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<font color= #f9a1d0> リリー家の朝は早い。充血している寝不足の目を擦り欠伸をしながら新人警備員の男は今日も今日とて見廻と称して庭の散策をしていた。 元々花植物に興味はないがこの家の庭、庭師の腕がいいのかなかなか見事なのである。そして、というよりこっちが目的なのだが、早朝から庭の手入れをする庭師の少年は、今のところこのリリー家で新人警備員が最も話し易いと感じる人物だった。 暫く歩くと、作業着が土で汚れたいつもの立ち姿を見つけ、ゆるく笑みを浮かべて背後から近寄る。 「ん?お嬢サマ何してるんスか?」 「あ、ゼロさんおはようございます。……素振りをされているんです。熱心ですよね」 振り返った茶色の短髪を持つ少年は何処か困ったような笑顔で話しながら前へ視線を戻し、ゼロは彼の横に並んで少し離れた場所で重そうな武器を振るい鍛錬に励む女性の姿を眺めた。 彼女はこの家の一人娘、ネオン=リリー。もうこの洋館を出て一人暮らしをしているが、昨日は遅くまで新年のパーティに参加していたらしいので此方に泊まっていたのだろう。 「せっっっかくお嬢サマに生まれてきたんだからもっと優雅に過ごせばいいのになぁ」 豪華な庭での、やけにキレのいいスイング。 親も無く、物心ついた時には既に盗賊だったゼロは何処か呆れ混じりに吐いたが、隣から 返ってきたのはそんなゼロをやんわり嗜める様な優しい声だ。 「やっぱりお嬢さまにはお嬢さまなりに色々あるんじゃないですか?何度か誘拐されたこともあるみたいですし」 「ふ〜ん?だから家でゆっくりしてればいいし、出掛ける時はボディガードでもつけたらいいのにな」 「だけど、窮屈ですよ」 「そんなもんッスか?」 今すぐには解せないが、納得する必要性も感じない。他人の話だ。適当に話を終わらせ眩い日差しを受けながらゼロが欠伸を零した時、隣からも大きな欠伸が漏れてきた。 「あれ、珍しいッスね、眠いんスか?そういえばクマ出来てる」 「あはは……実は寝不足なんです。今日は変な夢を見てしまって……」 「変な夢?ああ俺も見た!!なんか俺しかもお嬢サマの夢でさ……」 「え?!ゼロさんも?僕もお嬢さまが変わった神社で働かれている夢を見て……」 どうやら二人が見た夢は同じ内容のものらしい。ネオンが巫女?として白き神社で働いている夢。それだけの夢。だが何処か得体の知れない気味の悪さを感じる夢だった。実際起きた時は謎に疲弊していて、朝に強い筈の二人ともが寝坊した程だ。 こんな偶然はあるのだろうか。二人が顔を見合わせていると、洋館から騒がしい二人の家政婦達の声が聴こえてきた。 「どう!して!!受け取ったの?!」 「ご、ごめんなさい………どうしましょう〜〜〜!!!」 おっちょこちょいで胸のデカい家政婦ガブリエラの泣き言は珍しいことではないが、庭で話し合っていた警備員と庭師の二人は興味本位で洋館に入った。本日は鬼の家政婦アグリヌスがいないのである程度自由行動が出来るのだ。 玄関にて早速目に入ったのは大量の荷物。先に耳にしていた家政婦ヨーコの怒声から察するに、これが原因で不味い事になっているに違いない。見ると、荷物は全て差出人不明になっており、庭師はガブリエラに不安げに訊ねた。 「どうしたんですか?これ……」 「エディさん、ゼロさぁん〜、どうしましょう〜〜、受け取っちゃいけない品を受け取っちゃいました〜!!」 「この量……尋常じゃないッスね。中身はなんなんスか?」 「────中身は豆腐です。恐らく全て」 ヨーコが神妙な面持ちで言い放ち、一同に衝撃が走る。 豆腐、豆腐、何故に豆腐……?この大量の荷物全てが豆腐?老いぼれコックが豆腐祭でも企画して発注していたのか?わからないが、不穏な空気が漂う中ゼロと庭師エディはまたも顔を合わせ以心伝心していた。あの夢の中でネオンは……豆腐がどうだの、言っていた様な気がする。 そして、男二人以上にショックを受けている様子の家政婦二人組。 ゼロとエディがはっとして見ると、その瞳に涙を浮かばせるガブリエラにも、薄らと額に汗をかいているヨーコにも、くっきりと目の下にクマがあったのだった。 </font> ────────────── パーティ会場、白の神社にてアリシア様とエンカ 晴れ着姿のアリシアちゃんが可愛い、貴重な回だったのに絹豆腐さんが最後に爆弾を落としていった為にやっぱり豆腐の話になってしまう後日談!!!
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