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インターフォンが鳴る。 諸々の勧誘から避けられている俺の部屋のそれを鳴らす相手は、本当に限られている。 少ない候補の中で、ロケ中の幽が消え、さっきまで一緒に居たトムさん、ヴァローナが消え、一度も顔を出した事がないお袋だろうかと首を傾げつつドアを開ける。 そこには、誰も居なかった。 悪戯か…いい根性してるじゃねぇかと目を細めた時、なんだかやけに聞き慣れた、気に食わない声が耳に届いた。 「ねぇ、悪い顔してないで中に入れてよ。外、寒いんだって」 実にふてぶてしい声の持ち主を探し、足元を見て絶句する。なんだこりゃ。ノミ蟲野郎が、本当に蟲サイズになってやがる。 いや、蟲よりは流石にでけぇ…か。 俺の足首くらいか? 「…なんだよ」 ジロジロ見ていたら睨まれた。 睨みかえそうと思ったが、このサイズの違いじゃ明らかに弱いもの虐めにしかならない。 首根っこを掴んで持ち上げる。 臨也だ。間違いねぇ。 「…お前、どうやってインターフォン鳴らしたんだよ」 「別に、なんだっていいでしょ」 よく見るとボタンの部分がへこんでいる。 辺りには、すげぇ小さいナイフ(一瞬、楊枝かと思った)が落ちているので、これを使ったんだろう。正直すごいと思ったが、言ったら間違いなく調子に乗るか、本気で俺の態度を気味悪がるかのどっちかだろう。どっちでもムカつくので、それ以上何かを言うのはやめにしておいた。 今キレたら、コイツなんか簡単に握り潰しちまう。 念願ではあるし、別に今ならやっても俺がパクられる事なくトイレかなんかに流しちまえば丸く収まる気もするんだが…まぁ、カタカタと寒さに震える小さい生き物と、あのムカつくだけの臨也が俺の頭の中では簡単にイコールで結びつかなかった。そう言う事なんだろう、多分。 ココアを出したら、熱いとか飲みにくいとか文句を言ったのでイラっときながらもスプーンで掬って、目の前に差し出してやる。 はじめは怪訝そうに俺の顔を見ているだけだったが、根気良く待ってみた。すると、恐る恐る湯気の立つココアに息を吹きかけ、スプーンを両手支えながらコクリと飲んだ。 「……あっま」 可愛くない。 本当に、ここまで可愛くない生き物もいないんじゃないかと思う。臨也だからか。そうか、仕方ない。 それでも、コクリコクリと飲み干して ほっとしたように息をつく姿を見るのは…まぁ、悪い気はしなかった。 二杯目のスプーンの中身を半分程飲んだ臨也は、うとうとと、時折首が揺れるようになった。 「…なんでテメェ小さくなってんだよ」 「ん…俺だって、わからないよ。仕事終わって、帰ろうと思ったら急に…」 「ふうん」 眠いからか、随分と素直に話す。 はじめっからこうなら、ほんの少し、友達みたいなものに俺たちはなれたのかもしれない。いや、そしたら俺になんかには、まず話しかけない…か。 「シズちゃんの家の近くだったから…なんとか、なるかなぁって」 「なんとかなってねぇよ」 うとうととしながら話す臨也が珍しくって、ついつい笑いが零れる。コイツ、半分寝てるんじゃねぇの? 「なったよ」 「……あ?」 「あったかく、なった」 へにゃりと笑った臨也は、なんてゆーか、反則だった。…その後も面倒を、見たくなってしまうくらいには。 枕が高いと文句を言うので、わざわざハンカチで枕を作ってやったのに人のシャツ握りしめて寝ているとか。 ワガママも可愛いなんて、初めて知ったかもしれない。 <font color="969696"> ミニマム臨也さんに、メロメロなシズちゃん。 </font>
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