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相互記念(たにし様)
ないしょ話

「お金ない。家賃足りない。生きていけない」

ぐったりとカウンターに身を預けて、ルーシィはごちた。いつもの気配が近付いてきているのはわかっていたので、盛大に溜め息も付けてやる。先週の仕事で報酬が大幅に削られたことを、少しは反省してよ、と願いながら。

「大げさだね、ルーシィ」

予測範囲である冷めたハッピーの声に、

「生きてけねぇのか!?」

焦ったようなナツの声が重なった。心配は嬉しいが、言葉を素直に受け止め過ぎだろう。馬鹿にしてくるかと思った彼の意外な反応に、ルーシィは慌てて振り返った。

「いあ、ごめん、言葉のアヤで、」
「知ってる」
「そういう奴よね、アンタ!」

ナツ達はルーシィが喚くのもお構いなしに、隣の席に腰を下ろした。ハッピーはカウンターテーブルの上に、だったが。

「オイラとナツん家住んでも良いのに」
「ふざけんじゃないわよ、猫ちゃん」

頬を両手で挟んで押すと、むぎゅり、と顔が変形する。
「でもなぁ」ナツが唸って頬杖を突いた。

「ルーシィ、寝相悪そうなんだよな」
「悪くないわよ!」

ナツには言われたくない。しかし、噛み付いてから気が付いた。

「てか…それじゃあ、一緒に寝るみたいじゃない」
「おう、一緒で良いだろ?」

思わずぱかり、と口が開く。ナツは無邪気に笑って言った。

「ハッピーと」
「オイラ潰されちゃうよ!」
「今ここで潰してあげようか?」

いつものことながら、乙女心をなんだと思っているのか。
八つ当たりするようにぐぐぐ、と力を込めると、手首をナツに掴まれた。急に接触してきた高い体温に、ルーシィの頬が不本意ながら赤く染まる。
ナツはいつもこうだ。思わせぶりな言葉を吐いて、平然とルーシィに触ってくる。手首を掴んだり肩に腕を回したり――年頃の男女としては馴れ馴れし過ぎる。しかし彼は精神年齢が子供のまま止まっているだけだった。

意識しているのは、自分だけ。
心が揺れるのは、自分だけ――。

ルーシィが唇を噛んで跳ねる鼓動に耐えると、ナツはにか、と笑ってみせた。

「仕事行こうぜ!」
「あ、そ…そうね」
「ルーシィの命が懸かってるからなぁ、報酬高い奴にしねぇとな」
「あい!」
「その言い方、なんか嫌…」

引き摺られるように席を立つと、ミラジェーンがくすり、と笑った気がした。
リクエストボードの前まで行って、ナツはようやくルーシィを解放した。離れていく温度を目で追ってしまい、自分の想いに首を振る。

振り回されるのは嫌なのに。

ナツは腰に手を当てて、んー、と首を捻った。

「どれが良いよ?」
「んっと、少なくとも家賃の足りない分…4万Jは稼げる奴」
「それが今のルーシィの命の値段?」
「あら、こんなところに青い絨毯が」
「うぎゅー」
「じゃあこれにすっか?」

ナツが指を差したのは、盗賊団退治、20万J。

「近いし、今日中に行けるだろ」
「あい!」
「言っとくけど、不必要に物壊さないでよ!今度こそ全額貰うんだからね!」
「おう。ルーシィも壊すなよ」
「あんたじゃあるまいし」

ボードから依頼用紙を取って、ルーシィはカウンターに足を向けた。ミラジェーンはさっきの会話を聞いていたのだろう、にこにこと受付を待ってくれている。

「…なぁ」
「ん?」

ナツがまたルーシィの手首を掴んで、引き留めた。前を行くハッピーは気付かないようで、てくてくと先に歩いていく。
それにちらり、と目をやってから、ナツはルーシィの耳に手を寄せてきた。こそばゆい感触に胸が高鳴るも、彼女は目を据わらせた。どうせまたくだらないことに違いない。
ナツは内緒話をするように、小声で囁いた。

「家賃足りなかったら、オレん家来いよ」
「だから…」

行くわけないでしょ、と言おうとしてきっ、と鋭い視線を向けたとき。

――見てしまった。

ナツは口を横に引き結んで、何かに耐えるような顔つきでルーシィを真っ直ぐに見つめている。
その顔色が。
珍しくも――真っ赤。

「…え?」
「ハッピーのとこ狭かったら、オレんとこ来ればいいし」
「え?」

ナツはルーシィが瞬きをしている間に、手から依頼用紙を奪い取るが早いか、カウンターに向かってダッシュした。靡いた鱗模様のマフラーが、彼女の視界に残像として残る。

「ミラ、これ、行ってくる!」
「はいはい」

こちらからは背中しか見えない彼の耳が、やっぱり赤く染まっていて。
頬に上がってくる熱を両手で受け止めながら、ルーシィは床に向かって呟いた。

「何、言って…」

ナツがどういう意味で言ってるのか、まだ確信なんて持てない。
けれど。

どうしよう、あたし。この仕事、物壊すかも。

ナツが振り向くまでに、顔の赤味が引いていることを祈った。


――――――――――
carpioのたにし様から相互記念でいただきました!!!!

うぉぉおおおΣ(・∀・//)
ココアもナツにそんなこと言われてみてぇぇえ!!!(笑)
そのまえにないしょ話とか…。
どっきゅん要素満載すぎます…
こんなサイトのために、こんなに素晴らしいものをくださるなんてっっ!!
私、嬉しすぎておかしくなっちゃいますよ!?

ココアははたしてこれ以上のものをたにし様にお届けできるんだろうか…??(^∀^;)

たにし様!!
本当に本当にありがとうございました!!
大切にさせていただきます!!
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