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何だか先が見えないね。 ねぇ,昔話をしようか? 今に繋がる昔のお話。 別に聞かなくてもいいんだよ。別に,何も変わらないんだから……。 『ムカシバナシ』 妹 ……俺がどうにかなるとでも思うのか?お前が? ソレは何よりの冒涜。 最も信頼を置くべき相手だから,そのお前が俺を信じられないのかと,瞳には剣呑。 ――この世の誰もが彼を必要としなくても,自分だけは信じて,そして…。 おい,妹も追え。 そう言って指図する長らしい男は次の瞬間には崩れていた。 お前達,この俺を前にして他の人間を捕まえる算段とは随分余裕じゃないか?それならこのゴミも捨てておいてくれ。 たった今崩れ落ちた男を,その手で斬り捨てた男を,“モノ”のように片手で引き掴み,無造作に投げ付けた。 ――そう,“モノ”だ。命がなくなった時点でソレは,生き物ではない。唯の“モノ”だ。 投げ付けた……ように見えた。正確には,持ち上げ,手を離し,再び崩れかける死体を蹴り飛ばした。 死者に対する敬意等微塵も感じられない。唯投げ付けたよりも,尚更。そもそも彼が成したことだから,何ら不思議はないのだが。 死体は――“モノ”は,嘗ての仲間の足元へと無様に滑り,伏した。袈裟懸けの背からは血が流れ続けている。擦れた躯(カラダ)に添って深紅が擦れている。 描かれた不揃いな線は吐き気がするくらい綺麗で,蒸せ返るような,血のニオイ。 ――キモチワルイ……。 気持ち悪い。気持ち悪い。 彼が流した血じゃなくてよかった。そう,心の底から安堵する。 そう思わなくては,耐えられない。 そしてまた,本心だった。 深紅の傍らに立つ彼。 ――嗚呼,やはり綺麗だ……。 彼が流させたと思えば,この色も,ニオイも,愛しく思える。 彼自身のニオイではないけれど。 ――彼が血を流す?耐えられない。 きっとうっとりするくらい甘いニオイがするだろう。けれど,彼が動かない,命のない唯の“モノ”になってしまうのは,耐えられない恐怖だ。 ――嫌。 我知らず足を踏み出した綺羅は,然し彼の視線に射抜かれ,立ち竦む。 青年と少年の狭間,まだ年若い彼は,その年に似合わぬ冷めた瞳で,綺羅を……そして男達を見ていた。
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