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#000『時は今も微睡みの中に』 度々訪れる、どうしようもない現実に。 誰か、助けてくれと叫びたくなる。 何処かで誰かの心が潰れて 痛んで、傷んで。やがて歪み始めても 世界は変わらず平穏を演じる。 行き交う人の群は、今日も時間に追われ 他人の悲劇など。目にもくれない。 爪弾かれた『異端』が。 どれほど悲鳴を上げたって 救済は、やって来やしない。 『そこから、飛び降りたら。きっと少し楽になりますよ。気休め程度には』 『・・・まぁ、そうだろな』 『そうも簡単には行きませんか。そこから飛び降り無い事と。生きたいって意思とでは、同義じゃ無いんでしょうけど』 『・・・むしろ。アンタには、無かったのか? 死にたくなるような日』 『そうですね・・・絶望の根元って。何だと思います?』 『・・・?』 『希望が絶えたんですよ。希望がある人間だったら。死にたくなる日だって大いにあるでしょうね。そう言う積み重ねと言うやつが。人の心を破壊する。私は、途中から人間らしくある事を諦めて、全て投げ出した』 『あー。糞だな。与えられて来た「救済」は省みなかった訳だ』 『ええ。優しさも。愛も一通り知ってますよ。希望があれば。それに気付ける。きちんと与えられもしましたから。それでも。憎悪、嫉妬、悪意の方が。全てを上回った。希望を「奇麗事」だと割り切れてしまった。だから私は「絶望」なんです』 『・・・中二かよ』 『でも、貴方なら判るでしょう、指揮? この世界に蔓延した、身を焼かれるような痛みは。悲劇は。人類平等を謳うクセに、決してそれを掲げてはいないって』 『さっぱり判んねぇって。言いたいけどな。判るから、此処に居んだろうさ、俺も』 『私はね、指揮。みんな平等に悲しければそれでいいんです。かつての私と同じように。痛んで。傷付いて。吐き気がするような、この現実に打ちのめされて。消えて行けばいいって。それが。私の理想です。綺麗なものは何にも無い。真っ暗な世界。いつか、誰もいなくなって。浄化出来たなら。また一から築き上げますよ。私が無くして来たものの全てを、そこに』 『うーわあ。さぞ、つまんねぇ世界になるだろうな、それ』 『今の方が、余程』 『そーかい。アンタとは気ぃ合わねぇなあ、やっぱ』 咥えていた煙草を踏み潰して。 壊れた腕時計に目をやった。 4時45分で止まったままの時計。 レンズはひび割れてて。秒針が曲がってる。 『何があったか』なんて。 自分だけが判ってりゃいい。 何があって、何を背負ったのか。 何を捨てて、何を諦めたのか。 誰にも痛み分けなんざ出来やしない。 柵の向こう側、広がる青空。 白々しく。風が吹き抜ける。 此処にある悲劇を。絶望を。誰も知る由は無い。 全部壊したら。確かに、楽だろうさ。 何にも無けりゃ、痛む理由も生まれない。 でも、きっとな。俺は アンタみたいに割り切れねぇから。 『・・・さて』 『何処へ?』 『・・・俺は。何にも無くなった世界から。俺も消えて無くなるのが一番の理想だね』 『それは無意味と言うものです』 『俺が愛して来たものは。全部。記憶の中に眠ってる。それで充分だ』 『その記憶が。貴方を殺そうとしてるのにね』 『・・・俺は。アンタと違って。弱くてどうしようもない「人間」なんだよ。白羅』 柵を越えて。ダイブした。 人離れたした。身体能力も 魔の域に達した特殊な能力も。 俺を『人間』と、形容する事に 躊躇いを生むけれど。 絶望を抱えたまま、雑踏の中に溶け込んで。 何食わぬ顔をして。その群集に成りすます。 破壊の先にあるものなんて たかがしれてるのに それ以上の、何を願うんだよ。
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