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君はお月さまであればいい。 霞の裾に、淡燈の帯を垂らして、それに捕まって泳ぐ金魚が僕でいい。 僕の住む世界を、外界から隔離して闇空で囲ってみたら、酸素だって軽くなって、僕には羽だって生えていたのかもしれない。 (今夜の月は明るいね。他の金魚も良く見えるね。) 濁紅の背鰭は、少し頼りなくなって、いつしか、ぱたりと前に進むのも、留まるのも止めるから、ゆっくり地面に着いて眠ろうか。 (はたまた陸に上がろうか。) 帯はきつく胸を締め付けるから、息ができないくらい。 なんとか一つ、大きな気泡ができたので、僕は其を星と呼ぶことにした。 それから、ゆっくりと炭酸のしゅわしゅわが空一面に広がるように、僕の体が消えてしまう気がしたから、ああ、きっと君はお月さまなんだ、と、確信した。 月明かりに照らされた隣の金魚に、羽が生えて見えた夜。 僕はまだ、重力に逆らって、拡散された不恰好な星を口許で突ついていた。 気泡が水面に到達すると、僕の鼓動が少しだけ外に聞こえる気がして、少しの間頑張っていたのは、ファンがとても静かに唸っているのを知らずにいたからなのかな。 (あれも、誰かの星。人工衛星の、星。) ねぇ。 優体離脱 しておいで。 ほら、また、帯が僕を、締め付ける、よ。
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