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6/29 PM12:21 PCモニター越しにぼんやりと2人の痴態を眺める。モヤモヤと黒い感情が渦巻くのを堪えるのは辛いものだ。 ふと、初めて会ったときのことを思い出した。 冷やかしのつもりで訪れたオープンキャンパスの最中。そこで夏希先輩に初めて出逢ったとき、私は彼女に自分と同じ匂いを感じた。 他人との過度な接触を避ける、日陰者の匂い。 しかしながら、出逢ったとき見せた笑顔には…まるで人を引きつけるような晴れやかさがあった。 陰と陽。異なる性質を併せ持つ、不思 議で魅力的なひと。私は恋に落ちていた。 だけど彼女には一人の男の影がちらついていた。 片倉直人…素性も知らないその男を、始めは敵視した。 憎き恋敵、乙女を貪る狼。そうに違いないと決めつけた。 それからというもの、私はあらゆる手段を用いて彼のあら探しを始めた。 過去を丹念に調べ上げ、執拗に後をつけ回し、あげく盗聴器に隠しカメラまで仕掛け、化けの皮を剥がそうと躍起になった。 そして、何一つ見つけることはできなかった。 伝わってくるのは、彼の夏希先輩への真っ直ぐな想い。好きという気持ち。 私は夏希先輩のことがひどく羨ましくなった。自分もこの人のように愛されてみたい、と。 しかし同時に不憫にも思った。生まれ持った体のせいで、あの人は目の前の好意を受け入れることを躊躇っている。 私はどうしたらいいか、一人で悩んだ。このまま放っておいてもただいたずらに時を重ねるだけ。 かといって、変にけしかけでもすれば、二人の関係はたやすく壊れてしまうだろう。 いらぬ世話かも知れないけれど、好きになった人たちのために何かしてあげたくて、あれこれ考えを巡らす。 愛し合う二人が結ばれぬ運命だというなら、運命をねじ曲げれば… とんでもない暴論だ。少なくとも一人の男性の将来をぶち壊す、残酷すぎる考え。 それでも私は二人がいつか離れ離れになるくらいならと、計画を練り上げ組み上げてゆく。 私は製薬会社の社長を父親にもち、父は私の体を治すためにある新薬を極秘に開発していた。 服用するだけで性別を入れ換える薬。残念ながら研究は難航し、男を女にするだけの失敗作しかできなかった。 しかし、私はこれを千載一遇の好機と捉えた。あの薬を使えば、二人を結びつけることができる…! 薬を飲ませ、片倉直人という男をこの世から姿を消し、その記憶だけを継いだ女を残す。 そして、生まれ変わった彼を先輩と会わせてそれで終わり。 …果たしてそううまくいくだろうか?浅はかすぎやしないかと思い返す。 念には念を。彼に、女としての新しい体に慣れさせる必要がある。 そして先輩を受け入れさせるため、女の悦びを教え込まなければならない。 ふたなりの体に慣れさせる… 誰のために? 私の中には、いつしか邪な考えが芽生えていた。 二人のためと言いながら、その実やることは自分の肉欲と劣情を吐き出すだけ…そんな風に感じられた。 だってそうだろう、女になった彼の体に触ったとき、私はその柔らかさに心奪われた。 彼に私の猛りを突き入れたとき、二人の恋の行方などどうでもよくなっていた。 目の前の雌を貪ることしか考えていない、醜い獣。 それこそ私ではないか。 この計画は、実際のところ自分本位の身勝手なワガママでしかなかったのだ。 今だって嫉妬と羨望が膨れ上がるのを抑えられずにいる。 二人が何も思い残すことなく私の元を去れるよう、彼にはあえて意地悪く接してきたのに。 私が二人を欲しては、意味がないのに。 欲しい。二人が欲しい。 二人を、私のモノにしたい… 不意にコンコンとドアがノックされる。 「ご主人様、お茶をお持ちしました」 あかりちゃんの声…今日は彼女に頼んだのだった。 「開いてるわ、入って」 私はこのまま彼女を招き入れることにした。 一方的に巻き込んで悪いとは思うが、彼女もこの計画の立役者。存分に働いてもらわねば。 うまくいけば彼女にも優しい姉が二人もできるのだから、悪い話ではないだろう。 私は意地の悪い笑みを浮かべた。
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