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「ぐ…ッ…がはっ…痛…つ〜…」 地面に叩きつけられた背中を抑えて蹲ってみても、あまりの痛みにじんわりと滲んだ涙は引っ込んでくれない もう帝都へ来て何度目かになるこの無意味な挑戦は、いつも同じ結果で終わってしまうのだ ────… 雲ひとつない眩しささえ感じる月明かりの空の下で、夜空よりも暗い翼を拡げ飛び立つ。上へ、上へ…高くなるにつれて風が道を作り、もう羽ばたく必要がないと思えるくらい身体を上へと運んでくれるのが心地いい そして風の気配がほんの少し変わる時… 全身に刻まれた鎖の刻印は、まるで実体があるかのように…重く…冷たく…四肢の自由を奪っていき、漆黒の羽は飛ぶことを諦め動きをぴたりと止めてしまう もう少しで何か掴めそうな…そんなもどかしい気持ちを抱え、見えない鎖に引っ張られ下へ、下へと墜ちていく …───で、今に至る。 『懲りない奴だな、お前も』 蹲ったまま悶絶していたら不意に聞こえた声 そろそろと視線を向ければ、心底呆れ返った眼差しで見下ろされている。特に待ち合わせている訳でも、彼が望んで俺の元に来たわけでもない…たまたま居合わせただけ。いつもそうだ 「覗きなんて悪趣味じゃない?」 とりあえず悪態 『好きで見ていた訳じゃない』 「手を差し伸べるくらいしてくれても良いと思うけど」 ただ見下ろしているだけの男に嫌気が差して言ってみる 『あぁ…それもそうか』 全身はまだズキズキと痛みを訴えていて辛い。まぁ、自業自得 笑顔で差し伸べられる手 『─では、今夜の食事代は貴方持ちにしましょう』 「げっ!?それは無理───…」 ─金欠なのに! 言おうとした所を男の声が遮る 『なんだ。自分で起き上がれるんじゃないか』 「あ。」 痛みすら忘れてしまうお金の力はやっぱり凄いと思う。こうして偶然出会ってしまった時、決めている訳ではないがいつしか食事を共にする様になっていた。もちろん相手持ち。今…いや、常に収入の乏しい自分としては滅多に無い有難い機会なので何も言わない 渋々重たい身体を自力で起き上がらせ立ち上がる様を、この大変意地の悪い男はクスクスと可笑しそうに眺めているのだから恨めしい …ただ、 醜態に向けられる笑みこそ同じでも、ここ数年で彼の笑みには穏やかさというか温かさというか…そんなものが感じられるようになった気がする 大切なモノを得る事を頑なに避けていた彼に、何か良い変化でもあったのだろうか? ふとそんな考えが過る 「今度紹介してよ。君の大切なモノ」 思った事がよく口に出てしまうのは俺の悪い癖。ほんのちょっと鎌をかけるつもりで 『それは無理だ』 「どうしてさ?」 『沢山あるからな』 「そっか」 このままで良いとは思っていない。でも、進むべき方向が間違っていたとしても…1歩でも前には進めているのだろうか? 他愛のない会話を交わしてその場を立ち去る とある日の夜更け、 帝都の一角で 確信に触れたら崩れてしまう程弱く脆い関係 昔昔、 罪を犯した堕天使と その血をひく吸血鬼 ───…End
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