[
携帯モード]
[
URL送信]
メッセージの編集
お名前
メールアドレス
※変更する場合のみ入力して下さい
ホームページ
本文
――12月29日、フィリア様及びエリーザベト様とエンカの後日談。 朝。 目覚めた場所は天蓋付の寝台等ではなく、王城の寝室でもない。 けれども幽閉されていた頃の牢獄に比べれば人並みの一室だ。 不満などない。 一室を貸してくれた黒尽くめの魔女には感謝をせねばならない。 「――――♪」 自身は忌薔薇の姫ではあるが、付き人はいない。 ならば身の回りの世話は自分でしなくてはならず、それも苦ではない。 家主たる魔女が目覚める前に表の掃除を済ませ、それから軽く外装と内装のインテリアを―― ――家主である魔女が慌てて降りてきた。 何か勘付いたのか、虫の知らせでもあったのか。 昨夜もあの気に入らない男、冷たい瞳をした神父に抱き潰されていたのによくこんな時間に起きられるものだ。 「お早うございます、フィリア。ふふ、朝早いのね?まだ開店まで時間はあるし、もっとゆっくり寝ていていいのよ?」 ――だったら、『勝手に』改装するのを止めろ。 疲れきったげっそりとした顔でびしりと指さす先は魔女の店内。 何と言う事をしてくれたのでしょう。 薬瓶や魔女の道具が陳列された落ち着いた色合いをした店内は朝、忌薔薇姫が起きてからゴシック調とメルヘンチックが混在した可愛らしさと不気味さが混沌とした何処から集めたのか怪しいグッズで飾られ、壁紙や天井にまで自分の力で生やした物騒でしかない白茨がガーデンロープ代わりに吊るされていたりする有様であった。 これで止められたのは二回目だ。 前は店の外装を自分好みのデザインに改装して、あと少しのところで駄目だしを食らいしくしくと悲しみながら直す羽目になったからとりあえず内装から変えていこうとしたのに。 「ねえ、フィリア。貴方の鴉のような黒は嫌いではないわ?でもね、もっと白とか、可愛らしいデザインとかで華やかに飾ったお店にしても――」 ――いいから元に戻すように。今すぐ。 何とか自分の好みに合わせて、魔女のお店を『自分の小さなお城』にしようという計画の素晴らしさを訴えようとしたのだが昨夜の疲れもあってか取り付く島もない様子の魔女の有無を言わさぬ言葉に今回もしくしくと泣き真似と泣き言で後ろ髪を全力で引こうとし、時々ちらっと様子を見つつ頑張って取り付けた飾りを戻して。 今回も駄目だった。 残念だが、王子様を見つけるまでまだ時間はかかるであろう。 だから、それまでに少しずつ、一気にやるとバレるというのは分かったから魔女のお店を自分好みに変えていこう。 この虚白の地から遠く離れた神聖都市シルヴァに匿い住まわせてくれる魔女に恩は感じながらも、それはそれ、趣味は趣味と特に反省していない忌薔薇姫はばれないように朝早くから作戦が失敗したから次はどうするかと画策するのであった。
設定パスワード
編集する
削除する
無料HPエムペ!