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〜ハロリマス後、ユーリイ及びランドルフ様の会話的なの。情報提供的なやつ。回想〜 始めは何処まで話すか考えた。 これは自分が白夢だからとかではなく、下手に話す事で、巻き込む可能性がより高くなることが理由にもあった。 未だ五体不満足の状態で、ハロリマスを終えてすぐにデキソコナイ達が大半であった白夢達の送還に取り組んでいたところを機巧遣いの女副隊長からてっきり情報提供を求めにやってきたのかと思えば何故か治療施設へと強制的に送り込まれ、そこに居た同じくハロリマスにて自分同様あの悪夢の宴に強制参加させられ満身創痍になっていた本体の眼鏡が割れていたがもう替えの眼鏡を着けている男副隊長と同じ部屋に入院させられた。 なんか、すまん。的なことを言われたがお互い様だろう。決して相容れないが、この男にはこの男なりの信念、生きるうえでの筋が通っているから憎悪や嫌悪はない。 ただ、お互いの生き方が合わないだけだ。だから筋が通らないと思えば謝りだってする。 会話らしい会話はない。 包帯に巻かれ、点滴に繋がれながら白い病室で体を休めていたが、ふと向こうから切り出された。 ――白の断章(エフェメラルフラグメンツ)とは何だ?赤の門番(ゲートキーパー)と何が違う? こんな時でも職務に忠実とは恐れ入る。 元から情報提供の代わりに白夢を送り届ける約束だった。 この約束を交わしたのはあの知恵者の女副隊長であったが、この男も階級は同格。話しても構わないであろう。 ただ。 ただ、何処まで話すべきか。 これは情報提供を交換条件に出されたときから考えていたことだ。 自分は、白のアリスのやり方には反対の立場だ。 けれどもこれも白のアリスにとっては掌の出来事で、だからこそこうしてあの時即座に反旗を翻して剣を向けたというのに生かされているのであろう。そして、問題は此処からだ。 話すことで、折角一巡後とやらの世界で生きている者を余計なことに巻き込みかねない危惧があった。そして、恐らく、間違いなくこの病院にだって『空白』は存在する。 もし洗い浚い全てを話そうとすれば、忘却の彼方より空白が形を成して現れるであろう。 自分では、あの白の断章、空白失書を斃す手段がない。この魔剣で切り伏せる事はできるが、それだけでは駄目だ。無意味なのだ。 他の白の断章も然り。血塗られた惨劇を作り出す狂恋の荊棘であれど、どんな局地であれ開拓の破壊を生み出す撃砕の手であれ、嵐を引き連れし正体不明舟の魔砲であれ、■■■■の■であれ、全て空白を埋めるには程遠い。 あれは白の断章の中でも特異中の特異で、白のアリスや邪智のチェシャに限りなく近い立場と力を持つ正真正銘の白だ。 あれが余計、筋書きから逸したと判断して動かないように精査して此処で情報を渡さねばならない。 しかし、此方がすぐに答えを出さないうちに向こうから続く言葉は、思わぬものであった。 ――夏の夜、青憐にて縁結びの神による神隠しに巻き込まれ、そこであの白のアリスと呼ばれる少女と出会っている。 嗚呼、ならつまり、『もう手遅れで、巻き込まれている』わけか。 く、と小さく笑った。嗚呼、何というか、まあ。 「ならお前は知っておくべきだ。話せる範囲で話す。……お前、幸薄そうな顔しているが本当に幸薄いんだな。」 と余計な一言を付け足して。 「そう言えば赤の門番が白夢を操るだの統べているだの情報(ノイズ)があるんだったか。誤解も良いところだな。赤の門番は、俺も詳しくは知らないがアイツらは俺達とは対立関係にある。赤と白は決して相容れない。俺にとっては、『赤』は『私』自身だから複雑だがな。だが、目的が違うというのは確かだ。それだけは覚えておけ。そして、白の断章についてだったか。そうだな……お前らが何処まで正しく俺達を知っているか知らないが、簡単に言えば俺達白の断章はこの世界に単独では形を保てなかった忘れ去られた存在が、忘却された物語と迎合、融合する事で新たに再定義、再解釈する事で存在をこの世に定着させた白夢だ。」 そう、即ち。 幻想、空想、妄想。 夢、幻、虚。 俺達白夢は、『弱者』だ。存在の意味合いでな。これは白の断章に限らず、没書型白夢でも同じだ。 そして、そのような存在だからこそ、現の枠から外れた物語の中でしか存在し得ないような力を振るう事ができる。 「あとはそうだな、俺達はどうやら物語の『筋書き』に沿うように動いてしまう傾向にあるみたいだな。他の奴らの報告もこっちに入っているんじゃないか?確かあの時動いたのは最初から動いている空白失書と魔剣物語(おれ)を除いたら、『開拓伝記』、『大空航空史』、『悲恋忌憚』、『■■■■』だったからな。」 此方は話しているが、遠く黒の国でさえ認識阻害を受け聞く側には意味ある言葉として認識不能であるらしい。随分効果範囲が遠くまで及んでいるものだと分かったのは、彼から、何て言ったか分からない、とか、疲れているのか一瞬意識がぼうっとしていたとか説明途中で言葉を挟まれたからだ。 なら、間違いなく認識阻害を受けている。此方は此方で、下手に話すほうが逆効果だ。無理に話せばそれだけ向こうからも条件に引っかかる程正体にたどり着く情報が出ていると気取られてわざわざ此方に足を運んでくるかもしれない。 あれはどういうわけか、物語と混ざる過程で妙な言語を学んだみたいだがその根底にある異常な迄の徹底した臆病や病的と言える程の徹底して正体を掴もうとする者に対して容赦が無い。 自分が正常に認識しているのは、同じ白の断章だからなのか、それとも。 だからそこだけは話しを飛ばし、次の話題へ移った。 「……嗚呼、あと、赤の門番についてか。違いと言うなら、何もかも違う。何故そんな情報が出回っているかは知らないが、全くの別物だ。赤の門番が何故この世界に存在するかについてはアイツらに直接聞けとしか言えない。だから俺から言えるのは、アイツらは『門番というぐらいだから守っているのは、そういうこと』だってことと、『成り立ちから何まで白夢とは違う。』、そして『赤は善悪問わぬ強い意志や思い、感情といった心や精神に反応する性質を持つ。』だからアイツらは恐らく何か例え異物としてこの世界に残ってでも『やり遂げる必要がある意思か何かがある』んだろうなってことだ。……偉そうに言ったが、俺も詳しくはアイツらの素性や目的までは分からん。ただ、『私』は、少なくとも強い想いに惹かれ、その想いが形になったんだ。結局、想いだけで塗り固めて中身が空っぽでは目的と手段が狂ってしまって、本当の英雄(フブキ)に止められてしまったがな。」 これも嘘ではない。 赤の異形であった、かつての偽りの正義のヒーローであった『私』だが、だからといって赤の門番が何なのかは知らない。だから話せることは、かつて赤より生み出された異形の一体として、自分がそうであったように他の多くがそうであったからと赤に関する知識を教えた。 とはいえ、所詮己も赤の中では末端。結晶の守護者とかならもっと赤の詳細について語れただろうが。尤も、今は赤そのものが問題なのでなく、彼の質問で大事なのは赤の門番と白の断章の違いだ。赤、もう乗り越えたのだという実感がない脅威。自分がそうであったということもあって、何とも奇妙な感覚だが、一度赤の門番とも出会う必要があるとは思う。 わざわざ赤の門番とこの世界の者達の対立構造を作る為に、白夢を率いているだのなんだのというフェイクが混ぜられているあたり、不都合な存在なのだろうから。 もしかしたら、と。 そこから先も幾つか話しているうちに、一旦仕事を落ち着かせた女副隊長が彼の見舞いに来たのだったのか。 ――確か、あの時こんなことを話して、考えていたような気がする。今となっては、懐かしい思い出だ。
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