楽園─EDEN─*エリゼ(SS『恋わずらひ』付き)
「はぁ…」
今日、何度目になるか分からない溜め息を吐き、エリゼは左手の薬指に光るその指輪を眺める。
銀の台座に収まった小ぶりなピンク色の石が、彼女の溜め息の深さと反比例してキラキラと輝いていた。
「……」
また、深い溜め息。
自然と口からこぼれ出るその吐息は、決して嫌なものではない…だが、何故か少し憂鬱だ。
「……イヴ…」
考えなければいけない事は、たくさんある。Genesisの件や、婚約破棄が未だにちゃんと成立出来ていないジョーの件も然り…
でも、それすらも飛び越えて、エリゼの頭の中を四六時中占領しているのは…他でもない、我が執事・イヴの事
「……ふぅ」
溜め息の吐き過ぎに疲労感さえ覚えて、エリゼは今度は鼻でその息を吐いた。
そして、またとりとめもない、意味があるのか無いのかも分からない、そんなどうでもいい事ばかりを考えてしまう。
「…食欲…ないなぁ…」
日に何度もこうして溜め息を吐き、気付いたら指輪を眺めてボーッとしてしまっている事が多かった。
食事もあまり喉を通らず、夜も何だかソワソワして眠れない。
「……これって…」
今の自分にすごく似た症状について書かれていた本を、以前どこかで読んだ事を思い出し、エリゼは小さく呟いた。
特定の異性を想って、日常生活がままならなくなる症例……これって、もしや……
「恋わずら…」
「エリゼ様」
「…ひっ!?」
そして、突然の呼び掛けに慌てて振り向いたエリゼの視線の先には、見慣れた執事の姿
「"ひ"?」
「い、いや…何でもないの、イヴ!!」
「ふーん…」
突然の彼の登場に俯き動揺する彼女を見下ろし、イヴは何だか楽しそうに口端をあげた。
すると、自分のちょっとした動作にもビクリとするその体に近付き、可愛い形をした耳たぶに唇を寄せ小さく囁いて意地悪をしてやる。
「もしかして……恋煩い?」
「……ひっ!?」
嗚呼…恋わずらひ
◇あやか様、いつもありがとうございます!そして、折角の素晴らしいものなのに、こんな即席なものでスミマセン(大汗)
でも、ありがとうございます!すごく嬉しいです☆これからも宜しくお願い致します(^^)◇
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