『花火よりもあなたの』4P 夏。かき氷が恋しくなる季節。服に纏わりつく汗が気持ち悪く感じる帰り道に、僕は、雪見さんに出会った。というか、一言掛けられた。 「おい、俄雨、俺に感謝しろよ」 「はい?」 僕が疑問に思っているとすぐに、立ち去ってしまった。何だったのだろうか。僕はまぁいっかと思い、家へと足を伸ばした。 帰って、宿題をやっていると、来訪者の音。その前に雷光さんが、家を出る音が聞こえたので、きっと雷光さんだろう。 僕がドアを開けるとやはり雷光さんがいた。手には紙袋を持っている。 「やぁ、俄雨。おかえり」 「ただいまです。どうしたのですか?夕飯にはまだ早いですよね?」 「用事がないとだめかい?」 首をかしげて、少し寂しげに僕を見る雷光さんに、慌てて、僕は首を横に振る。 「そう。ならよかった。といっても、用事があるのだけどね」 僕の反応が面白かった様で雷光さんは、くすくすと笑いながら言った。とりあえず、部屋に入ってもらった。 「で、どうなされたのです?」 「実はね、花火大会を一緒に行こうかと思ってね。どうだい、俄雨?」 雷光さんは紙袋から、浴衣を取り出した。 「良いですね!行きましょう!」 僕はすぐに返事をした。雷光さんからのお誘い、断るはずがない。花火大会があるとは、学校で話題になっていたが、まさか自分が、雷光さんと行けるとは思ってもいなかった。 [*前へ] [次へ#] [戻る] |