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12月12日 <著者:葛籠有栖> さて、いよいよ邪智のチェシャの戯れも佳境。 彼らが掌で踊り続けるだけで留まるか、それとも意図せぬ手段で逆転の一手を打つか。 どちらにせよあの隣人たる悪意の猫は嗤うであろう。踊るなら滑稽だと、逆転するなら天晴だと。 まあ、良い。私にとっては白夢がこの短期間でどれだけ世界に認知され、影響を及ぼす範囲を広げられるかさえ確認できれば舞台が如何なる結末を迎えても大事ではないのだから。 しかし、舞台の『本』を読んでいる最中に、新たな役者、駒が増えていた。 それは黒の国にいた。 黒の国――思うところはある。けれども私は敗者。此処にあるのは形骸に過ぎない。 ならば、語るべき事は何もない。 だからこそ、この身は白のアリス、葛籠有栖と名乗っているのだ。 黒も銀も翠も青も価値は等しい。 一々国の一些末に関わる必要はない、その筈だ。 だが、この駒はどうにも気にかかった。 故に、少し戯れることにした。 蒼い月の下、白金の砂漠の丘に居たのは竜人であった。 弾き語り、吟遊詩人、旅人。 名をアンゼと言った。 中々愉快な男であった。善悪で道理を語らずに、自らの価値観でこの猫の戯れを彼なりに評価していた。 そこで、猫に彼の存在を気付かせる為に、調べを捧げさせた。 旧き獣の唄、翠の国マーテラに語り継がれる詩を。 皮肉なものだ。地の精霊、智の大賢人グノーメ=タイタスクロウ。 猫の前身が好んだ西方公国アルディエイジャに伝わるそれを原型とした唄が、今の貴様に贈られる事となろうとは。 皮肉が過ぎると、つい私も歌を口ずさんでしまったが、歌は難しいな。うむ。感情を乗せて、情緒豊かに歌い上げるというのはこの身には未だ難しいのだと実感する。 アンゼ、彼は世事ではなく褒めていたと言っていたが、上手く此方の問いにも答えを曖昧にし迂闊にも抱える札を晒さない強かさがある彼が何処まで真実を語ったものか。 六業――六刃――ボルドウィン=グランバッハーーロレンス=ハルトマン)の件にもあれは本人が誤魔化していたがあの反応は一巡前にて何らかの繋がりがったと考えられる。 とはいえ、あの男は小賢しく立ち回り、最後は相応の末路を辿った、私と同じく敗者だ。 世間一般では悪人となるだろう。恨みは幾らでも買っているだろうが、さて。 演奏の礼に、彼をスヴァログ迄送ってやることにした。 尤も、他国住まいが長かったなら彼の国の流儀は少々手荒いだろうが、何、砂漠を踏破せんとする気概があるなら問題あるまい。 それにしても、アンゼか。ーーいいや、君の名は、■■■■だろう? 葛籠有栖、等と名乗った私が言えた義理ではないだろうがね。 また会おうじゃあないか。アンゼと名乗った君。 虚白の地を目指すなら、我々は否応無しに巡り会う。 黒の国/幻楼の砂漠/アンゼ様とエンカウント
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