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#000『それに名前をつけるなら』 『この雪。冷たくないんだな』 『・・・おじさんだあれ?』 『おじさん、じゃなくて。お兄さんね』 『お兄さんだあれ?』 『内緒』 『どうして、まふゆの領域にいるの?』 『君に会いに来た』 『まふゆに?』 『なあ。雪って。本物は冷たいんだよ』 『冷たいの?』 『冷たくて寒いの』 『まふゆの雪は、寒くないし、冷たくないよ』 『君が知らないからだろうね』 『そうなの?』 『多分』 『お兄さんは、どうしてまふゆに会いに来たの?』 『見たことがなかったから』 『そうなんだ』 『そう』 『まふゆはね、パパとママを探してるの』 『見つかりそう?』 『ううん。でもね、魔法使いさんがね「ゆめ」を持ってたら、そのうち会えるって言ってた』 『・・・そっか』 『まふゆのゆめは、かぞくみんなで、ご飯食べることなの。ほんとは、もっといっぱいあるけど一番はそれかなあ』 『じゃあ、練習がてら。俺と一緒にご飯食べる?』 『練習するの?』 『必要なら』 『必要かなあ?』 『君は、どうしたい?』 『・・・難しい』 『困ってるね』 『魔法使いさんも言ってた。大事なのは、まふゆがどうしたいかなんだって。でも、まふゆに決めるのは難しい』 『ああ。善悪の基準が無いからね』 『練習した方がいいかなあ?』 『予行練習って。案外役立つよ』 『そうなの? じゃあ、やってみる。よろしくおねがいします』 『オッケー。ならお手を。お姫様』 『まふゆ、お姫様じゃないよ』 『そう? 俺にはそう見えるけどな』 『なんで?』 『さあ。何でだろうね』 温度の無い真っ白な雪。 無知から形成された虚無の世界。 破るのは容易く、彼女が如何に 不完全な存在なのかがよく判った。 造り物。紛い物。まさしく出来損ない。 けれど差し出された小さな手は柔らかく まるで人間のようだった。 『ねぇ。お兄さんは、誰なの?』 『タナトスって。言うんだ』 『たなとす』 『そ』 『たなとすは、まふゆのパパとママの事、なにか知ってる? パパとママ見たことある?』 『あるよ』 『ほんと?』 『うん。だから君を見にきた』 『パパとママは、どこにいるの?』 『内緒』 『どうして?』 『まず、予行練習するって言ったろ? 君は何も知らない。わかってない。それじゃあパパやママをガッカリさせちゃうかもしれないよ。そんなの嫌だろ? だから、少し勉強して。それから会っても遅くないんじゃないかな?』 『勉強するの?』 『嫌なら無理強いしないけどね』 『・・・まふゆが勉強したら。パパとママ、喜ぶの?』 『賢い子なら親も鼻が高いんじゃないか?』 『・・・。じゃあ、がんばる』 『あはは。単純だな』 断罪者の羽。悪道の血。あとは寄せ集め。 実に質の悪い危険分子だ。 あの世界に存在する『人形師』の 技術によって製作された傀儡。 生命への冒涜に他ならない。 あいつらの色恋沙汰に ついて回る不都合の一環だが これまた少し依怙贔屓をした。 世界は異なれども。自分と愛すべきものの 子供だと思えば、多少。甘やかしたくなる。 俺の中にさえ、そんな感情があったのだと知って これじゃあ揃いも揃って悪魔失格だな、と 少しばかり、落胆したけれど。
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