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―――届かないんだ、月に手が。 アレンは青く澄んだ夜空に左手を伸ばしながら言ってみせた。神によって血の色に染め上げられたその手が、月光によって神聖な芸術作品の如く浮かび上がっている。アレン・ウォーカー。神に愛された申し子。世に蔓延るアクマを倒す使命を持ったエクソシスト。まるで光のような輝きを放ちながらも、いつかフと消えてしまいそうな儚いモノを持つ彼。オレがアレンを思い出すとき、一番最初に頭に浮かぶのは、そのちいさな背中だった。いつも爛漫に笑っていて明るい彼が、背中を見せるときだけは、ひどく寂しそうな様子をしているのだ。でも振り向いたその顔は穏やかに笑みを浮かべている。今だってそう。まんまるの月に手を伸ばしながら、アレンは笑っていた。まるで聖母のように。なのにその背中は、翼が折れてしまった天使のように切なげだった。翼が折れて下界に落ち込んだ天使。なんて、傍から聞けば馬鹿らしい比喩なのだが。月に向かって手を伸ばして、掴むような動作をするアレン。でも、当然、その黄色い星が彼の手に収まることはない。 ―――オレが連れてってやるさ、アレン。 そう言ったけれど、アレンは笑ったまま、曖昧に頷いて、また寂しげな背中を見せた。 (そうやって今まで、全ての感情と重責をその背中に負ってきたのか。)
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