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<font color= #f9a1d0>「ネオンさん、急にどうしたんでしょうね〜」 「知らない。御屋敷の外にいるお嬢様の世話は私達の業務範囲外なんだから断ってよ」 「でも今日はお仕事じゃないって聞いたから………」 とある日の晴れた昼下がり、ガブリエラ=フロトーとヨーコ=ヴェルテは横並びで蒼月の商店街を歩いていた。普段はリリー家での仕事でしか顔を合わせない二人がそれぞれ私服でオフの日に顔を合わせているのには当然理由がある。いつもより下の位置で髪を纏めたヨーコが、困り顔のガブリエラに対してため息を吐いた。 「仕事じゃないのなら休みの日にわざわざ関わりたくないわ、職場の人間に」 「えっそれってあたしも!?でも、でもね!ネオンさんにお店に呼んでもらうのってなかなか珍しくないですか?!」 それは確かに、と思ったがヨーコは返事をしなかった。 今日、二人は己が仕事で仕える主人の一人娘、ネオン=リリーに呼ばれて蒼月へと足を運んでいた。主に殆どの日の家事や諸々を担当している古くからの家政婦アグリヌスと違い、週に一〜二日程しかリリー家に出勤しない二人の業務内容は原則屋敷での仕事のみである為、こうして彼女に呼ばれてわざわざ出向く事は殆ど初めてである。そもそも二人がリリー家に勤務し始めた頃、ネオンは既に屋敷を出て一人暮らしをしていたのでそこまで密に関わってきた訳でもない。本人もアグリヌスに過剰に世話を焼かれるのは好きではないようだし、以前ガブリエラがオフの日にネオンの店に顔を出した際も使用人としてではなくお客様として扱われたらしい。 そんなこんなで確かにガブリエラの発言通り休日に彼女から声が掛かる事自体稀で、言われてみれば何の用事か気になりはする。現に休日は好きに過ごすと決めているヨーコも結局ガブリエラの誘いを断り切れず蒼月にあるネオンの店へと向かう羽目になっているのだ。 話しながら歩き続ける事数十分。ネオンの店は商店街の外れにある。彼女が拘り抜いた木の店舗が見えた頃、何度か来店した事のあるガブリエラは不思議そうに声をあげた。 「あれ?………"豆腐"ゥ?」 ガブリエラが吐いた言葉の意を、程なくしてヨーコも理解する。 店名すらまともに掲げない店の前に、やたら目立つのぼりが設置されてあった。 "おいしい玉子豆腐あります" "激安" "早い者勝ち!!" いや、この店は万屋だと聞いてはいたが、今まで食品の取り扱いはなかったのでは──しかもなぜ、豆腐。彼女のイメージと結び付かない食材のチョイスに二人はお互い無言で顔を合わせてから入店した。 店内には先客が二人いた。ガブリエラとヨーコの来店をしらせる呼び鈴は先客二人とネオンの声に掻き消されてしまったか。肝心のネオンは奥のテーブルに突っ伏していて家政婦達の存在には気付いていないようだった。 ガブリエラは先客の男達に気を遣いながら奥へと躊躇いがちに進む。見た事のない男達である。ゴールドアッシュの髪の男は馬鹿にした様に笑いながらネオンと言葉を交わしていたが、ガブリエラの気配にもう一人が振り返ったので会釈する。ダークレッドの髪の男、二人とも見た目的には大体ネオンと同年代くらいだろう。実年齢はわからないが。 「いやいや先パイ、それ絶対夢だって──」 「──おい、お客さんだぞ」 「……お客……対応しといて……」 「あっ、ネオンさんお話中すみません、ガブリエラです!ヨーコも来てます!」 「ガビ……ヨーコ……」 ネオンは返事はしたものの尚も突っ伏したまま、声もなんだか元気がないように聞こえる。心配して口を開いたガビの言葉を、背後からヨーコが冷たく遮った。 「本日はどうされたんですか?絶対に来て欲しいという申し付けでわざわざ参りましたが」 「………もう、何も言わないでそこの箱持ってって……」 そこ、と言われてもどこだ。 家政婦達が困っていると、ゴールドアッシュの髪の男が「これだってよ」と顔で差してから近くの壁側に置いてあった二つの段ボール箱をテーブルの上にどんと置いた。 これは……封がされていないので中身がすぐに見える。 「大量大量。先パイ、これこの子達にタダであげんのか?」 「ん…」 「へぇ、あんたらラッキーだな!オレなんて値下げもしてもらえなかったんだぜ」 「お前は……元々タダみたいなもんだったろ。で、そちらサンはネオンの友達?」 「いえ。リリー家の使用人です」 バッサリ言い放ったヨーコに、ゴールドアッシュの髪の男が僅かに目を丸くした。 「使用人?ってメイドか?先パイマジでマジのお嬢様だったのか」 そんな事よりも、だ。この段ボールに雑に詰められた玉子豆腐は一体なんなのか? 改めて見回すと店内のワゴンにも大量に同じ玉子豆腐が積まれている。豆腐屋でも始めたのだろうかという域だ。いきなりこんなものを押し付けられて納得して帰れる筈がない。家政婦達の前でいつも飄々としているネオンが見るからに疲弊しているのも気になったヨーコは、口を挟もうか迷っているガブリエラに目線で催促した。ガブリエラが控えめに口を開く。 「あのぅ、ネオンさん大丈夫ですか?」 「……だいじょーぶじゃ、ない」 「豆腐の幻覚がみえるらしいぜ。食いもんも全部口の中で豆腐になんだとさ。あとなんだっけ?飲みもんは豆乳になるんだっけ?」 「……ええっとそれは……大変ですね…」 「豆腐の神様に接触したのがキッカケなんだってよ。マジで先パイどーしちまったんだ、笑いが止まらねー」 はぁそうですか、と冷たく返事をして早々に話を切り上げたのはヨーコだ。 ケラケラ笑う男に何とも言えない表情をしている男、予想外の返答に言葉が出ないガブリエラをよそに、ネオンから押し付けられた段ボールを両手で抱えて一人出入り口へ歩いて行く。結構重量があるそれはここから持ち帰るのには辛すぎるが、この場の居心地の悪い空気から逃げ出して早く自宅で読書でもしたい。これ以上ここにいると無駄に長引きそうだ。最初こそ心配もしたがとんだ杞憂だった。そもそもなんで己が心配などしないといけないのか、豆腐神だのなんだの馬鹿馬鹿しい。豆腐に関わる何者かに嫌がらせされている事は間違いないだろうが、知ったことではなかった。幻覚も特に大きな問題とも思えない。気の所為だろうし。詳しい出所も確認していない、この貰った豆腐の安全性も疑わしいが、謎の症状に悩まされているらしいネオンを友人らしき男二人に託す形で早く去らなければ。 そんな同僚の思いまでは察せないだろうが、ガブリエラも慌てて自分用の段ボールを持ち上げてヨーコに続いた。ネオンの言葉通り受け取れば、本日の用事はこの段ボールの受け渡しのみなのだ。 「あ、あの、ネオンさんの症状、アグリヌスさんに伝えておきますね!お大事に!」 残された店内、先パイんとこのメイドは冷てーなーあんたが人望ないんだろうなーと笑いながら揶揄われるネオンだったが、珍しく言葉を返す元気もなかった為この日の店の営業はゴールドアッシュの髪の男が有料で手伝ったらしい。ダークレッドの髪の男も流石に彼女が可哀想になってきたのか、段ボール二箱分程自分で購入したとか。 ただその後店内の大量の豆腐達がどうなったのかは、少なくともこの家政婦二人は知らない。 </font> ────────────── 虚白の地、白き貴族邸らしき場所にて時薫様・アリシア様・トールディス様・クオル様とエンカ 混雑するので描写をかなり削りました。本当はもっとシリアスなイベントで突っ込まないといけないところは他に沢山ありすぎたのですが、そういうシリアスに突っ込む役はアリシアちゃんクオル様時薫様がいらっしゃるので、此方は気になる(ならない)玉子豆腐のその後ということで………。 サブ家政婦達はドン引きしてますが、話を聞いたメイン家政婦の方は"また悪霊にでも憑かれて……否、本当に神と接触出来るようになった……?"と無駄にシリアスな表情してそうですね。(まぁ元々ポーカーフェイスだし)そしてバカにしている後輩男も内心では大変な事になったと思ってそう。その神はゆるキャラですけどね。
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