親の子に対する愛情は死んでも消えない。そういう事なのでしょうか? ある所にとても仲の悪い夫婦と、二人の間に生まれた小さな男の子が住んでいた。 ある日のこと、妻との言い争いの最中に激昂した夫は思わず包丁で妻を刺し殺してしまう。 我に返り青ざめた彼は台所の床下に穴を掘ると、その場所に妻の死体を埋めた。 自責の念から自首することも考えたのだが、そうするには残された息子があまりにも不憫でならない。 そこで息子には「母さんは遠いところへ旅に出た」とだけ告げ、近所の人たちには「実家へ帰っている」と嘘をつき、ごまかしとおすことにした。 ところが、その日からどうも息子の自分を見る目がおかしい。 もしかしたら、見られたのか? そうだとすれば仕方がない、いっそのこと息子を殺して自分も・・・ そんな考えに追い詰められたある日、彼は食事の席で息子に「一つおまえに言っておきたいことがある」と言った。 我が子を手にかける前に、真実を伝えておこうと思ったのだ。 ところが、彼が次の言葉を発する前に、息子がこんなことを聞いてきた。 「お父さん、僕もお父さんにどうしても聞きたいことがあるの。お父さんは、どうしてずっとお母さんをおんぶしているの?」 [*前へ] [次へ#] [戻る] |