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<font color= #f9a1d0>ネオンが夜の砂漠へ行こうと思ったのは、突然の思い付きによるものだった。 普通に店の営業を終えた後、普段なら一人暮らしのタワーマンションへ帰るのだが、その日はその思い付きがポッ……と……そう、突然ネオンの心を燃やしたのだ。 そうなってしまってはもう、居ても立っても居られなくて、衝動に突き動かされるまま砂漠へ向かったのだが、これがあまり良くなかった。 砂漠に入ったところはまだ良かった。が、奥に進むにつれ柔らかい足場も増え不安定な中、視界も良くない。おまけに早々に理性の無い砂竜種に標的にされ追い掛け回される羽目になってしまった。 否、初めこそはネオンも自信満々に武器を向けていたのだが、ネオンの武器は重い。正確にそれを振り回す為に踏ん張る力が入らなかったのだ。その、足元が埋まってしまう程の柔らかな砂の所為で。ネオンは実は昼の砂漠ですら自分の足で歩いた事は無かった。砂漠と言えば国から出る時にだけ、プライベート便に乗って渡るものだ。だから知らなかったのだ。徒歩で渡る際のその過酷な環境。夜は暗闇だと云う事も、その上で砂嵐を起こされてしまったら殆ど見えないと云う事も、靴を履いていると中に砂が入って最悪だと云う事も。 ──そうしてネオンは、自分の弱さと知識不足を知った。 「やっぱり、ボディガードを雇うべきじゃないですかぁ?」 家政婦ガビがそう言って、ネオンは実家の洋館にて彼女にラベンダー色のパーティドレスを着せてもらいながら、拗ねた子どもの様にむっとした表情を浮かべた。 「いーや。」 「嫌って……でもネオンさん、下手したら死んじゃいます」 「下手してないから死んでないでしょ〜」 なんて。減らず口を叩いてみるが、今回だって"偶々"生きて帰ってこれただけと云う自覚はある。 「でも……どうして、一人で夜の砂漠に?何か用があったなら私どもに言いつけて下さったら……」 「だってアグリが"お嬢様はどーせ虚白の地へ行ったら死にますよ"みたいなこと言うから、ちょっとした腕試しのつもりだったんだよ」 「え〜アグリヌスさんそんな事言いますかぁ?!でも多分心配して言ってくれてるんですよぉ」 そうは言っても、ネオン的には、偶々その日虚白の地へ行った旅人と話が出来たから、軽ーいノリで自分も虚白の地へ行きたいと言ってみただけ。そ、れ、を!あの冷酷家政婦は、そんな返し方するか?普通。寧ろ意地でも虚白の地に行って土産話でも披露してやりたくなった。 フォローを入れたつもりのガビは、どんどん不機嫌そうな表情になっていくネオンに苦笑いしながら、姿見の前に立つ彼女に明るく声を掛けた。 「あ、ほら、見てくださいよ!このドレス、新作です!優美なデザインがネオンさんにとぉってもお似合いです〜」 鏡を見ると、膝丈のAラインのドレスに身を包み、艶のあるジュエリーで飾った華やかな自身と目が合った。 その家政婦の褒め言葉は、幼い頃から幾度となく聞いてきた機嫌取りのお世辞の言葉である事は心の何処かで理解しているが、今回は少し引っ掛かりを感じ、ネオンは真顔で首を傾げる。 「ねぇ、きみ達はよく言うけど、その"ゆうび"ってどういう意味?」 「えぇっ、今更!品があって美しいという意味ですよ〜」 そうだったのか…。 なんとなく、"取り敢えずサイコー"みたいな意味だと思っていた。 否、自身が受け取る意味としては間違ってはないような気がするが、──間違った。 あの獣人の彼の尻尾へ使う褒め言葉としては少し間違った…。 「……ま、本人も意味わかってないみたいだったからいっか……」 正直に「その尻尾、フサフサで超可愛い!」と言っても喜んでもらえたかどうかはわからない。もし怒らせていたらさっさとあの場から立ち去られていたかもしれないし。そうなれば、負傷中に更なる強敵に襲われる可能性もあった。あれはあれでよかったのだ。──うん。 それにしても、褒められるという事がなかなかないようであった彼と同じように、ネオンもまた、あのような純粋な反応を向けられる事は貴重に感じていた。そりゃあみんながみんなそうではないとは言え、普段ネオンの周りには本心の見えない者が多すぎる。今隣にいるガビだって、今日はお休みの家政婦アグリヌスだって、たまにしか会えない両親だって、そんな両親に用意された、会った時にしか話さない友達だって。 それは仕方のない事だと思うし、気にしていないつもりで。だが夜の砂漠で彼と出会って、改めて感じた。外の世界に出るのは楽しい。そしてやはり、"自由"には強さが必要だと。 「何時からだっけ」 「18時からですよ〜、そろそろ出た方がいいです、急いで送ります!」 今日は半年ぶりに両親と一緒にディナーをする日だ。 ネオンは何処か落ち着かない様子で洋館を出た。</font> ──────────── 黒の国、幻楼の砂漠にて、アディーロ様とエンカ ネオンも優美の意味は理解してなかった話…。(長い)
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