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壁には灯台の内部を示した絵がかかっている。 上の部屋には大きなレンズがある。灯室のようだ。 灯台のレンズが放つ光。 私が持ってるどの指輪よりもそれはうんと大きいの。 手の甲を灯りに翳す。 下から吹き上げる風に髪が広がる。 私は光の女王。 Kはそう思い、螺旋階段を上がった。 しかし灯室の扉には鍵がかかり、開くことは出来ない。 Kの持つ鍵だけでは入れないようだ。 下の部屋のどこかに鍵があるかもしれないわ。 彼女は階段を降りると、部屋の棚や引き出しを探った。 棚にはいくらかの本があったが、地下室にある本とは違い、どれも言葉を読むことが出来なかった。 全ての棚を調べても、新たな鍵は見つからなかった。 Kは少し興ざめした面持ちで、ベッドに腰掛け、髪を解くと横たわった。 錆びたスプリングが軋む。 窓の外を鳥の群れが飛ぶ。 その鳴き声は厚い窓ガラスに遮られ、遠く聞こえる。 「隔絶された午後」彼女は呟いた。 横になりながら床に目をやると、擦り切れた敷物が目に入った。 日に焼け色はずいぶん褪せてしまっているが、海に浮かぶ島と鳥の図が織り込まれている。 灯台や岬、泉、それから薔薇の茂みと小屋のある島の様子からこの島を表しているようだった。 ここ以外に世界はあるのかしら。 Kは思う。 ”とら”は外から来る。それはどこ? この敷物にある大きな鳥に乗ってくるのかしら。 塔の中は静かで、答えるものはいない。 心細くなったKはショールを巻きなおすと、身体を丸め、目を閉じた。
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