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#人は見掛けに依らない * 「───俺を、肘掛けにしないでください!!」 とある日のよくよくある日常の一コマだった。ただ、その日は何となく。いつもよりちょっとだけ、その当たり前になってしまっている“それ”が、ほんのちょっとだけ、頭にきてしまっただけの事で──…。 「何だよ。お前、ちっせーから丁度いい高さなんだって。仕方ねぇーだろ」 「なんっにも、仕方なくないですよ! それに俺、別段小さくも何ともないですからねっ?! 言っときますけど!!」 「は? ちっせーだろ、現に……」 「平均身長ですよっっ!!!」 イノセントの腕を跳ね除けて、相手と正面から対峙する。170と少しの自分が180超えの相手を睨め付けるにはどうしても上目に見上げる形となり、それがまた腹立たしさを増幅させる。悔しさを滲ませ奥歯を鳴らすと、イノセントの薄っすらと細められた目許が嘲笑いを湛えているのが更にまた目についた。──何故、今日はこんなにも腹が立つのだろう。 「俺、もう行きますね!」 イノセントに対し、もうこれ以上の八つ当たりをしたくはなくて背を向けた。少し一人になって頭を冷やしたかった。 「…待てって」 伸びてきた手に簡単に捕まる。振り解きたかったが身長差、体格差以前に人外である相手の力は普通に強過ぎて。ただの人間である自分には、ちょっとやそっとで振り払えるものでもない。大きく深く溜め息を吐き出して、やけに苛立っていた気持ちを一度抑え込む。 「──あの、」 「あー! 居た居た、ペテロ〜!!」 「あ?」 「……?」 廊下の奥、向こうの方から聞き覚えのある声がした。 「…何だ、お前ら。揃いも揃って。今日、何かあったっけか───?」 「いやさ。ロキくんは別だけど、俺とアスターくんの野暮用がたまたま重なったから、その序でっていうのかさ。君の顔も見ていこうって話になって」 「はあ〜? 何だよ、それ。大した用もないなら、こんな場所で偶然だろうが何だろうが無駄に鉢合わせんなっつんだよ。…物騒だな、おい。散れ散れ」 「まぁーねぇ〜〜」 タナトス、ロキ、アスター。そして、ペテロ──…イノセント。錚々(そうそう)たる顔ぶれに優人はたじろいだ。 「……俺、席…、外しましょうか………」 「あ〜? 直ぐ帰んだろ、あいつら。いーいー」 「で、でも……」 「なーに? ケンカぁ〜??」 明白(あからさま)に面白がっている様子でタナトスが優人達の元へと歩み寄ってきた。 「──こいつが『俺が小さいんじゃなくて、イノセさんが大き過ぎるんですぅ〜〜!!』っつって聞かねぇんだよ。どっちでもいいだろ、別に。興味ねぇー」 「ああ、もうっ!! ほらまたぁ! そーやって人の頭、直ぐに“顎(あご)置き”にする…!!」 「仲睦まじいな」 「睦まじくないです、全然っ!」 「ねー? アスターくんもそう思うよねー」 「お前と、お前のとこの使い魔との関係にも似ている。…人型の時の」 「あー、ゼノ? まあ、何やかんや言って仲は悪くないかなぁ〜??」 眼前に立ち塞がるタナトスとアスターを優人は見上げる。 (こうやって見ると、やっぱ皆、デカイ……。魔物…、魔族…なんだもんな。当たり前、か………) きっと、張り合う事自体がお門違いなんだ──…。 「どうした?」 「何でもありません」 「?、」 「俺が思うには“扱い方”の問題じゃないのか?」 タナトスの後方へ居たロキがこちらを見遣っていた。 「──世の中、同族に対しても“体”の大きい小さいで人を見下してくる奴は確かに居る。そこの“腐れツノ”が、いい例だな…」 「…え、俺? ナニ…、何で急に俺の話?」 「飽く迄も“互角”の相手に対し、息を荒げ、時に襲い掛かってくる事がある」 「あ、ちょっと…。流石にこの面子の前で今、その話はそのっ………」 「だが、事実だろうがっ──!!」 ──ゴッ!!! 「いっだぁー?!!」 ロキに懐から取り出した“神殺し”の銃にてぶん殴られ、タナトスはその場へとひっくり返った。 「“見てくれ一つで人を判断するな”と言ってやればいい。力に物を言わせてきたのなら、ねじ伏せてやれ。こんな風に───、」 ──ガチャッ……!! 「待って待って待って、ロキくんっ!! 待って、俺、死んじゃう──!!」 「……あいつ、さっきもロキにセクハラしてたからな。ロキの奴も口実がてら、一回、絞める気なんじゃないかタナトスの事?」 「極めて普段通りだな、あいつら………」 呆けるアスターとイノセントの元、優人だけはキュッと口許を引き締める。 ──バッ!! 「あ?!、オイッ!! おまっ、何処行く気だ───!!?」 「ロキさんっ…!!」 「うん?」 「ありがとうございます! 何だか俺、吹っ切れた気がします!」 「……そう、」 ロキは穏やかな顔でにっこりと笑った。 「…身長も体格差も関係ない──、強く在ろうと己に誓えば、ただ何もせずに嘆くよりもきっと、強くなるべき道を真っ直ぐに突き進めるような気がします。」 「──ああ、」 「創世(そうせい)の魔物の四人衆の中で、ロキさんが他の誰にも引けを取らないっていうこの事実。凄くカッコイイって思うし、ロキさんの事、勝手に俺、尊敬させて貰いますね!!」 「あはは、尊敬だなんて。──ネコくん、ちょっと待っててね。今、コレ仕留めたら三階の食堂にでも行ってゆっくりお茶でもしながら話そうじゃないか」 「はいっ」 「───ちょちょ…!! ロキくん?! 待って、ダメだよ?? 俺の事、仕留めるとか冗談がキ、ツ……」 ──パーンッ!! 「ギャー!! この人、本当に撃ったぁあああっっ…!!?」 「……ロキって、“人型ん時”は確かに俺らの中じゃ一番“小せぇ”のかも知れねぇーけど」 「俺は奴の“もふもふ”の上が、なかなか好きだ────」 終
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