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#000『彷徨える傀儡と魔女の困惑』 『───つまり。両親を探してうろうろしていたら。偶然、吉崎と出会って、ここを紹介された訳だな』 『うん。じげんとうなら力になってくれるって』 『まったく。うちは興信所じゃないんだがね』 『こうしんじょ?』 『まあ。いい。で、マフユ。君はその「両親」に会って何がしたいんだ?』 『わかんない』 『・・・判らないのに会ってどうするんだ?』 『どうしよう?』 『・・・ふむ』 その日、私の穏やかなティータイムを ぶち壊したのは少し異質な訪問者だった。 白い羽を生やした幼い少女。 稚拙で悪意は無く。ただただ無垢。 偏に『両親に会いたい』と言う。 親を探し回る子供。けれど それが一目で『不穏』だと わかってしまうのが少し悲しく思えた。 『目的を果たすには理由付けがいるよ。それが紛れもない、君自身の意志だと言うなら。ちゃんと理由を作らなきゃならない。君を「作った人」とやらがインプットしたものに、ただ従うだけでは報われないよ。君が、何をどうしたいかが大切なんだよ。マフユ』 『大切なの?』 『ああ』 『・・・じゃあね。じゃあ、ママにぎゅうってされたいなあ。あとね、パパと一緒にお昼寝したい』 『ほう?』 『それとね、パパとママと。ごはんが食べたいなあ。本で見たの。かぞくは、みんなで一緒にごはんを食べるんだって』 『・・・そうか。それは。素晴らしい目標だな。それなら、きっと。君の両親も喜ぶと思うよ』 『パパとママ喜ぶの? なら、まふゆも嬉しい』 己が何者なのか。何故、両親に会いたいのか それすら判らない哀れな『傀儡(かいらい)』 彼女を造ったものが凡そ碌でもない奴なのは すぐに見当がついた。 吉崎が、彼女を此処にやったのは もしかすると本能的に 彼女を救おうとしたのかもしれない。 自分とよく似た『紛い物』を。 『魔法使いさん』 『ん?』 『まふゆのパパとママ、どこにいるかなあ? いつ会えるかなあ?』 『・・・残念ながら。私にも判らないが。君が、もし。今日描いた、その「夢」を。ずっと。大切に持ち続けたら。そのうち、会えるんじゃないだろうか。純粋無垢な願いと言うのは。運命を引き寄せるものだよ』 『ほんと?』 『ほんとさ』 『じゃあ、もっと頑張る』 『ああ、そうだね。偉いな。君は』 『ありがとうございました』と 小さなお辞儀をする彼女は 私の提示した答えに満足したのか 嬉しそうに微笑んで そのまま、姿を消した。 ひらりと一枚。白い羽を残して。 『・・・』 『───何故。あの娘の両親を探してやらないんでやす、愁水?』 『烈将・・・聞いてたのか』 『目に入りゃ、ひとまず誰でも救おうとする貴女が。はぐらかすなんて珍しい』 『彼女の両親は。ツガイドリだ』 『・・・あー。それはそれは。愛もそこまで行けば大したもんでやす。まさか男同士で子を成すとは。いやあ奇跡でやすねぇ』 『馬鹿言え。魔物じゃあるまいし。有り得ないよ。あの娘は確かにあの二人の遺伝子から形成されてるが、子供じゃない。傀儡(デク)だ』 『操り人形でやすか』 『ああ。人間のなり損ない。何を媒体にして作られたのかは判らないが。とても質の悪い存在だよ』 『・・・危険分子だ、と』 『悲しい事にね。だが、まだ目醒めていない。彼女が脅威になるなら処分すべきだろう。けれど。今は。あまりにも無垢だから。汚したくないと思った』 『子供に甘いのは貴女の甲斐性でやす。悪いとは思いやせん。が、ほどほどに』 『そうだな。けど。一番悪いのは。そういう無垢を平気で利用する、腐れたゲス野郎共だと思うのだがね』 『ええ。それは、同感でやす』 『こう言う事をするのは大体。神気取りの思い上がった愚か者だ。それが誰なのか。なんとなく察しはつくが。きっと、奴が何とかするだろうさ。私が出る幕じゃない』 『タナトスですか? どうでしょう? 彼、なかなか薄情でやすから』 『いや。あれでいて、なかなか愛が深いぞ、あの男は。それを認めたがらないだけで。その気になれば、いい結果を出す筈だよ』 『何故そう思うので?』 『同一存在の方を、見てたらわかる。あの狂気は偏に愛情から来るものだ。質量が尋常じゃない』 『あー。つまり独占欲が異常で。執念深くて、しつこい男だと?』 『まあ。悪く言ったら。そう言うことだね』
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