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#000『傀儡と竜の些細な邂逅』 その日は、何だか妙に怠くて 夕方からベッドに入った。 多分、体質から来る不調。 年がら年中満身創痍の俺が こうなるのは、そんなに珍しくない。 時計はPM4:15を表示してた。 瞬く間に微睡んで意識の底へ。 だからきっと。夢だったんだと思う。 はっきり『夢』だと言い切れないのは 何となく。得体の知れない『何か』が 見え隠れしていたから。 それが何なのか形容出来ないから 不思議な夢だった。 で、片付けてしまう訳だけど。 『だいじょうぶ?』 『・・・え?』 『具合わるそう』 『え、と』 『どっか痛いの? 病気?』 『いや・・・えーと。君は? つか、此処どこ? 今の時期に冬景色って。時幻党じゃないよな・・・俺、部屋で寝てなかった?』 『寝てたから連れてきた』 『・・・』 『ここは、まふゆの領域。おうち帰りたい?』 『・・・いや、うん。帰りたいけど。その前に。まず、君は誰?』 『まふゆ』 『まふゆちゃん?』 『うん』 『そっか。じゃあ。まふゆちゃん。君は何者? 何か背中から羽生えてるみたいだけど、天使とか、そーゆー感じなのかな?』 『違うよ』 『じゃあ何?』 『まふゆはね、まふゆ』 『答えになってねぇんだよなあ・・・』 『まふゆはね、パパとママ探してるの』 『ん? パパとママ? 迷子?』 『そしたらね、大きなとかげが具合悪そうにしてたから、見にきたの。病気かなって』 『とかげ!?』 『うん』 『俺が、とかげに見えたの?』 『うん』 『・・・とかげ・・・一応、竜なんだけどなあ・・・』 『りゅう?』 『あ、いや。まあ。つまり俺を心配して見にきてくれた訳だね。ありがと』 『具合なおった?』 『お陰様で治ったよ』 『良かった』 『で、まふゆちゃんは。何で両親探してんの? 迷子か何か?』 『わかんない』 『は?』 『わかんないけど、まふゆはパパとママに会わなきゃいけないの』 『判んないの?』 『うん。りゅうは、まふゆのパパとママ知ってる?』 『どんな人?』 『ママはとっても綺麗で優しいの。パパはとっても強くて何でもできるの』 『ヒントが少ねぇなあ・・・』 『まふゆも、それしか知らないの。でもね、会ったらわかるよって。誰か言ってた』 『・・・誰か?』 『まふゆを作ったひと』 『え? それはパパとママじゃないの?』 『違うよ』 『うーん、何か複雑だな。俺には難解な話かもしれねぇ』 まふゆちゃんは。俺の隣に座って 『パパとママどこにいるのかなあ』と呟いた。 色白で。髪はサラサラで。 人形のように無機質な瞳をしてる。 人じゃないってわかるのは 人間特有の気配や匂いを感じないから。 背中に生えた四枚の白い羽は。 天使を思わせる。 本人は違うと言うけれど これは。多分。そういう類の『何か』 『じゃあさ。まふゆちゃん。時幻党に行ってみなよ。あそこなら君の力になってくれるかもしれない』 『じげんとう?』 『誰かに会ったら。吉崎から聞いたって言やぁ、何とかなるよ・・・多分(最初に会うのがゲス魔王とかでなければ)』 『りゅうは、よしざきって言うの?』 『そうだよ。水鏡吉崎。だから、俺が「竜」って言うのは内緒ね』 『内緒? うん。わかった。言わない』 『君の両親、早く見つかるといいね』 『うん』 そう、頷いて『ありがとう』と笑った。 何処かで見たような。そんな顔で。 誰かに似てると思ったけれど それが誰なのかは。判らなかった。 彼女が実在するのか、俺の夢が作り出した ただの幻影なのかも定かじゃないが 気がつくと。俺はやっぱり 自室のベッドで寝ていた。 『・・・夢、か?』 鮮明で、けれどどこか突拍子もなくて。 不思議な余韻に包まれる。 ふと、ベッドサイドの時計に目をやると。 『PM4:20』と表示されていた。
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