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k
MとKに関する記録
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06-21 01:02
「サーカス」


地下室には小さな劇場があった。
Mがどこかから見つけてきたネジを差し込み回すと、赤い緞帳が上がった。

舞台の両端には鳥の頭をした踊り子がいる。
キシキシと音を立て、ぎこちなく赤いくちばしが動き、人形は歌いだした。

舞台にかけられたスクリーンに幻燈が映る。


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06-21 00:56
KとPの断絶

コウ、オウラ、ポーナ、ケイ、エッラ、エナ




MとZの脱解

ミット、ミュゼ、ゼラ、イゼル、トウ、エム

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06-20 01:08
壁には灯台の内部を示した絵がかかっている。
上の部屋には大きなレンズがある。灯室のようだ。

灯台のレンズが放つ光。
私が持ってるどの指輪よりもそれはうんと大きいの。
手の甲を灯りに翳す。
下から吹き上げる風に髪が広がる。
私は光の女王。

Kはそう思い、螺旋階段を上がった。
しかし灯室の扉には鍵がかかり、開くことは出来ない。
Kの持つ鍵だけでは入れないようだ。
下の部屋のどこかに鍵があるかもしれないわ。
彼女は階段を降りると、部屋の棚や引き出しを探った。
棚にはいくらかの本があったが、地下室にある本とは違い、どれも言葉を読むことが出来なかった。

全ての棚を調べても、新たな鍵は見つからなかった。
Kは少し興ざめした面持ちで、ベッドに腰掛け、髪を解くと横たわった。
錆びたスプリングが軋む。
窓の外を鳥の群れが飛ぶ。
その鳴き声は厚い窓ガラスに遮られ、遠く聞こえる。

「隔絶された午後」彼女は呟いた。
横になりながら床に目をやると、擦り切れた敷物が目に入った。
日に焼け色はずいぶん褪せてしまっているが、海に浮かぶ島と鳥の図が織り込まれている。
灯台や岬、泉、それから薔薇の茂みと小屋のある島の様子からこの島を表しているようだった。

ここ以外に世界はあるのかしら。
Kは思う。
”とら”は外から来る。それはどこ?
この敷物にある大きな鳥に乗ってくるのかしら。

塔の中は静かで、答えるものはいない。
心細くなったKはショールを巻きなおすと、身体を丸め、目を閉じた。

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06-12 20:50

階段の突き当りには扉があった。
取っ手を掴んで押すと、きしみながらも容易に開いた。

小部屋には昔、誰かが住んでいたのだろう、ベッド、机、本棚があり、床には擦り切れた敷物が敷いてある。
壁づたいにまた階段が続いている。


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06-12 17:27
夜、最後の食事を取る。
空になった缶詰を、いつものように沈める。
夕凪の海に缶は静かに沈んでいく。
ずっと下の方に何か過ぎるものがあった。
レペだ。
小さいレペが缶に触る。
息をかけてみたり、尾で跳ね上げたり、一人で遊んでいる。
次第に日が暮れて、底が見えにくくなってくる。
目を凝らすと、ちらりちらりとレペの鱗が光るのだけが分かる。
「そろそろいきましょう」Kは言い、船を出した。
水のうねりに気づいたのか、レペがちらりとこちらを仰いだ。
銀色の目だ。あれは、わたし、知っている。
「M」
名を呼ばれ、振り向くと、Kが空を指していた。
大きな光る鳥が、現れては消えた。

海の暮らしは今日で最後。


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06-12 00:49
昨日”とら”が来た。

日記に書いてあった通り。図鑑で見た形とは違うけれど、これはそう、きっと”とら”よ。


”とら”は床に倒れたKを抱え、ベッドへ運んで寝かせた。
私はずっと”とら”を見ていたけれど、”とら”は少しも気にしていないようだった。

”とら”はKの寝間着の腕をまくると、肩に何かした。
Kは目を覚まさない。
Kに布団をかけると、”とら”は私の腕を取った。
引こうとしても動かない。
Kが起きてくれない。”とら”の顔がぼやけていく。
肩に針が刺さった。
「言いつけを守らないからこうなる」”とら”が言った。
それから”とら”は私を抱き上げベッドへ寝かせた。
”とら”はヒジ草に似た匂いがした。

布団に潜り、涙を拭っていると、”とら”が出て行く音がした。

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06-11 23:53
彼女と泉へ行く
虫に刺されないように、ヒジ草を潰して汁を手足に塗る。
ヒジ草のつんとした匂いが好き。
私達は緑色になる。

*

泉の温度は時々変わる。
あまり冷たいと溺れてしまうから、膝まで浸かるくらいにしておく。
そのときは、スカートを下着にはさんで歩く。
泉の中には小さな花が咲いている。
それを見に行く。

*

今日の水は温かった。
私達は服を脱いで泳ぐことにした。


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07-04 22:34
明るさに目を覚ました。
閉め忘れたカーテンから月光が差している。

彼女が部屋にいないことに気が付く。
どこにいるのだろう。耳を澄ませて探る。
台所で音がして、足音が廊下を抜けて外へと続いた。

起き上がって窓から覗くと、砂浜に影が見えた。
波打ち際で、足を濡らさない様に一人遊びをしているみたいだ。
波を追って、寄せたら逃げて、踊っているようなその影。

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07-04 22:25
遠くにKがいるのが見えた。
岬の近く、岩だらけの寂しいところ、あんなところでしゃがんでいる。何をしているのだろう。

風で結わえた髪が乱される。はやくkに結いなおして欲しいのに。
「K−」名前を呼ぶ。
「K−」風のせいで届かないみたい。Kの頭上をカモメがたくさん飛んでいる。
いつかの大きな魚が流れ着いたときみたい。
大きな魚は、すぐ食べられてしまった。
鳥はいつも飢えている。

Kの長い髪が風に煽られている。K、私はここよ。

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07-04 21:13
「櫂」

浜辺に小船が流れ着いていた。
長い旅になるわ、お別れを言わなくちゃ。
二人は窓を閉め、部屋の一つ一つに花束を置き、床に口づけしていった。

船には毛布と水と缶詰を積めるだけ積んで、集めた花の種を袋に入れ、首から下げた。

家には鍵をかけない。
流れ着いた人が困ってしまうから。

最後に波打ち際で踊ってから、島を後にした。

交代で船を漕ぐ。
海は凪いでいて、曇り空のドームの下を、彼女の歌と櫂の音が流れていく。
ときどき都市のまぼろしと水妖を見た。

夜は船底で丸くなって眠った。

幾日も二人は船を漕いだ。

夜の海で遠く、何かが光る。
「あれはなに」彼女は聞いた。

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