞳の色。それがとても切なくなる。 ──嗚呼,僕は誰よりその色が好きだった筈なのに! 同時にとても胸が痛い。 人間達の住むごく一般的な街に,シンとキラは二人きりで暮らしている。家事は分担制。料理はシンの方が上手いけれど,掃除はキラの方が上手かった。気心が知れているから,少ない言葉で通じていたりするし,特に言い争いをするでもない。稀にいさかいがあっても日付が変わる迄には自然鎮火している。 仲はいい方だと,キラは思う。けれど年月を重ねる毎に,変わっていく自分達を感じていた。 双子であるシンとキラの背格好はそっくりだが,受ける印象は全く違う。 キラの髪は艶やかな栗毛色。瞳は“ウォーターサファイア”の鮮紫。消極的な訳ではないが,人見知りなきらいもあり大人しく見られる。 シンの髪は闇を溶かし込んだ如き漆黒。瞳は“ピジョンブラッドルビー”の深紅。奔放且つ快活な性格の所為か自然と周りには人が集まってくる。 それは誇らしいのと同時に,とても狂おしい。 ──嗚呼,僕も同じ学校に行きたかった。 けれど彼が選択した進路(ミチ)は寄りにもよってミッション系のハイスクール。吸血鬼がキリスト教の学校に通うなんて! 「十字架を怖れるのは,“神サマ”とやらに後ろめたいコトがあるからだ」 いつだったか,シンが言っていた。 「俺は“神サマ”なんて信じない。悪いコトしてるとも思ってない。だから,十字架なんて怖くない」 シンは,誰もが物怖じするような所業を何でもないことのようにさらりとやってみせる。 シンは強い。恐れを知らない,誇り高い吸血鬼。キラは,後ろめたいとかそういうコトはよく分からない。けれど,十字架は怖くて仕方ない。シンのようには──なれない。 そう,キラは寂しくてたまらないのだ。彼が段々自分から離れていくようで。 容姿が異なってしまうのも其れに拍車をかける。 いつの間にか,寝室からシンの気配は消えていた。それはまるでぽっかりとあいた空白のように。キラは一つだけ溜め息をついて,シンの言う通り登校の支度を始めた。
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